シネマ一刀両断

面白い映画は手放しに褒めちぎり、くだらない映画はメタメタにけなす! 歯に衣着せぬハートフル本音映画評!

プラネタリウム

ナタリー・ポートマンが心配だ。

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2016年。レベッカ・ズロトブスキ監督。ナタリー・ポートマン、リリー=ローズ・デップ。

 

1930年代後半。アメリカ人のローラは、死者を呼び戻せるほど霊感の強い妹ケイトと共に降霊術のツアーでパリを訪れる。姉妹の才能を目の当たりにして衝撃を受けた大手映画会社プロデューサーのアンドレは、姉妹を主人公にしたリアルなゴースト映画を製作しようと思いつく。アンドレは姉妹と映画の出演契約を結び、2人を自宅に住まわせて撮影を開始するが…。(映画.com より)

 

昔、家で気持ちよくナスビを炒めてたら宗教の人がきたので、インターホン越しに「いまナスビを炒めてるので手が離せないんです」と言ったら「あ、そうでしたか。失礼いたしました」と言って帰っていった。

「帰ってくれてよかった」と思いながら、同時に「ナスビで引き下がるんかい」とも思った。ガッツなさすぎでしょう。ナスビって宗教に打ち勝つの?

もし僕がその人の立場だったら「ナスビを炒めながらでもいいので少しお話させてくれませんか。あなたはいま幸せですか? ナスビを炒めてて幸せですか? うっとこの宗教に入ったらナスビよりもっと良いものが炒められますよ」といってナスビを逆手に取るけどね。

 

それから数ヶ月経って、またぞろ同じ人がやって来た。

前回の訪問を克明に記憶していた私は、あえて前回と同じように「いまナスビを炒めてるので手が離せないんです」と言ってみた(その時は何も炒めてなかったけど)。

そしたら、宗教の人、またしても「あ、そうでしたか。失礼いたしました」と言って帰ってっちゃったのだ。

「しょうもないやっちゃのう。関西人なら突っ込まんかいワレ!」と思った。

「あれからずっとナスビ炒めてるんですか?」でもいいし「部屋の中、畑になってるんですか?」でもいい。「あ、すでにナスビ教に入っておられましたか」と言えたらより素晴らしいと思います。

ていうかだからガッツがない!

負けんなってナスビに!

なんぼほどナスビに弱いねん、お前とこの宗教は。

というわけで、まぁ、プラネタリウムです。今回もまた雑談が過ぎた。

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◆自己完結した萌え映画◆

レビュー界隈では「どこにも焦点が合ってなくて退屈だった」という意見が大部分を占めている。

私はストーリーで映画を観てないので「話が退屈な映画」の見方は心得ているつもりだが、さすがの私もこればかりは擁護できぬ。

そんなわけでプラネタリウムをガッツガツに貶していこうと思います。せっかくのプラネタリウムなのに。

 

主演はナタリー・ポートマンリリー=ローズ・デップジョニー・デップが1人目の妻ヴァネッサ・パラディとの間にもうけた娘)

本作を手掛けたレベッカ・ズロトブスキは、『美しき棘』(10年)『グランド・セントラル』(13年)レア・セドゥを起用したフランスの女流監督(余談だが、私には『美しき棘』をクソミソに酷評した過去がある)。

そんな本作は、ナタポーとリリー演じる霊媒師の姉妹に目をつけた映画プロデューサーが「本物の降霊術を映画にしたら売れるでぇ」と思いついて姉妹とともに映画撮影をする…という中身なんだわ。

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リリー=ローズ・デップ(画像上)、ナタリー・ポートマン(画像下)。

 

皆さんご指摘の通り、映画としての軸がどこにも定まってない。致命的なまでに、な。

姉妹愛、降霊術、プロデューサーとの妙な三角関係、映画製作、妹の病気。…そうしたさまざまな要素がまったく絡み合わず、これという一本芯の通ったシナリオの幹がどこにも存在しないのだ。

おそらく本作を観た人は「この映画はどこに向かおうとしているのだろう?」と終始疑問を抱き続けたことでしょう。姉妹の降霊術が本物だったのかインチキだったのかというのも結局最後まで棚上げされたままだしね。

したがって観る者は開幕早々に居眠りするか、苦悶の表情を浮かべながらエンドロールまで引きずられていくかのどちらかだろう。

 

でも私はヘッチャラなんだ。ドラゴンボールファンの気を引くために言うならCHA-LA HEAD-CHA-LAだよ。こういうのは慣れっこなんだよ。

この手の映画は過去に226回ぐらい観てきたのでもう勘だけで言ってしまうけど、監督のレベッカ・ズロトブスキにはべつに撮りたいものなんて無かったのだろう。

はっきり言ってこの監督、ただ不思議なオーラをまとった美少女(リリーのことね)が遊んだり悩んだりしているさまをオシャレでアート風のカメラワークで切り取って「ええの~ええの~」なんつって恍惚&悶絶してるだけの美少女オタクの変態おばはんですわ。

これは悪口ではなく本質です。

この映画の本質は、もはや自己完結した萌え映画というか、「ナタポーとリリーがイチャイチャしてる絵面だけで最高じゃん? そう思うでしょ? ねえ、思うでしょ? どう、思うでしょ? 思わない奴は私の映画は観なくてよろしい。帰れ。帰ってソバ食って寝ろ」という排他性すら感じるのだ。

したがって我々は、映画の側からこのような質問を投げかけられる。

「ナタポーとリリーがイチャイチャしてるだけで充分だよね?」

Yes→よろしい。私の映画を楽しめ。

No→ソバ食って死ね。

 

むちゃむちゃやないか。

 

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ジョジョ立ちをキメる二人。

 

はい、映画評はここで終わり!

「オシャレでアート風のカメラワーク」について言及すると、ちょっと読者に引かれるぐらいの罵詈雑言が飛び出しそうなので、それはやめとくわ。エネルギーも使うし。

ここからはナタリー・ポートマンをひたすら案じるという論旨にシフトしていきます。

 

ナタリー・ポートマン、こじらせ全開の季節◆

ここ数年、女優としてさらなる高みを目指そうとして『聖杯たちの騎士』(15年)『ジェーン』(16年)『ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命』(16年)など文芸路線に走っちゃって逆に低迷しているナタポー。

2003年以降のニコール・キッドマンと同じ轍を踏んでる感が尋常じゃねえ。

近年のナタポーはちょっとヤバいんですよ。

パンピーどもに騒がれて金を儲けるだけの通俗映画なんて興味ないわ。私が出たい映画は、たとえ小規模であっても、もっと創造性と芸術性に溢れた作品なのよ」なんつって、若干こじらせている節がある。

で、この文芸路線症候群というのは、地位と名声を手にしたハリウッドスター特有のビョーキなんです。治るかどうかは本人次第。

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 この2人が同一人物であるという事実を受け止めねばならない。

 

特にナタポーの場合、子役として『レオン』(94年)でデビューして全世界でロリ旋風を巻き起こした出発点はアイドルの人だから、女優というものに対しては人一倍コンプレックスと憧憬を持っていて。

だからクローサー(04年)ではケツを丸出しに、Vフォー・ヴェンデッタ(06年)では頭を丸刈りにするなどして「私をアイドル扱いしないで! カワイイと言わないで!」といって、世間の「ナタポー=『レオン』でお馴染みの可愛い娘」というパブリック・イメージに徹底抗戦し続けたわけです。

そんなナタポーの「周囲から求められてる自分」と「ありのままに表現したい自分」というジレンマをそのまま映画化したブラック・スワン(10年)での芝居が認められたことで、ついに脱アイドル計画は結実する。

その後は「ふぅ…、やっと分かってくれましたか。世間の奴らよ」と肩の力を抜いて抱きたいカンケイ(11年)マイティ・ソーシリーズのようなライトな映画に出演するようになる。

しかし、私がホッとしたのも束の間、2011年以降は結婚・出産を経て、再び「私はママじゃないわ、本物の女優なのよ。なめんなポートマン!」とムキになって文芸路線が度を越してエスカレート。『聖杯たちの騎士』や本作プラネタリウムのようなわけのわからない映画に出続けている(←今ココ)。

 

ヤバいパターンだよ、これ!

 

ていうかニコール・パターンだよ!

説明しよう。ニコール・パターンとは「私はたまたま恵まれた容姿で、外見だけでチヤホヤされがちだけど、本当は実力も兼ね備えているのよねぇ。色気や愛嬌を振りまいて映画をヒットさせるなんて御免だわ。私はもっとやれるはず。もっと高みを目指せるはず。見た目でしか役者を判断できないバカな観客よりも、ちゃんと映画が分かっている同業者や批評家に評価されたいわ。そのためには派手な通俗映画なんかよりも文芸映画に出るのが近道なのよォォォォォォォォオッホ! オッホ!(咳き込む)」などと言って、どこの馬の骨ともわからない奴が撮った、どこの馬の骨ともわからない映画に進んで出演する、美人女優だけがこじらせる自意識過剰型のビョーキである。

 

だから私はナタリー・ポートマンがただただ心配だ。

現在37歳。もうじき40代だ。特に映画俳優にとって40代は明暗を分けるいちばん大事な時期なので、一刻も早く軌道修正してこじらせの季節から卒業してほしいと思っています。頼むぜポートマン!

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