シネマ一刀両断

面白い映画は手放しに褒めちぎり、くだらない映画はメタメタにけなす! 歯に衣着せぬハートフル本音映画評!

ブリザード 凍える秘密

夢が答えを教えてくれるって…もはやミステリーでも何でもねえよ。

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2017年。グレッグ・アラキ監督。シェイリーン・ウッドリーエヴァ・グリーン

 

1988年、キャットが17歳のときに母親イヴが何の前触れも無くある日突然失踪する。思春期のキャットはその事実を意図的に意識しないように過ごしてきたが、そのことがきっかけで徐々に彼女の生活は乱れていく。やがて大学に入学して実家を離れ、恋人と出会い、成長していくにつれ、幼い頃の母親との記憶を思い返すようになる。そして春休みに久々に実家に戻ると、母親の捜査を担当していた刑事から、母親が何者かに殺害されたとしか考えられないと告げられる…。(Amazonより)

 

おいすー。

過日、「なんでこんな寒いねん…、なんでこんな寒いねん…」と呪詛のように呟きながら街を練り歩いていると、ミニスカの女雪見大福を食べながらぽこぽこと歩いてゐた。

なんでやねん。

なぜ1月のくそ寒い日に生足むき出しのミニスカでぽこぽこと街を歩きながら雪見大福をモチャモチャと食べることができるのか。寒くないのか。雪女の子孫かおまえは。

かと思えば2日前、散髪に行こうと思って街をぽくぽく歩いていると、前方から小走りの青年が。

ぬくそうなセーターに寒そうな短パン。

なんっ…でやねん!

ぬくみさむみのバランスがしっちゃかめっちゃかなのは言うに及ばず、やっぱり気になるのはなんで1月のくそ寒い日に生足むき出しやねん、という点に尽きる。

1月って寒いよね? 足見せスタイルを先取りするにはまだまだ寒いよね?

まぁ、当人たちが「私はそうして生きてきたから…」と言うのであれば「ああ、そうですか」としか言えないのだけど、私は寒そうな恰好をしている人を見ると自分まで寒くなってきて、その人を見ながら「やめてやめてー。そんな恰好…」と思ってしまうので、この時期に薄着で街をうろついている人は目に毒なのである。

それにしても元気な若者が多いものだ。風の子か、おまえらは。どこへ行くんだ?

 

そんなわけで本日は『ブリザード 凍える秘密』という低予算マイナー映画でみんなを翻弄していくよ。よろしくどうぞ。

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◆何も問題のないミステリー。否、ミステリーですらない。じゃあなんだコレは?◆

ある日突然ママンが消えた。

なぜママンは姿を消したのか、そしてどこにいるのか。残された娘とパパンの侘しい生活を描きながら、随所で失踪前のママンの人物像が何度もフラッシュバックされる。

しかし、消えたママンをめぐる謎解きよりも娘の性春時代を綴る方にこそ比重が置かれている本作。

17歳の娘はママンの行方よりもセックスに関心があり、隣りの家に住むボーイフレンドとの性的遊戯をエンジョイしている。挙げ句に失踪事件を担当する刑事とも肉体関係を持つような期待の大型ビッチである(将来有望)。

消えたママンへの未練はすでに断ち切っているようだし、パパンのほうも新しい恋人をゲットして第二の人生を歩み始めている。


何も問題ないじゃないか。

 

ある意味すでにハッピーエンドだよ。

開幕と同時にハッピーエンド迎えとる。だって設定がすでにハッピーだもん(ママン失踪事件は悲しむべきことだが)

こっから先どうすんだ、この映画?

「ママン失踪」という問題が大前提に置かれてはいるが、パパンと娘は「母さんはもう帰ってこないだろう」と完全に諦めていて、事件を担当した刑事も「がんばって捜査したけど見っかんなかったわ」と匙を投げてる状態。

問題を解決しようという意思や情熱を持ったキャラクターが一人もいないので、ママン失踪ミステリーは放ったらかしにされてしまうのである。

可愛そうなママン!

したがって、ママンが消えたことを受け入れた娘がビッチ街道を遮二無二ひた走るさまが淡々と描かれた内容となっております。

なんやこれ。

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娘とパパンが捜索願を出すが結局ママンの行方は見つからず(画像上)。

ママン捜しを諦めた娘は男遊びに夢中(画像下)。

映画はまだ序盤です。

 

そんなわけで、娘の無軌道な性春が1時間近く描かれる。だいぶ描いたなー。

ところが終盤になって「はぅあ! ママンの居場所が分かったかもしんない!」と言い出した娘が、急にやる気を出してママン失踪ミステリーを解こうとする。

今さら謎解きに取り組むの?

もうええんちゃう? すでにこっちも興味ないし。

ていうか、あと20分ぐらいで映画終わっちゃうけど…今から着手して間に合うんけ?

しかも、謎を解くための手がかりというのが…娘が見た夢。

夢!!

夢の中ではママンが雪に埋もれて「私はここにいるよー」と青山テルマみたいなことを言いながらガチガチ凍えていた。

ハッと夢から覚めた娘、もしやと思って自宅の地下室の冷凍庫を開けてみたらカチカチに凍ったママンの遺体が見つかった。この夫婦は昔から仲が冷えきっていて、パパンがママンを殺害して冷凍庫に隠したのである。

謎解き終了。

夢の使い方が乱暴きわまりないぞ。ふざけるな。

夢が答えを教えてくれるって、もはやミステリーでも何でもねえよ。

中間テストに取り組んでいる学生に対して、先生が「そこ、答えは(b)ですよ」って言ってるようなものじゃねえか。解いてる最中に答えドーン!だよ。自力で解かせてやれよ。

それに、妻の死体を自宅の冷凍庫に隠すかね?

いくら夫婦仲が冷えきっていたからといって…物理的に冷やさなくてもいいじゃない。

そんなわけで、面白くもなんともないコント映画でした。寒。

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殺されて冷凍庫に入れられた妻が娘の夢の中に出てきます(画像下)。


エヴァ・ウォッチャーおれ◆

17歳の主人公をシェイリーン・ウッドリーが全力で演じており、消えた母親をエヴァ・グリーンが40パーセントの力で演じている。

シェイリーン・ウッドリー『きっと、星のせいじゃない。』(14年)『ダイバージェント』(14年)シリーズで頭角を現し始めた若手女優で、健康美を売りにした今どき女子といった感じだ。おそらく骨密度が高い。

冷凍ママンの役を渋々引き受けたエヴァ・グリーン007 カジノ・ロワイヤル(06年)でボンドガールを演じたり、ティム・バートンミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち(16年)で主演を射止めるなど絶賛活躍中。フランスが生んだ緑の妖婦である。

本作はエロティック・サスペンスなので、無類のエヴァファンの私はてっきりエヴァが脱ぎまくる作品なのかと思って「ならば観ない手はないでしょう」とブツブツ言いながら本作を鑑賞したのだがエヴァはよく脱ぐ女優なので)、蓋を開けてみると脱ぎ散らかしていたのはエヴァではなくシェイリーンの方だったという裏切り。および悲しみ。

この時点で『ブリザード 凍える秘密』は私の心を掴むことに失敗しています。

とはいえ回想シーンではエヴァの珍しい髪型が楽しめるので、世界で15億人はいるであろうエヴァ・ウォッチャーには必見の作と言える。

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エヴァグリーン(左)とシェイリーン・ウッドリー(右)。


やはり内容的には不満が残る。

物語は母が消えた1988年に始まり映画中盤で1991年に飛ぶのだが、随所でフラッシュバック(回想)が挟みこまれるので時制の判断がややこしい。「今いつやねん」と。

しかも本作の場合、フラッシュバックと一口に言っても「過去の情景」「夢の情景」の二通りがあるので、現実と虚構の判断が更にややこしい。

こんな複雑なことをするなんて…、完璧になめてやがる。

回想シーンの中ではママンが夫に苛立ったり専業主婦であることに嫌気が差して爆発寸前になる過程が描かれるが、何が原因でそうなったのか…という根本的な理由が棚上げされているので非常に曖昧なキャラクターになっているあたりも無念千万。

かと思えばボーイフレンドとイチャイチャする娘に「ふしだらな子!」とか「私だって昔はセクシーだったんだからね。なめるなよ!」などとわけのわからないことを言って謎の対抗心を燃やし、寝ている娘から布団を剥ぎ取るといった奇行を演じる。

「一体どうしちゃったの、ママン…?」

こっちの気持ちを代弁してくれてどうもありがとうだよ!

結局、エヴァ・グリーンが演じたママンは何がどうなってそうなったのか…最後まで分からないままのヒステリー母ちゃんでありました。


そんなママンが夫に殺されて冷凍庫に入れられてしまう。「頭を冷やせ」ということなのだろうか。

だがいちばん頭を冷やしてもらいたいのはこの映画の製作陣である。

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私にはエヴァ・グリーンをウォッチするという使命があります。