二大黒髪美女が同時に見られるお得セット!
2011年。ロン・ハワード監督。ヴィンス・ボーン、ケビン・ジェームズ、ジェニファー・コネリー、ウィノナ・ライダー。
自動車関連の会社を経営する独身男ロニーは、一緒に暮らしている恋人ベスにプロポーズすることを決意する。そんな矢先、親友ニックの妻が若い男と浮気している現場を発見してしまい、結婚というものに疑問を抱くようになる。(映画.com より)
『ライダー映画3連発』と言っておきながら4発目を撃ち込んでしまいました。「ふぅ、やっと終わったか」と思っていた方には深く浅くお詫び申し上げます。さすがのやなぎやさんもこのシナリオだけは予想できなかったでしょう。
2つ言い訳をさせてもらうなら、「3ライダーめをアップした日に予備知識ゼロでなんとなく観た映画にたまたまウィノナが出ていた」ことと「本作はウィノナの主演作ではないので事実上ライダー映画ではない」ということ。
これが『僕が結婚を決めたワケ』について僕が批評を決めたワケ。
よって私はノット・ギルティである。
どうでもいいけど、ノット・ギルティとニック・ノルティって語感が似てるよね。ニック・ノルティって無罪なのか?
アメリカ映画でよく見るこの人。
というわけで本日は『ライダー映画3連発』の晩節を汚す蛇足回!
そうシケた面しなさんな!
◆まさかロン・ハワードの作だったとは◆
さて、予備知識ゼロでなんとなく観たので、オープニング・クレジットでロン・ハワードの名前を見て驚いた。
ロン・ハワードといえば『バックドラフト』(91年)、『ビューティフル・マインド』(01年)、『ダ・ヴィンチ・コード』(06年)シリーズなどを手掛けるハリウッドの大家。
彼の作品には骨太なヒューマンドラマが多いが、もともとは『ラブ IN ニューヨーク』(82年)や『スプラッシュ』(84年)といった低予算コメディの出自を持つ。
さらに元を辿るなら、ロン・ハワードの出自は俳優である。若き日は『スター・ウォーズ』を撮る前のジョージ・ルーカスの最高傑作『アメリカン・グラフィティ』(73年)や、キング・オブ・アメリカ映画ことジョン・ウェインの遺作『ラスト・シューティスト』(76年)などに出演していたが、何しろ顔がブスなので監督業に転身した。
そんなロンハワ御大が四半世紀ぶりにコメディに原点回帰したのが本作である。
ウィノナとツーショットをキメるロンハワ御大。相変わらず逆さ絵のような顔をしている。
◆しょい込み型コメディの佳作◆
ヴィンス・ボーン&ジェニファー・コネリー、そしてケビン・ジェームズ&ウィノナ・ライダーの2組のカップルは昔なじみの大親友。だがヴィンスがウィノナの浮気現場を目撃してしまったことから、夫のケビンに真実を伝えるべきか否かで葛藤する。
ましてや、ともに自動車のエンジン開発をしているヴィンスとケビンは将来が懸かった大きな契約の真っ最中。このタイミングで妻の浮気が知れたらケビンは発狂したのちに頓死してしまうと慮ったヴィンスは、ケビンに隠れてウィノナを問いただし、浮気相手(チャニング・テイタム!)の家に殴り込みをかける…。
なかなかクラシカルでおもしろいシナリオだと思う。
ことの真相を知っているのは張本人であるウィノナとその目撃者ヴィンスのみ。それぞれのパートナーであるジェニファーとケビンは、一人でドタバタしているヴィンスを見て「大丈夫か?」と正気を疑う。
親友の妻の浮気現場を見ただけなのに、何がどうなってそうなったのか…、血だらけになったり犯罪行為に走ってしまうヴィンスのエスカレートする奇行っぷりが楽しい。
このシナリオのミソは、あれよあれよという間に周囲の人間を巻き込んでいくという「巻き込み型コメディ」ではなく、むしろ極力だれも巻き込まずに自分一人で解決しようという「しょい込み型コメディ」という点だ。
ジェニファーへのプロポーズの機会を逸する…という「結婚」の主題は弱い。
もとよりヴィンスはジェニファーとの結婚に乗り気でプロボーズの計画も立てていたが、そんな矢先にウィノナの浮気を目撃してしまったことで自分のこと(プロポーズ)を後回しにしちゃう…というシナリオになっちゃっていて。「結婚」という主題がオマケ扱いになっているのだ。
だったら、もともとヴィンスには結婚願望がなかったけど、親友夫婦の浮気事件に首を突っ込むうちにジェニファーへの愛を再確認して結婚に踏み切る…という筋の方がよっぽど自然だし、話の着地点としてもいいと思うのだが。
こういうとこ、詰めが甘いですよ! ロンハワ御大!
◆二大黒髪美女を配したタイプキャスト◆
この映画の見所は、二大黒髪美女ことジェニファー・コネリーとウィノナ・ライダーが同時に見れるという「黒髪お得セット」になっている点である。これに尽きる。
ハリウッド黒髪史に貢献したジェニファー・コネリー(画像左)とウィノナ・ライダー(画像右)。
ジェニファーは、陰でコソコソやっているヴィンスに怒りを表すどころか逆に本気で心配してくれる、理解のある恋人を好演。
ちなみにロンハワ御大は『ビューティフル・マインド』でもジェニファーを起用してほとんど同じ役を当てている。
出番こそ少ないが、ロンハワ御大はよほどジェニファーがお気に入りなのだろう、ジェニファー運用術がほとんど完璧です。
ヴィンスとの卓球勝負に勝ってぴょんぴょん飛び跳ねるジェニファー(41歳)。
アイスホッケーで活躍するケビンを見てぴょんぴょん飛び跳ねるジェニファー(41歳)
こんなかわいい41歳がいてたまるか。
かわいい女性がかわいい仕草をすることよりも、クールな美人がかわいい仕草をすることの優位性たるや! そこに目をつけるとは、さすがロンハワ御大。私に勝るとも劣らないジェニファンである。
ヴィンスのいちびりギャグにしっかり付き合ってくれるジェニファー。
そして、夫のケビンを裏切ってよその男と浮気を繰り返す諸悪の温床ウィノナ・ライダー。完全に万引き事件ありきの悪役キャストです。
ホッケー会場でヴィンスに浮気を問い詰められたウィノナは、夫にも非はあったとして逆ギレする。
「私だけ悪者にしないで!」
これが女優ウィノナ・ライダーの魂の叫びだ。
万引き事件を起こしたウィノナは確かに責められるべきだが、その背景にはグウィネス・パルトローの裏切りによる精神衰弱という遠因が横たわっているわけで。だが世間は「なぜ万引きに至ったのか?」という背景事情を無視してウィノナをバッシングした。
それだけに、このセリフはフィクションを超えたメタ的なダブルミーニングを持つ。
「私だけ悪者にしないで! もとはと言えばパルトローが悪いのよ!」
見事な逆ギレである。
それでも「浮気は浮気だろ!」と責め続けるヴィンスに、ウィノナはさらにキレる。
「あなたは何も知らない。結婚というカーテンの裏側を何も知らないからそんなことが言えるのよ!」
これも女優ウィノナ・ライダーの魂の叫びだ。
世間の連中は物事の表側だけを見て不祥事を起こしたスターを非難するが、彼らもまたハリウッド・バビロンに搾取された生贄なのだ。その裏側にはえげつないほどの理不尽な扱いと計り知れないストレスがある。
メタ脳内変換した私の耳には、このセリフがこんな風に聞こえた。
「あなたは何も知らない。ハリウッドというカーテンの裏側を何も知らないからそんなことが言えるのよ!」
見事な逆ギレである。
要するに『ブラック・スワン』(10年)同様、ウィノナ・ライダーがウィノナ・ライダー役を演じているのだ。「劇中でウィノナが演じているキャラクター」と「現実のウィノナの実人生」がほとんど同じという。
反省の色なし!
◆コメディ映画にコメディアンを使うな!という暴論◆
ヴィンス・ボーンとケビン・ジェームズの男性陣にはまったく興味がない。
この二人に限らず、私はコメディアンとかコメディエンヌの映画スターが好きではないし、そもそもコメディ映画だからといってコメディアン2人を安易に起用していることからも、ロンハワ御大の「コメディアン依存ぶり」にはがっかりしてしまう。
コメディ映画にコメディアンを使うな!
なので私はジム・キャリーやベン・スティラーのコメディもまったくいいと思わない。
なんというか、コメディ映画にコメディアンが出演している時点で笑いが前提化されているように思えて、却ってドッチラケになってしまうのだ。
それに、コメディ映画がTVのバラエティにアドバンテージを取っている点は、普段マジメな芝居をしている役者がコメディアンさながらにバカなことをする…というショック(ギャップ)にこそあるのではないか。
ちなみに『ガキの使い』の笑ってはいけないシリーズは、まさにこの論理をフル活用した好例。芝居一筋のプロ役者を卑近で下世話なバラエティに引きずり出すことで「ショック」を「笑い」に変えている。
そもそも論だが、ヴィンス・ヴォーンは『サイコ』(98年)や『ドメスティック・フィアー』(01年)のようなスリラー映画でこそ映える役者だと思う。
なにせコワモテの前科三犯顔なのでね。
完全にギルティ。とてもコメディアンとは思えない前科三犯顔。それがヴィンス・ヴォーンだというのか…!
というわけで、これをライダー映画にカウントしていいかどうかはわからないが、ライダーはきっちりライダーしてた。
だがそれ以上に、ジェニファー・コネリーがジェニファーをコネリーコネリーしていたので、どちらかと言えばジェニファー映画に分類されるべきかもしれない。
なんにせよ、これで『ライダー映画3連発』は本当に終わりです。4日間アリス。
ノット・ギルティ。
ヴィンスはギルティ。
一人だけ明らかに顔つきがアブない奴がいる。そう。ヴィンス・ギルティだ。