シネマ一刀両断

面白い映画は手放しに褒めちぎり、くだらない映画はメタメタにけなす! 歯に衣着せぬハートフル本音映画評!

ストロボ・エッジ

 三半規管ムチャムチャのヒロインが核戦争後の日本でイヤホン分け合って「愛唄」聴く話。

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2015年。廣木隆一監督。福士蒼汰有村架純山田裕貴

 

恋愛経験のない高校1年生・仁菜子は、帰宅途中の電車の中で、学校中の女子の憧れの的である同級生・蓮と知り合う。これをきっかけに蓮と会話を交わすようになった仁菜子は、一見クールな蓮の意外な優しさや笑顔に触れるうち、自分の中に生まれて初めての感情が芽生えはじめたことに気づく。しかし、蓮には中学時代からつきあっている年上の彼女・麻由香がいて…。(映画.com より)


有村架純がよく走り、よく躓き、よく転倒する。

おっちょこちょいで済めばいいが、駅の階段からも落ちているのでいよいよ三半規管の異常を疑う。

「恋愛するより歩き方をマスターするのが先だろ、おまえの場合」と思ってしまいます。

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あとねぇ、すべてのキャラクターがよく道端で話し込む。

その会話内容は、おおよそ「おまえが好きだ」とか「あいつがおまえのことを好きらしい」とか「私はこんなことを思ってます」といった感情を丸出しにしたもの

たとえ相手が会話を拒否してその場から立ち去ろうとしても、無理やり引き止めたり後ろから大声で叫ぶなどして、とりあえず自分の言いたいことは是が非でも伝える

言葉を呑むとか気持ちを押し殺すという術を持たない、図々しいキャラクターばかりなのだ。全員大阪出身なのだろうか。

 

また、この映画のキャラクターたちにはあの人と話したいと思えば、幸運にもすぐにその相手と二人きりになれるという特殊な能力が備わっている。うらやましい。

たいていみんな三半規管ムチャムチャのヒロインに用があるので、校内、駅のホーム、花火大会、果ては修学旅行先でも有村架純は簡単に捕まり、二人きりで話をする場がいとも容易く設けられる(ということは、その人物が話しかける前の有村架純は一人ぼっちだったともいえる。孤独な少女なのだろう)。


要するに、いま画面で差し向かいになって話し合っている相手以外の人間が描けていないのだ。

驚くなかれ。「描けていない」というのは物理的な意味である。

どういうことか? こういうことだ。

有村架純福士蒼汰が下校時に駅のホームで雑談をするという微笑ましいシーンだが、同じ学校の生徒はおろか誰ひとり駅のホームにいないのだ(核戦争後?)

図書室のシーンでも、そこで本を読む生徒は一人もいない。放課後の学校にも、有村架純ともう一人のメインキャラクター以外の生徒の姿は認められない。修学旅行先でも「はぐれた」とか言って有村架純が一人きりでいるところに都合よく福士蒼汰がやってくる。

さすがに花火大会の場面は大勢のエキストラで犇めきあっているが、いざ真剣な話が始まりそうな雰囲気になれば、やはり人気のない場所に移動してから口を開く。学園祭でもそうだ。

なに、この未来人みたいな行動パターンは。そんなに人に聞かれたくない話なのか?

おそらくこの映画のキャラクターたちは周囲に人がいる場所では発声できないという特殊な呪いにかかっているのだろう。お薬出しておきますね、お大事に。

 

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まぁ~、閉じた世界だよねぇ。

それゆえに画面がものすごく窮屈。どれほど人が大勢いる開いた世界であれ、カメラは二人きりの閉じた世界しか切り取らない。圧倒的な映像の貧困。

福士蒼汰有村架純がイヤホンを片耳ずつ分け合ってGReeeeN「愛唄」を聴く場面は実に象徴的。

閉じた世界で閉じたものを共有することが恋愛なのだという論理を、この映画は説いているわけです。

もっとも、GReeeeNを聴いて「いい歌だよね!」なんつって喜んでる男女の恋が成就しようがしまいが俺には何の関係もないしどうでもいいのだが。


有村架純と心がすれ違ってしまった福士蒼汰が、電車の中でDQNがイヤホンから音漏れさせている「愛唄」にハッとなって有村架純への愛を思いだす…というシーンに、「マジか。今の日本映画ってこんな演出さえ良しとするのね…」と暗澹たる気持ちになった。

だって、ヒロインに対する「好き」を思い出させてくれたのが電車の中でイヤホンから音漏れさせてるDQNだよ?

どう考えてもイカれてるだろ。静かなる狂気だよ。見ようによっては音漏れ擁護運動、もしくはDQN礼讃映画と思われかねないよ!

 

ちなみに俺が脚本家なら、何を置いてもまずはDQNを懲らしめるけどね。

「おいDQN、さっきからシャカシャカと音漏れがしていますよ。好きな娘との思い出の曲だから『愛唄』は僕も好きだけど、だからといって音漏れが許される理由にはならないよね。マナーは守ろう。ちなみに遮音性の高いカナル型のイヤホンを使用することで音漏れを防止することができるので、その足で今すぐヨドバシに行ってイヤホン選んで来い」

…という台詞を福士蒼汰に言わせて、DQNの耳からイヤホンを引っこ抜かせますよ。

そもそも二人の思い出の曲に「愛唄」なんて選ばないよ。

エアロスミスの「Back in The Saddle」で決まりだよ!

 

ちなみに福士蒼汰はとても綺麗に撮っているのに、なぜ有村架純はこんなに撮り方が汚いのだろう。有村差別だろうか。

女優の髪型評論家として苦言を呈すならば、有村架純の髪型がちょっと酷いよ。

千円カットみたいにバサバサだし。

スタイリストが風邪で病欠してたとしか思えないぐらい、有村架純の頭がバサバサ。

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なんかイヤ!

 

ちなみに監督は余命1ヶ月の花嫁(09年)を代表作に持ち、近年ではオオカミ少女と黒王子(16年)PとJK(17年)など、怒涛のように少女漫画を映画化しては女子高生から「マジ泣ける~」と高く評価されている廣木隆一

日本の女子高生は廣木作品を観るからバカになるのか、それともバカだから廣木作品を観るのか…という因果性のジレンマを抱えている。

余命1ヶ月の廣木という映画なら観てやってもいい。