シネマ一刀両断

面白い映画は手放しに褒めちぎり、くだらない映画はメタメタにけなす! 歯に衣着せぬハートフル本音映画評!

あなたはひどいです。ありがとうございます。

先日、ファミリーレストランに行ったら、私の目の前の席にいた4人組のおばはんが韓流トークで激烈に盛り上がっていた。ステキなことだと思う。

中でも異彩を放つ、頭がファンタグレープみたいな色のおばはん(以下ファンタヘッド)が、やおらショルダーバッグから韓流スター名鑑のような巨大な本を取り出し、それを4人で回し読みしながら「この人、渋くていいわよね~」、「あのドラマで社長さんを演じてた人よね。ほら、あのドラマ…。何だっけ」、「その本に書いてるんちゃうん?」などと口々に言っては「あ、ほんまや。おぼぼぼぼ」なんつって笑っている。

まるで俺みたいだな、と思った。

私はおばはん連中に妙な親近感を抱いたのだ。その歳になっても趣味の合う友達同士で愚にもつかないボンクラトークができる…という中学生のごとき無垢で無意味な言論空間を祝福したのである。

おばはんに幸あれ。おばはんは最高だ。

 

しばらくすると、おばはんたちの席にビールジョッキがひとつ運ばれてきた。どうやらファンタヘッドが頼んだようだ。しかしファンタヘッドは韓流仲間との語らいに夢中で、一向にビールに手をつける様子がない。

ていうかそのビールジョッキ、もはやファンタヘッドの手元ではなくテーブルのど真ん中に置かれていたからね。まるで儀式用具のように。

まさかビールジョッキの方も自分がこんな扱いを受けるとは思ってもみなかっただろう。てっきり美味しく飲んでくれると思っていたのにテーブルの真ん中で放ったらかしにされるとは。

飲んだれよ、可哀想に。泡がぎゅんぎゅん減っていっとるやないか。

 

なまじ私は、おばはんたちの韓流トークが部分的にわかってしまうだけに、いっそのことトークに参加したいなと思った。そして誰も飲まないビールを飲みたい。

と言っても私の韓流データはもっぱら映画に依拠しているので、ドラマの話はまったくわからないのだが。

でも参加したいわ~。楽しそうだもの~。

かといって「失礼ですが、先ほどから話を聞かせて頂きました。よろしければ私も韓流トークに交えてくれませんか」と話しかけることなどできるはずもなく。ただのナンパだしね。ファミレスでおばはんをナンパしてどうする。

そんなわけで、心の中で勝手におばはんたちの会話に参加することにした。

 

おばはんの一人が「『太陽に向かって』の頃のクォン・サンウは良かったよねぇ」と言ったので、すかさず私は「いや『太陽に向かって』は知らんけど、クォン・サンウといえば『マルチュク青春通り』(04年)でブルース・リーに憧れてる気弱な学生を演じていて、片想いしてるハン・ガインをめぐって親友のイ・ジョンジンと三角関係になっちゃうんだ。こう聞くとありがちな青春映画のように思えるけど、この映画の胆はエスカレートする校内暴力で、ブルース・リーの真似をして不良と決闘したクォン・サンウは相手の頭が割れるほどヌンチャクで殴打して血だらけの惨劇を招いてしまう。憧れのヒーローを真似しても凄惨な暴力にしかならないという、とてつもなく不快な後味を残す映画なんだ!」と心の中で思った。

すると、別のおばはんが「クォン・サンウねぇ。たしかハン・ガインと共演してる映画、なかったっけ?」と言った。

だから『マルチュク青春通り』!

聞けよ、人の話!

するとファンタヘッドが「『マルクス青春通り』じゃない?」

シバいたろか、そのヘッド。

なんやその『資本論』がそこら中に落ちてるような青春通りは。

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やきもきするわぁ。こっちが勝手に心の中だけで会話に参加してるから、僕の声がぜんぜん届かない。かなしい。

クォン・サンウとハン・ガインの共演作が『マルクス青春通り』ということでひとまず全員が納得し、とんでもない誤認をした4人、気がついたら今度は『金よ出てこい☆コンコン』というドラマの話に夢中になっていた。

私は『金よ出てこい☆コンコン』を観ていないので、「もう無理だ、これ以上話についていけそうにない。完全にハブられた」と勝手に被害妄想に陥って、心の中で「先に帰るね!」と言い残してファミレスを出た。

結局、ビールジョッキは最後までテーブルの真ん中に放置されたままだった。何かのお供え物だったのだろうか? 死んだ5人目の仲間とか…。

 

帰路につく途中、「ていうか『金よ出てこい☆コンコン』ってなに?」ってずっと思ってた。何がどうなったらそんなネーミングに…。内容の予想がつかんわ。

これ以外にも、韓流ドラマにはテキトーすぎて意味がわからない邦題が異常に多いので、それを10個発表して終わりにしたいと思う。

 

韓流ドラマのテキトーすぎて意味がわからない邦題十選。

 

『あなたはひどいです』

『猫がいる、ニャー!』

『思いっきりハイキック!』

『キムチ~不朽の名作』

『メシくれ!』

『製パン王キム・タック』

『ありがとうございます』

『走れサバ』

『母さんに角が生えた』

『見れば見るほど愛嬌満点』

 

個人的には『あなたはひどいです』『ありがとうございます』がツボです。なんやそのタイトル。タイトルっていうかセリフやないか。

あと『アイアンマン』というのもありましたね。

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私の好きな韓国俳優。左から順に…

キム・ユンソク…韓国の桑田佳祐。よく人を追いかけたり豚骨を振り回す。

チョン・ウソン…韓国の福山雅治ド級の二枚目。「ちょ、うそーん」というぐらいハンサム。

ソン・イェジン…ゼロ年代に韓流全盛期を支えた名女優。代表作は『私の頭の中の崖の上のポニョの中の消しゴム』(04年)みたいなタイトルの映画。

ハン・ヒョジュ…若手女優の斬り込み隊長。韓国俳優にしては珍しく整形していない。