罠にかけられたので怒ります。
2017年。タラン・キラム監督。タラン・キラム、アーノルド・シュワルツェネッガー、ボビー・モナハン。
新進気鋭のヒットマンのブレイクは、世界最強の殺し屋と言われるガンサーを倒し、その座を手に入れようと、各国から個性豊かな凄腕の殺し屋たちを集めて打倒ガンサーのチームを結成し、追跡を開始する。そんなブレイクたちに対してガンサーも猛反撃。次々と仲間が倒されていく中、ブレイクは何とかガンサーのアジトを突き止めるが…。(映画.comより)
おはようございます。
先日リップクリームを買いました。それも2本も。
私は唇が乾燥して裂けやすく、二ッと笑うたびに血だらけになるので、もう血は見たくないということでリップクリームを購入する運びとなりました。ニベアですよ、ニベア。リップクリーム業界の王様。
ニベアだからか、1本400円以上もしましたよ。ふざけんな。リップを潤すだけで何を400円もすることがあんねん。阿漕な商売やで。まったく。でもドラッグストアの店員さんが倉科カナ似だったからゆるす。
そんなわけで、ここ最近の私の唇は非常にぷるぷるしていますね。化粧品メーカーの方が読んでおられたら私をCMに使うチャンスですよ! なんてね。はは。おもろ。
あ、笑ったらまた唇が裂けた。リップ塗った意味ないやないか。
これで400円…? 400円払って尚こんなザマになるの? 阿漕な商売やでぇ。
そんなわけで本日は『キリング・ガンサー』です。唇はぷるぷるだけど私はぷりぷり怒ってます。
◆罠でしょ◆
シュワちゃんのアクション復帰作きたでー! と喜び勇んでの鑑賞。
いやぁ、トレーラーに騙された。そもそも日本版ポスターのシュワちゃんが合成丸出しなので堅気の映画ではないだろうなとは思っていたが、まさかここまでヒドい映画だとは。
日本版ポスター。
上映時間93分のうちシュワちゃんが出るのは15分ぐらいです。
罠でしょ。
トレーラーを見る限りだと、シュワちゃん演じる世界最強の殺し屋ガンサーが同業者の殺し屋チームに命を狙われるもバッタバッタと返り討ちにする! ヒャッホー!…といった内容を思わせるが、逆です。
世界中の殺し屋たちがチームを結成してガンサー打倒を目論む…というもので、あくまで物語の主体は殺し屋チームの方。そのリーダーであるタラン・キラムが事実上の主役である(監督も兼ねている)。これが第二の罠ポイント。
狙撃、爆弾、毒薬、剛腕などさまざまな殺しのプロフェッショナルを集めたタランは、苦心惨憺した果てにガンサーの居場所を突き止め、暗殺決行日にガンサーの隠れ家を襲撃するが、すでにもぬけの殻だったりすぐに逃げられたり…を延々繰り返す。
よってシュワちゃんは映画終盤まで登場しない。罠。
次の罠ポイントは、この映画がフェイク・ドキュメンタリーだということ。
タラン率いる殺し屋チームは、自分たちの活躍を映画にしようとしてカメラマンを同行させる。したがって我々はカメラマンがハンディカムで撮影した映像を通してガンサー暗殺計画の過程を見せられることになる。まさかのPOV方式。手ブレがすげえ。罠がすげえ。
最後の罠ポイントはゴリゴリのコメディだったこと。
タランが集めた殺し屋チームは揃いも揃ってバカばっかりで、爆弾使いはガンサーの車と間違えてべつの車に爆弾を仕掛ける。毒薬使いは向かいのビルの屋上にいるガンサーに向かって毒の入ったスポイトを投げる(届くわけもなく)。「あー」と「うー」しか話せないノータリンまで混ざっている。
そして色々あって終盤。タランと決着をつけぬまま姿を消したガンサーは殺し屋稼業を引退、田舎で農業をする傍らカントリー&ウエスタンの歌手としてデビュー。
シュワちゃん自身が歌ったバカげたカントリー・ミュージックをバックにエンドロールが流れる。
もう許さん。オレを罠にばかりかけやがって!
殺し屋チームの皆さん。
◆義務でしょ◆
殺し屋チームのバカっぷりがなかなか面白いので「まぁ、これはこれでアリかな」と割り切って観れるものの、どうしても気になってしまうのはシュワちゃんの扱い。
シュワちゃんがラスト15分しか登場しないって…。ダメでしょ。
罠でしょ、これ。
きっと作り手たちは観客のことがまるで見えてないんだろうなぁ。アーノルド・シュワルツェネッガーを起用するということがどういうことなのかを何も分かっていない。
シュワちゃんというのは一枚看板のスターで、いわば主演以外に選択肢の余地がない俳優なのだ。シュワちゃんを起用した以上「実は15分しか出番ありません」では済まされないんだよ、ばか! 罠!
『エクスペンダブルズ』(10年)のように、よほどのことがない限りはオマケ扱いしていい俳優ではないし、それでもオマケ扱いするのであればそれ相応のおもしろさと理由を保証してくれないと。セガールを一瞬で退場させた『エグゼクティブ・デシジョン』(96年)はちゃんとやってくれてましたよ。
おそらく観客の99パーセント以上はシュワちゃんだから観たわけで、当然シュワちゃんが活躍することを期待して本作に臨むわけだ。そしたらこの裏切りよう。罠でしょ!
私は普段から「期待外れは期待した方の過失」という持論をしきりに唱えているが、今回に関しては別問題だよ。なぜなら「シュワちゃんを使う以上は主演にすべし」というのはもはや我々の期待の問題ではなく職業倫理の範疇だからだ、バカ!
一言でいえば義務だよ!
義務に対する罠でしょ。これ。義務を罠にかけるなよ。
「義務」なんて堅苦しい言い方をして申し訳ないが、実際そうだからしょうがないんだよ。スターというのは待望論の上にしか存在が許されない、極めて不自由な被写体なんだよ。
あー、もぉ~~~~。バカ! 罠! 詐欺! シュワ!
笑ろとるでぇ…。
また、シュワちゃん演じるガンサーは正体不明の伝説の殺し屋という設定で、それを追うタランたちは「どんな奴なんだろう?」としきりに繰り返してガンサーの正体を謎めかす。
いや、シュワちゃんやん。
ポスターやトレーラーでシュワちゃんが大写しになってる時点で観客サイドからしたら正体バレバレやん。
バレバレっていうか、本作のパッケージやプロモーションからして隠す気ないよね。そりゃそうだよね。「シュワちゃん出てます!」の一点押しでしか集客が見込めないようなB級映画だからシュワちゃんを全面に押し出すしかないよね。
いわばガンサー=シュワちゃんというのは公然の事実なんだよ。
映画観る前から分かってますやん。そんなこと。
なのに劇中では「ガンサーって誰なんだ?」、「男とは限らないよね」、「その正体は誰も知らないと言うよ!」みたいなくだりで延々60分ぐらい引っ張る。
いや、シュワちゃんやん。
わかりきったことやん。そこボカしても意味ないねん。
公然の事実をミステリーにするなよ。
笑ろとる場合か!
まぁでも、作り手の意図はわかるよ。
シュワちゃんはこれまでにザコ敵をバンバン殺してきたけど、逆にザコ敵の視点から映画を作ったら面白いんじゃねってことでしょ?
面白くねえよ。
現にこの映画は本国未公開に終わっている。さもありなんだよ。
そうそう。こないだビデオ屋でウロウロしているときに、いかにもアクション映画以外は見ませんといった感じのおっさんがこのDVDを手にしたとき、私は心の中で「あかーん!」と叫んだ。「罠やで、その映画! シュワちゃん全然出てこおへんで」って言おうとしたけど、おっさんの自由意思を尊重して言わないことにした。その結果、おっさんは見事に罠にかかった。気の毒だった。
↓このシーンだけは好きです。