みなさんこんばんわ。竹野内豊です。
忌々しき年末恒例行事『ひとりアカデミー賞』のお時間がやって参りました。
当ブログでやるのは初めてだけど、7年前からよそで毎年やってることなので こちとらウンザリしてるわけです。やる気なしビギニング。惰性ザッツオール。アップするまでに延べ18時間ぐらい使ってますからね。廃人ビギニング。時間浪費ザッツオール。
ふだん私は観た映画のタイトルを逐一ルーズリーフにメモしておりまして、毎年クリスマスの時期になるとそのメモと睨めっこしながら『ひとりアカデミー賞』の準備を始めるわけです。各部門ごとにノミネート作品を3つに絞って、その中から栄えある受賞作を決めておるのです。
毎年ノミネート選出に一週間ぐらい悩むので、選出を終えた頃にはすでにぐったりビギニング&ほっこり大晦日。そして日本国民全員が屁をこきながらテレビジョンを見て「邦正おもろ」とか「お節うま」などと弛緩している最中、私は「寂しいよう。ひもじいよう」と半泣きの様相で『ひとりアカデミー賞』を仕上げるんだ。
やってられるか、カス。
まぁ、ぶちぶち文句を言っても仕様がないのでそろそろ始めるとしましょうか。
※受賞作を赤のデカ文字にしていて、ノミネート2作を併せて表記しております。
※気になった映画があれば ぜひタイトルをクリックしてみて頂戴ね。その評に飛べるようにリンクを貼ってあるので(この作業だけで3時間です。死ね)。
【ベスト作品賞】
2018年は『エル ELLE』に支配された年だった。
ためしに当ブログで記事検索をかけてみると、ほかの記事で都合5回も『エル ELLE』の名前を出していた。3月に一度、4月に一度、7月、9月、11月…。ほぼ年間通してエルエルエルエル言っていたのだ。
わしゃエル・ファニングか。
どうもこんばんわ。エル・ファニングですぅ。20歳になりました。
最近お姉ちゃんの嫉妬がエスカレートしてきて、シャンプーとボディソープの中身を入れ替えられたりしていますが、大丈夫、私はげんき。
来年公開の『孤独なふりした世界で』(18年)、ぜひ観てくださいね。ニホン大好き!
じゃあねみんな。エルファ~♡
以上、エル・ファニングの物真似でした。けっこう似てたでしょう。
年末だから平気でこんなこともしていくよ。年の瀬なめんな。
で何の話だったか。そうそう、ファニングじゃない方の『エル ELLE』ですよ。
『エル ELLE』を作品賞に選んだのは質の高さだけでなく、ハリウッドを追放されたポール・バーホーベンが『ブラックブック』(06年)以来10年ぶりにハリウッドに一矢報いた!…という痛快なドラマにも依る。同じく冷遇されているリンチ、デ・パルマ、ジョー・ダンテもこの勢いに乗じて欲しい。
ハリウッドをぶっ潰せ!
『イヴの総て』(50年)の見事さに関しては評を読んで頂くとして、しれっと紛れ込んだ『パディントン2』である。観た人は正しく絶賛しているが、問題は観ている人があまりいないということだ。なんだそりゃ、ふざけるな。クマに謝れ。
ただ可愛いだけ、楽しいだけのクマ映画ではない。『パディントン2』はチャップリンやバスター・キートンの時代まで遡って映画の運動性に忠実であろうとした現代ではかなり珍しい類の大傑作なので、未見の方は恥じながらチェックされたし。
そもそも「作品賞」を部門化する意味を本家の映画賞に問いたい。
いわば作品賞って「総合力が高い」ってことでしょう。実際、ほかの賞を逃しても作品賞さえ取れれば結果オーライ…みたいな節ってあるよね。
各部門ごとに賞を与えるから映画賞なのに総合力を決める部門って。全部ひっくるめてもうたら身も蓋もあらへんがな。…なんてことを少し思うわけです。
…ハイ、こんな感じで続いていきますよ。『ひとりアカデミー賞』の雰囲気が大体おわかり頂けましたでしょうか。
楽しいですか。はい楽しいね。じゃあ次いってみよう。
【ベスト撮影賞】
はいドーン!!
パディントン、ドーン!!
ぅオラぁぁぁぁぁぁぁぁ。っジャオラァァ。
念のために言っておくが、気は確かだ。
とはいえ、まともな映画賞であれば『牯嶺街少年殺人事件』(91年)に賞をやるのが穏当なのだし、さらに言えば本稿をアップする直前まで『アスファルト・ジャングル』(50年)を受賞候補にした文章もすでに書き終えていたのだが、オレの心が「いや待てよ」と。
やはりどう考えても『パディントン2』が作品賞と撮影賞を両方逃すなんてあっていいわけがないと結論したのだ。そんな世の中なんて寂しすぎる。
どうせ世間の奴らや本家アカデミー賞の会員どもは漏れなくバカだから「子供向けではあるがよくできた映画だね」ぐらいの並褒めに留まって 、この映画が『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(18年)のルッソ兄弟をしても実現しえなかった全編活劇化をいとも容易くこなしていることなど気づきもしないだろうし、現代でバスター・キートンをやった数少ない映画であるという視点から褒める術も当然持ち合わせてはいないのだ。
だったら私が褒めるしかねえベア、という運びになりまして堂々の受賞です。
『ロンゲスト・ヤード』は「撮らない」という撮り方がわれわれに映画の再定義を促すような教育的不良性を湛えているので一撃即決でノミネートである。
『牯嶺街少年殺人事件』(91年)に関しては思い出すだに戦慄するので考えることを止める。
そもそも「撮影賞」を部門化する意味を本家の映画賞に問いたいっ(まだ言う)。
すべての映画は映画である以上「撮影賞」に輝くことが大前提であり、いわば「撮影賞」とは「作品賞」と同等以上の重要性を持つ。撮影をしなければ映画は始まらないのだし、ショット不在の映画など映画ではないのだ。
「撮影が素晴らしかった映画を選ぶ」ということ自体が反映画の態度にほかならないってわけさ。
潰してまえ、こんな部門!
パディちゃんでも見て興奮静めようっと。
【ベスト脚本賞】
はいギューン!!
女神、ギューン!!
気は確かだけどヤケクソです。
この部門だけは一瞬で勝負が決まった。
「ベスト脚本賞」…平たく言えば「話おもろ」と思った作品を決めればいいだけで、そうなると当然『女神の見えざる手』であるよなぁ。
技術や密度としては『サブウェイ・パニック』や『教授と美女』の方が遥かに上だと思うけど、スッと観てサッと楽しめるという庶民的即効性ではこの映画には敵うまい。そして映画を観るのは大体庶民である。庶民なめんな。
もしかすると当ブログのヘヴィ読者は、私が「物語」や「脚本」を軽視する人間だと思ってらっしゃるかもしらんが、さにあらず。断じてノン。一個も話がわからないスパイ映画とか一個も話が進まない官能映画を唾棄するほどには「物語」にも目を向けているし、ウキウキと楽しんでもいる。
ただ「物語が映画になる」のではなく「映画が物語を紡いでいく」という先後関係をはっきりさせておきたいだけなのです。
惜しくもノミネートに漏れてしまったけど『ボルサリーノ』(70年)も良かったな~。あまり人気のなかった回だけど、いま読み返すとなかなかの名評を書いてると思いますよ。再評価してくれよ。
【主演男優賞】
主演男優賞は犬に授与されます。
毛ぇフワッフワやな、おまえ。よ~しよしよし。賢いな賢いな。ジャーキーあげような。
あっ、噛むな!
貴重なオスカーだぞ。噛むなっつーの、バカ犬。
しつけはなってませんが映画では圧巻の芝居でした。大番狂わせならぬ番犬狂わせとでも申しましょうか。ちなみに「ダークホース」という表現は犬なのか馬なのかややこしいので避けております(粋な配慮)。
ひたすら転生しまくったワンちゃんにひたすら泣かされたので、これは文句なしの受賞である。まさにナンバーワン。
年末なのでギャグが鈍っております。
一方、ノミネートに留まったのはチャック・コナーズとメル・ギブソン。この二人の相違点は「加害者か被害者か」ということだけで、基本的にはほぼ同じキャラクターを演じている。つまりヘンコということです。
ちなみに、惜しくもノミネートから漏れたのは『ラブソングができるまで』(07年)のヒュー・グラントと『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』(16年)のマイケル・キートン。さっき本人たちに電話して慰めたら、ヒュー様は全然に気にしてなかった。マイキーは逆上してました。
とはいえ、メルギブ、ヒュー様、マイキーに共通するのは一度落ち目になって返り咲いた不死鳥オヤジということ。実力があれば何度でもチャンスを手にできる。ハリウッドの美徳はこういうところにございます。役者を大事に育てているよね。
翻って、日本の芸能界なんてトウが立てばお払い箱、若手俳優も5年で使い捨て。文化の怪物的な消費国。まさに一発屋大国。ニホン大好き!
ヒュー様(左)とマイキー(右)。
【主演女優賞】
おめでとうございます。主演女優賞は『エル ELLE』のイザベル・ユペールさんの手に!
あかん、またあいつが出てくる。私の力では制御でき―…
どうもこんばんわ。エル・ファニングですぅ。20歳になりました。
最近お姉ちゃんがポトフを作ってくれたの。とっても嬉しかったぁ。でもお皿の中に画鋲が入ってたの。お姉ちゃんは「ニンジンと間違えた」って言い張ってます。最近覚えた日本語は「しらこい」。ニホン依然として好き!
じゃあねみんな。エルファ~♡
※私がふざけているのではなくエル・ファニングが勝手にふざけているので苦情がある方は彼女のエージェントまで。
さて、キャシー・ベイツが大健闘しております。
『黙秘』(95年)や『悪魔のような女』(96年)もよかったけど、とりわけ『フライド・グリーン・トマト』は俺たちが見たかったキャシー・ベイツがすべて詰まったキャシー決定版。
今年はウィノナ・ライダー、デミ・ムーア、キム・ベイシンガーあたりも再評価したけど、キャシーがゴボウ抜きでノミネートまで上り詰めております。ゴボウとは似ても似つかない体型だけど。
それと『ひとりアカデミー賞』も8回目になることだし、個人的にはそろそろルーニー・マーラを受賞させてあげたいんだけど、どうも突き抜けないんだよなぁ。
でもいいじゃん。気を落とすなよ、ルーニー。ヘンに何冠も達成するより無冠の女王の方がカッコイイじゃん。歯牙にもかけない素振りで「オスカーなんて興味ないの」って冷たく言ってくれよ。な?
…なんで私は架空の映画賞でルーニー・マーラを慰めてるんだ? アホか?
エルちゃん「アホよ!」
まぁそうだよね…。でも?
エルちゃん「でもニホン大好き!」
そうこなくっちゃ!
【助演男優賞】
ウィレム・デフォー 『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』(17年)
恐ろしいことになってしまいました。
「あ、ひとりアカデミー賞っておふざけでやってるのね」と思わないでほしい。どうか頼む。
賞を決めるときって「観た映画リスト」をチェックしながら別の紙にノミネート候補を書き出していくんだけど、「助演男優賞」に関しては最後にその紙を見たらデフォー、デフォー、デフォーになってたわけ。スロットだったらだいぶ喜ぶやつ。
だから出来レースでもなければデフォレースでもなく、単なる偶然なのだ。
いや、偶然と言ったらデフォーに失礼だな。デフォーが素晴らしかったから必然的にこういう結果になったわけです。
さて、私の知る限り『ドッグ・イート・ドッグ』を観てくれたのはGさんだけで、後日「観たよ」という報告をしてくれたのだけど、感想はほぼ言わず…かなりお茶濁してた。綾鷹ぐらい濁ってた。
たぶん面白くなかったんでしょう。あはは。
とはいえ私もそれを見越したうえでオススメしてますからね!
はっきり言って『ドッグ・イート・ドッグ』は大して面白い映画ではない。でもウィレム・デフォーだけは最高だった。その点だけは綾鷹Gも認めてくれたと思います。
【助演女優賞】
全然リメンバーできないババア 『リメンバー・ミー』(17年)
何らかの進化前のポケモンみたいにコロコロしている愛嬌満点のオクタヴィア・スペンサーが堂々の受賞を果たしました。
今年だけで『ドリーム』、『シェイプ・オブ・ウォーター』(17年)、『gifted/ギフテッド』(17年)といったオクタヴィアムービーを観てきたよ。こうなったらオクタヴィア・スペンサーの全作品を観て参る所存です。
たとえ火の中、水の中、草の中、もーりーのなっかー、土の中、雲の中、オクタのスカートの中 (きゃあ)、なかなかなかなかなかなかなかなか大変だけど必ずチェックだぜ。オクタ映画チェックだぜいえいいえいいえいいえいいえいいえい。
まぁ、そういうことです。
ノミネートには『デッドプール2』で強運女ドミノちゃんを演じたザジー・ビーツ、それに『リメンバー・ミー』言うてるのに全然リメンバーできないババア(名前失念。リメンバーできてないのは私だったか)が躍り出ております!
脇役ながらも「この人のスピンオフをこそ観たいんだけど」と思うほど観る者の心をワシッと掴んだ愛すべきキャラクター達でした。和むねぇ。
【最低男優賞】
サミュエル・L・ジャクソン 『評決のとき』(96年)
マザーファッカー野郎が堂々の受賞です。
決して嫌いな俳優ではないけれど、サミュエル・L・ジャクソンにはいつか最低男優賞を与えてやりたいと思っていた。なぜなら似合うから。これぞ狙い撃ち。念願叶って万々歳。サミュエル最高!
『イベント・ホライゾン』のサム・ニールは、生まれてから一度も冗談なんて口にしたことのない私に「誰ニール?」という冗談を口走らせた張本人なので必然的にノミネートの刑です。
そして『ジャスティス・リーグ』。
通称 Jリーグ。まさにJリーグばりに「オーレー、オレオレオレー♪」と自己主張するヒーローたちのまとまりのなさ。WE ARE THE CHAMPとはこのこと。
参ったねこりゃ。メンズ全員がノミネートだよ。何人いるんだよ。5人だよ。90年代のジャニーズかよ。特にバットマンとスーパーマンが最悪だよ。DCの二枚看板だよ。ずっと喧嘩してんだよ。
バットマンは活躍しなさすぎ、闇たりなすぎ、重厚感なさすぎ。スーパーマンは怒りすぎ、悩みすぎ、本調子まで時間かかりすぎ。
おまえらが全然あかんからワンダーウーマンの仕事量がすげえ。皺寄せがすげえ。会社全体の落ち度をたった一人でリカバーしてる感がすげえ。
ブラック企業DCと優良企業マーベルの闇と光がすげえ!
どこにジャスティスあんねん。
【最低女優賞】
キルスティン・ダンスト 『ビガイルド 欲望のめざめ』(17年)
何かにつけてレイチェル・マクアダムスを目の敵にして申し訳ないとは思っています。
だけど『きみに読む物語』は栄えある最低女優賞にふさわしい圧巻の芝居で、わたくしに体調不良をもたらしたほど不愉快な作品でもあったので、ぜひこの賞をマクアダ嬢に受け取って頂きたいのです。
とはいえマクアダ嬢は映画のなかでよく死ぬ女優で、そのたびに「よし死んだ!」と親指を立て、少しずつ彼女のことが好きになっていきます。私にとっては死ねば死ぬほど好感度が上がる女優(嫌いだから)。
まぁ、なかなか死なない場合は中指を立てることになるんだけど。
惜しくも受賞を逃したキルスティン・ダンストにはこれといった落ち度はなく、もっぱらソフィア・コッポラの露悪的な眼差しによって里芋ルックを晒してしまっているので、いわば犠牲者といえる。
アル中&イラチを演じたメグ・ライアンは端的にやかましかった。不快指数としてはマクアダ嬢にも比肩しうる神経逆撫で演技を見せつけてくれましたね。
また、ノミネートするほど酷くはないものの『悲しみが乾くまで』(07年)のハル・ベリーと 『ローズと秘密の頁』(18年)のルーニー・マーラが危うかった。演技自体はよくても演技プランを間違えると元の子もないからね。どれくらい元も子もないかと言うと喉は絶好調だけど歌詞を間違えたレコーディングと同じぐらい元も子もない。エルちゃんも気をつけねばなりませんよ?
エルちゃん「ニホン大好き!」
そればっかりやないか。
もうええわい。
以上をもちまして第一部は終了でございます。
年越しの瞬間ってどんな顔をしていたらいいのか分からない。映画でも観ようかな。