シネマ一刀両断

面白い映画は手放しに褒めちぎり、くだらない映画はメタメタにけなす! 歯に衣着せぬハートフル本音映画評!

白い闇の女

酷評するほどひどい出来ではないのに、それでも酷評する理由。

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2016年。ブライアン・デキュベリス監督。エイドリアン・ブロディイヴォンヌ・ストラホフスキーキャンベル・スコット

 

ニューヨークで働く事件記者ポーターは、パーティ会場で美しい未亡人キャロラインと出会う。彼女の夫は映画監督だったが、不可解な死を遂げていた。既婚者でありながらキャロラインと関係を結んでしまったポーターは、情事の後で彼女から奇妙な依頼を受ける。それは、キャロラインの夫が遺したビデオを見てほしいというもので、彼女は何故か警察の調書や現場写真まで持っていた。ポーターは危険な罠だと勘づきながらも調査を進め、やがて事件の核心に迫るが…。(映画.comより)

 

おはようございます。

ああ言うてもうた…。

楽しい前置きを書いて皆さんを喜ばせようかなと思っていたのだけど、お腹が空いたので春雨を食べようと思います。春雨食べてきていいですか。春雨の感想は明日ちゃんと言うので食べてきていいですか。

え、あかんの?

解放してくれないの? 前置き書かなあかんの?

え、春雨…。

っていうか空腹…。

べつにいいでしょ。前置きぐらい。普段書いてるんだから今日ぐらい。

え、あかんの?

まだ解放してくれない? 本当にお腹すいてるんですよ。

お腹がすきすぎるとお腹痛くなってくるよね。もはやペイン。

だから春雨が食べたい。春雨を食べるために前置きを免除してほしい。

それを頼んでいる。俺はそれを頼んでいる。

とても簡単な要求。キミが「いいよ」って言ってくれたらすぐ春雨食べにいける。

パソコンから離れてすぐ春雨食べにいける。簡単な話。

すぐ春雨食べたい。だから頼んでいる。

どうですか。春雨食べていいですか?

 

え、あかんの?

 

まだあかんの?

いつまであかんの?

あかんくない日は来るん?

来おへんの?

え、来おへんの?

あーらら。

というわけで本日は『白い闇の女』を酷評! これはあかん映画です。第三章はちょっと半ギレです。それではレッツゴー。

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◆なにこの映画◆

記者のエイドリアン・ブロディが未亡人のイヴォンヌ・ストラホフスキーと肉体関係を持ってしまったことで、ヘンな死に方をした夫の事件を調べるはめになる。

亡き夫はイヴォンヌを困らせて彼女が怒った様子をカメラで撮影してはそのメモリーカードを後生大事に保管するような奇天烈な奴だった。もちろん夫婦関係はすでに険悪である。

「え。普通に考えてイヴォンヌが殺したんじゃないの?」と私は思ったが、まぁ早合点するものではない。映画を観ましょう、映画を観ましょう。

で、映画を観ていくと、ブロディが苦心惨憺した果てにようやく見つけたメモリーカードの中にはイヴォンヌが夫を殺害した瞬間がばっちり映っておりました。

おわり。

 

 

……………………。

 

 


ドンッ!(床を蹴る音)

 

 


まったく人を食った映画だ。

「夫殺しの犯人は妻かもしれない」と思わせておいて「ええ、そうですとも妻ですとも」というところに113分かけて軟着陸しただけのとってもマイペースな作品でした。

とはいえ私は「映画」を観ているのであって「物語」を見ているわけではないので、こちらの予想通りの結末だろうが予想外の結末だろうがそんなものはこちらの勝手な都合。すべて予想通りに話が進んだからといって「くだらねえ」と断じてしまうのは批評ではなくただの感想であることも承知している。

次の章では、私が床を蹴った理由について弾丸列挙していこうと思う。

処刑のお時間です♡

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◆雑兵部隊によって作られた映画です◆

「夫殺しの犯人は妻かもしれない」というA地点と「やっぱり妻でした」というB地点の結び方、すなわち真相究明までのプロセスがぜんぶ寄り道なのでプロセスの体すらなしていない。

いわば 女子会のごとき脈絡のない話がポンポン飛び交って、でも序論と結論だけは「やっぱり恋したいよね」というところで一致している…みたいな無理くり話をまとめた感。


サスペンス映画なのにサスペンスの不在という少々おもしろいことが起きている点にも注目したい。

私からは一言、「酒と煙草が撮れないならサスペンスには手を出すな」という忠告をさせて頂きます。

たとえばブロディがイヴォンヌ宅で事件の話をするシーン。いくつか秘密を抱えた彼女は都合の悪いことを追究されないようにブロディを酔わせようとして強い酒をがんがん注ぐのだが、「酒を撮る」というのはガンガン注がれた酒をガンガン飲むということではなく、たとえばブロディが酔ったふりをしてイヴォンヌから重要な話を引き出すといった駆け引き(サスペンス)をやれということだ。

そして「煙草を撮る」というのは、たとえば窓辺で一服しながら話し続けるイヴォンヌの顔を煙草のけむりで覆うことによって「その言葉が嘘かもしれない」と観客に示唆する…といった演出である。

そうした小道具を使ったサスペンスがどこにも見当たらないのは怠惰と言うほかない。

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ブロディに酒を与えるイヴォンヌ。


また、本作の中心には「人妻との情事」というエロチシズムが、イヤン、アフン、もしくはウッフンと屹立していて、いわば本作はファム・ファタールもののエロティック・サスペンスなのだが、その主演にエイドリアン・ブロディを配置したのはなかなかいいと思います。

ブロディといえば公私に渡るスケコマシ俳優なので、妻子がありながら未亡人との不倫にのめり込んだせいで事件に巻き込まれて痛い目に遭う…という鈍臭い主人公をより鈍臭く演じている。

問題は肝心のファムファタール役で、これがイヴォンヌ・ストラホフスキーという女性アスリートみたいな顔をした女優なのだ。

ファムファタールらしい影や妖しさとはおよそ無縁で、むしろ陽光がガンガン降り注ぐなかでラケット振り回したり棒高跳びとかしてそうな、まさに健康そのものといった感じ。アクエリアスの似合う女。ナイキの似合う女。

こんなバカみたいな配役をしていることから、おそらく作り手はジョーン・ベネットもリタ・ヘイワースも観ていないのだろう。処刑しない手はない。

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エイドリアン・ブロディ(左)…戦場のピアニスト』(02年)で知られる八の字眉毛。見るからにスケコマシ。

イヴォンヌ・ストラホフスキー(右)…海外ドラマ『CHUCK/チャック』のレギュラーらしいです。前世は確実にアスリート。


そう、作り手。作り手にもケチをつけさせて頂く。

こんなことは言いたくないが、本作は新人スタッフの寄せ集めによって作られた、まるで新入生研修のワークショップみたいな作品である。「間違ってもいいからやってごらん」みたいな。

実際、監督のブライアン・デキュベリスをはじめ、撮影、編集、脚本、音楽、製作総指揮と、揃いも揃ってド新人ばかりで、過去に携わった作品がひとつもないという…あまりにもフレッシュすぎる布陣。

七人の侍(54年)でいえば戦闘経験なしの百姓部隊。付け焼刃も付け焼刃。烏合の衆も烏合の衆。隊列バラバラ、足並み揃わない、武器忘れてきた奴がパラパラいる…という無統制集団なのである。

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「雑兵」と打ったらこの画像が出てきました。この映画のスタッフです。

 

そんな中、ただ一人だけキャリアを持っているのが衣装係とはどういうことなのか。衣装係が一番のベテランかよ。唯一の侍かよ。あまりに心許ねぇ。

そしていちばん不思議なのは製作総指揮の一人にジャッキー・チェンが名を連ねていることだ。

おまえがミステリーだよ!

成龍、コラ!

なぜジャッキーのようなカンフー名人がこんなエロティック・サスペンスに関わっているのか。この映画最大の謎はここにありました。 


◆空振りでもいいからバットを振れ!◆

とはいえ、べつに世間の評価は私ほど辛辣ではないし、むしろ好意的な評も散見されるので たぶんここまで貶してるのは私ぐらいのものだろう。

実際、「サスペンスの不在」という致命的な欠陥を除けば、たしかにここまで悪しざまに貶すような作品ではないのは事実。認める!

だとしたら、ここで言いすぎたことを反省して掌を返すように美点を挙げていくのかといえば、ノン。断固ノン。

むしろ、より批判の切っ先を研いでこの映画にトドメを刺すつもりでいるから覚悟されよ。


酷評するほどひどい出来ではないのにそれでも酷評する理由は、酷評するほどひどい出来ではないからというトートロジーに帰着する。

ここからは私の持論タイムというか、まぁ感情論ね。ご容赦。

この世で最も許しがたい映画とは、ごく普通の出来栄えに収めようとする穏当な姿勢によって撮られた「普通の映画」である。

私は思いきりバットをフルスイングして空振りした映画より、バットを振らずにフォアボールで一塁に進んだ映画をこそ唾棄する。野球ならアリだが、映画ではナシだ。

100点を狙ったけど0点だった映画より、50点を想定して狙い通りに50点を取った映画の方がタチが悪いだ。

どんなムチャな球がきても、バットを握っている以上はそれを振ってくれ。

戦略的に「バットを振らない」という選択をすることは、それはもう表現ではなく商戦なので、そういう映画人は即刻業界から退いて頂きたいと思います。レッドカードだ!

 

で、この『白い闇の女』という作品は終始守りに入っていて。

10人中4人の観客に「まあまあ良かった」と思ってもらえれば御の字…という当たり障りのない作り方をしていて、ハナからバットを振る気がない。こだわり、情念、玉砕精神。そうした表現欲を持たない雑兵インポ集団がテンプレ通りのエロティック・サスペンスをなぞっているだけ。

まぁ、はっきり言って『殺意の香り』(82年)のマガイモノを低いテンションで作りました…という感じの作品である。『殺意の香り』パクったでしょ? バレとんのじゃ!

せっかく新人スタッフばかり揃ったんだから青臭い情熱を映画に叩きつけてくれないと。「失敗するかもしれないけど、どうしてもこれがやりたいんです!」というモノを見せてくれないと。

雑兵の底意地、見せんかえ!

 

先ほどエイドリアン・ブロディの配役だけは褒めたが、見せ方は惨憺たるもの。

「ブロディは適役だしキャリアも積んだプロだから、まぁ放っておいても上手くやってくれるでしょ~」とばかりにカメラが被写体を放置してる状態で。だから髪型も衣装も終始変わらない。

作り手の映画への無関心がバキバキに浮き上がってます。

最後にエレファントカシマシ「穴があったら入いりたい」から、この歌詞を本作に贈りたいと思います。


おい うまくやってるつもりだろうが全部ばれてるぜ 御同輩!

 

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