うい、おはようございます。
普段わたくしは音楽を聴きながらモノを書くので、今回は『レビューを書くときによく聴く音楽10選』と称してひたすら好きなバンドを挙げて音楽の話をしていく…といった酷くエゴイスティックな内容でお送りしたいと思います。
まぁ、音楽の話というかハードロックの話です。
蜘蛛の子を散らすように読者が逃げていくねぇ。
だけど一度は書いておきたかった記事なんす。8月からちょろちょろ書き始めてようやく完成に漕ぎつけた記事なんす。だから大目に見て。一回こっきりの火遊びじゃないのさ! なにさ!
『レビューを書くときによく聴く音楽10選』ということなので、執筆しながら聴いた際の【効能】と【注意点】をバンドごとに併記しております。私が選んだ【この1曲】から試聴して頂くことも可能です。まぁ誰もしないだろうが。
それでは完全趣味タイムの始まり始まり。
~レビューを書くときによく聴く音楽10選~
【1】レッド・ツェッペリン
1968年にイギリスで結成。世界中を幻惑し、後のロックシーンに絶大な影響を与えたバンドである。
正直に告白しよう。実はレッド・ツェッペリンを聴きながらレビューを書いたことがない。
だのに『レビューを書くときによく聴く音楽10選』の一発目に挙げたりしていいのだろうか…ただの虚偽になるのではないか…と随分悩んだし、怯えもしたが、思いきって挙げることにした。これによって早くも企画が破綻したわけだが、そんなこと俺は知らないし請け負えない。破綻するなら勝手にすればいい。知ったことか。しね。
レッド・ツェッペリン(以下ZEP)は、ウォール・ストリート・ジャーナルが2018年に発表した「史上最も人気のある100のロックバンド」においてローリング・ストーンズやクイーンを抑えて堂々の2位にランクインした神話的バンドである(ちなみに1位はビートルズ)。
だが私個人が2019年に発表した「史上最も人気のある100のロックバンド」では見事1位に輝いている。
彼らの音楽性は、おそらくZEPを聴かない人が思っているほど激しくもなければ速くもないし、イカれてもいない。むしろハードロックよりもブルースに接近した演奏形態を持つ。そこへフォーク、カントリー、R&B、ファンク、ソウル、レゲエ、中近東音楽などを混ぜ込んだ極めてエスニックなサウンドなのである。
まるで大自然の中で鳴らしているような五大元素を感じるロックだ。ウソだと思うなら試しにZEPを聴いてみるといい。きっと大地の温かさと空の広さを感じるはずだ。風や水や火のざわめきも感じるだろう…。
安心しろ、それは気のせいだ。
感じるわけないだろ、そんなもの。音楽を何だと思ってんだ!
ZEPの功績は色々あるが、とりわけ私が表彰したいのはパワーバラードを浸透させた点に尽きます。
もはやロックのカテゴリーを超えた名曲「Stairway to Heaven」。邦題「天国への階段」で知られるこの曲は永遠のロックアンセムであると同時にクラシック界からの評価も高く、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の終身指揮者にしてクラシック界の巨匠ヘルベルト・フォン・カラヤンをして「完璧」と言わしめた名曲。
この曲はギターのアルペジオに始まり、楽器隊が一人ずつ加わってどんどんグルーヴを増していき最終的に大爆発するという8分の大曲だ。これ以降、ハードロックシーンはパワーバラードを代表曲に持つことがステイタスとなり、そこから数々の名曲が生み出された。
エアロスミス「Dream On」
クイーン「Bohemian Rhapsody」
スコーピオンズ「Still Loving You」
キッス「Forever」
ジューダス・プリースト「Dreamer Deceiver」
メタリカ「One」
デフ・レパード「Love Bites」
スティールハート「She's Gone」
ガンズ・アンド・ローゼズ「Sweet Child o' Mine」
モトリー・クルー「Home Sweet Home」
スキッド・ロウ「I Remember You」
いっぱいありますね。もっとあります。
また、椿鬼奴というすごい化粧をしたタレントは「Stairway to Heaven」をカラオケで歌えないもどかしさを吐露している(長尺ゆえ)。私も過去に一度だけ歌ったことがあるが、曲が終わって振り向いたら友人2名が居眠りしていました。天国への階段を上り始めている…。
だが「この1曲」に挙げるのは「Immigrant Song」。邦題は「移民の歌」で、これは私が昔飼っていた熱帯魚に名付けた名前である。愛情を込めて「移民」と呼んでいた。移民は実にきれいな泳ぎ方をして、よくエサを欲する奴だった。
【 効 能 】執筆時に聴くと安らかな気持ちで書けます。
【 注意点 】長時間聴くと気を失う。
【この1曲】「Immigrant Song」
www.youtube.com『ドラゴン・タトゥーの女』(11年)や『マイティ・ソー バトルロイヤル』(17年)でも使われたロックアンセム「Immigrant Song」。ロバート・プラントのターザン絶叫、ジミー・ペイジの最強リフ、それを追うジョンジーのベース、そしてボンゾの爆裂ドラムが4Dのサウンドを展開する! 4Dのサウンドって何なんだ!
【2】ディープ・パープル
1968年にイギリスで結成。レッド・ツェッペリン、ブラック・サバスと並んでハードロックBIG3と称され、その礎を築いた伝説のバンドである。
全国の吹奏楽部がだいたい演奏するやつな。
日本でも絶大な人気があり、もうかれこれ半世紀前のバンドだというのに未だに映画、テレビ、CM、ラジオから「Burn」、「Highway Star」、「Smoke on the Water」、「Speed King」、「Black Night」のような代表曲がアホみたいに流れてくる。
全国の吹奏楽部は「Burn」→「Smoke on the Water」のメドレーをやりがち。やりがちっていうか百発百中やる。それが奴らの習性だ。
ディープ・パープル(以下DP)の楽曲は「誰でも知ってるリフ」に加えて「歌メロがある」ので日本人好みの歌謡曲に符合する部分が大きいのだろう。
そんな彼らの音楽性はリッチー・ブラックモア(Gt)のクラシカルな速弾きによって確立された様式美。ハードロックだけでなく、そこにクラシック音楽を融和させたからこそ吹奏楽部にも人気があるのかも。
また、ブラックモア先生は唯我独尊タイプなので必然的にソロが多い。曲の半分以上がギターソロという自己顕示欲のオバケである。
そう考えるとこんなバンドがよく日本でウケたなーと思う。もともと日本人の音楽嗜好は演歌や歌謡曲のように「歌メロありき」。この感覚はカラオケ文化で更に加速した。みんな「曲」のことを平気で「歌」って言うでしょう。現に今のポピュラー音楽におけるギターソロなんてせいぜい20秒程度で、曲の2番と大サビを繋げる箸休め扱いである。だからカラオケで「Highway Star」を入れるとギターソロが2分ぐらいあるのでツレに飽きられて悲しい思いをする。
また、DPはメンバーが激しく入れ替わることでも有名で、これまでにキーボード1回、ベース3回、ギター4回、ボーカルに至っては5回代わっている。人事がすげえ。ドラムのイアン・ペイスだけが一度も代わらずに叩き続けること半世紀越え。その皮膚は誰よりも深い紫色をしていたという。
イアン・ギランがボーカルだった第2期が黄金期とされ、次いでデイヴィッド・カヴァデールに交代した第3期も好調。第4期ではリーダーのブラックモア先生がまさかの脱退を表明(第5期で戻ってきたが第6期でまた脱退した)。
【 効 能 】速い曲を聴きながら執筆するとタイピングも速くなる。
【 注意点 】ソロだらけ。
【この1曲】「Highway Star」
www.youtube.com言わずもがなの「Highway Star」やで。この曲にはもう誰もケチつけられへんで。ギター、ボーカル、ベース、ドラム、キーボードのすべてを「使い切った」名曲やで。
【3】レインボー
DPを脱退したブラックモア先生が1975年に結成したイギリスのハードロックバンド。
ディープ・パープルに聴き疲れたらレインボー、レインボーにうんざりしたらディープ・パープル…という無限サイクルだけで人は幸福に一生を終えられると思います。
レインボーも人がコロコロ変わるバンドだが、なんといっても孤高の天才ギタリストことブラックモア先生(Gt)、メタル界のゴッドファーザーことロニー・ジェイムス・ディオ(Vo)、不世出の渡り鳥ことコージー・パウエル(Dr)の三頭政治時代があまりに素晴らしく。この3人が在籍していた頃の2nd『虹を翔る覇者』と3rd『バビロンの城門』はワンツーフィニッシュでハードロック史の名盤となった。
そんなレインボーの音楽性は中世の世界観を前面に押し出した様式美ハードロックである。騎士、王国、仮面舞踏会、魔法の絨毯…。そんな感じだ。
曲はDP期よりもシェイプアップされていて、長いソロもなく随分ゴキゲンである。DPから一転、アメリカ市場を視野に入れたレインボーは歌モノ主体のハード路線をひた走る。中近東をイメージさせるオリエンタルな様式美ハードから哀愁漂うメロディアスなパワーバラードまで実に多芸だ。
また、「首切り魔」の異名で恐れられたブラックモア先生はメンバーにクビを言い渡すのが趣味で、ボーカルが過去4回も代わっている。歴代ボーカリストはロニー・ジェイムス・ディオ、グラハム・ボネット、ジョー・リン・ターナー、ドゥギー・ホワイトなど錚々たる面子。
なおグラハム・ボネットの解雇理由は髪型が腹立つから(そのあとギターで殴りつけた)。
ブラックモア先生はなかなかのイタズラっ子で、ステージ上でダイナマイトを爆破させたり(ステージ全壊)、TVカメラを破壊してアンプを放火したり(逮捕される前にヘリで他州へ逃亡)、メンバーのジミー・ベインを火炎放射器で燃き殺そうとしたこともある(殺人未遂)。
【 効 能 】ゴキゲンになれる。
【 注意点 】メロディが気持ちよすぎて執筆に集中できない。
【この1曲】「Black Masquerade」
www.youtube.com本当は「Kill The King」を挙げたいが、ブラックモア先生の様式美が最もよく伝わるのは「Black Masquerade」かもしれません。いかにも大仰! いかにもゴシック! 2番サビ終わりのスパニッシュギターからの「ア――――!」からのキーボードソロからのギターソロやで。
【4】ヴァン・ヘイレン
1972年にアメリカでグイッと結成。
ヴァン・ヘイレンは何といってもバンド名がカッコイイ。
反則だろ、こんなの。ヴァン・ヘイレンだぜ。しなやかで色気のあるバンド名すぎるだろ。
ヴァン・ヘイレンはギターのエドワード・ヴァン・ヘイレン(エディ)を中心としたギターバンドである。リフの組立てと奇抜なソロ、何よりエディの代名詞とも言えるタッピング奏法を聴きどころとしたハードロックだ。
何といっても「Jump」である。キムタクのドラマ『MR.BRAIN』に使われ、近年では『レディ・プレイヤー1』(18年)の劇中にもぶち込まれていたが、これはシンセサイザー嫌いの私が唯一聴けるエレクトロ・ロック。だが本来のバンドサウンドからは大きく遊離した異色作だということをどうか分かってけろ。
思いつきのように歌を乗せていくデイヴィッド・リー・ロス(通称デイヴ)のデタラメ歌唱法には得も言われぬ愛嬌があったが、1985年に脱退、代わりに「ヴォイス・オブ・アメリカ」の異名で知られる米ロック界最強のパワーボーカリスト、サミー・ヘイガーが後釜についたことでヘヴィかつメロディアスなサウンドを獲得。どちらも華のあるフロントマンだが、皿洗いをするときはサミー期、映画評を書くときはデイヴ期と聴き分けるのが吉。
クールなバンド名と超絶技巧のギターワークに反しておバカなのがヴァン・ヘイレンのチャームポイントだ。
MVの馬鹿馬鹿しさ、ナンセンスな歌詞、歌うことよりも踊ることを優先してしまう初代ボーカリスト・デイヴの道化っぷり。ちなみに11枚目のアルバムタイトルは『ヴァン・ヘイレンⅢ』。曰く「オレたちは数の数え方を知らねえのさ」とのこと。
デイヴはいつだってお尻をシェイクさせるようなバカな奴だけど、たまにカッコイイことを口にするんだ。
「三十過ぎたら車のバックミラーは外すつもりさ。過去になんて用はないからな」
うワオ!
【 効 能 】気分向上。
【 注意点 】知能低下。
【この1曲】「Panama」
www.youtube.comワイヤーで吊られて「パナマ! パナマ! 」と騒いでるだけの「Panama」MV。バカすぎるしょ。「Jump」より断然こっちしょ! イントロはあまりに有名しょ。
【5】スコーピオンズ
1965年に旧西ドイツで結成したジャーマンメタルの老舗バンドである。
スコーピオンズは、その凶悪なバンド名と性的なアルバムジャケットから想像するような素行不良のバンドではない。直情的で疾走感のあるロックというよりはほとんど演歌に近い抒情的なメロディと極めて変態度の高い珍妙なリフを持ち味としたクセの強い音楽性を持つ。まるで全身を緩やかに回る毒のように。
54年間の活動の中で「神」ことマイケル・シェンカーや、「仙人」ことウリ・ジョン・ロートなどスーパーギタリストを多数輩出したモンスターバンドでもあり、アルバムの邦題ではバンド名に絡めて「蠍団」と付けられている。
例)『恐怖の蠍団』、『電撃の蠍団』、『暴虐の蠍団』、解散宣言後のアルバムは『蠍団とどめの一撃』、解散撤回後のアルバムは『祝杯の蠍団』など。笑う。
また、ベルリンの壁崩壊および冷戦終結を歌ったパワーバラード「Wind of Change」はドイツ人にとって心の曲となり、蠍団の面々はこの曲が収録されたゴールドレコードをゴルバチョフに捧げた(ゴルバチョフは「わぁ、ぜんぜんいらない」と思った)。まさにドイツが誇る国民的バンドなのであるよなー。
そんな蠍団の皆さんだが、今でも語り草になっているのは幾度となく発禁処分を喰らったアルバムジャケット。
画像左上の『イン・トランス』のジャケットはエレキギターに跨った女(乳首見えてる)が「騎乗位セックスを連想させる」として発禁処分、画像右上の『ラヴドライヴ』では女性の乳房にガムのようなものを付着させてビヨンビヨンやってるような写真が「女性蔑視」とされ発禁処分。蠍団の面々はしこたま怒られた。
だがこれに懲りる蠍団ではない。その後も多くのアルバムジャケットが問題視されたが、最もセンセーショナルを巻き起こしたのは幼女の全裸写真をアルバムジャケットに使った『ヴァージン・キラー』。これはおいそれと載せられるものではないので画像引用は差し控えます。
もっとも、私の目にはどれも格好いいジャケットに映るのだがなぁ。スコーピオンズのアートワークはどれもハイセンスだよ。乳首見えてるぐらいでいちいち騒ぐなカス。
【 効 能 】執筆に没頭できる独特の世界観。
【 注意点 】変態リフによる注意散漫。
【この1曲】「We'll Burn The Sky」
www.youtube.com独特なリフを軸にバラードパートと疾走パートを行ったり来たりするウリ在籍時の名曲。この変則性こそがスコーピオンズ!
【6】ホワイトスネイク
ディープ・パープルの3代目ボーカリスト、デイヴィッド・カヴァデール(Vo)が同バンド脱退後の1978年に結成したイギリスのハードロックバンドなんだで。
ブラックモア先生がDPを辞めたあとに立ち上げたレインボーと同じくDPから派生したビッグバンドのひとつである(このように元DPメンバーによるバンドを称して「パープル・ファミリー」と呼ぶ)。
カヴァデールが歌ったDP在籍時の名曲といえば「Burn」。あの曲でギターを弾いてるのがブラックモア先生で、歌ってるのがカヴァデールというわけだな。そのあと二人はDPを脱退したあと、それぞれにレインボーとホワイトスネイクを結成してアメリカ市場でバチバチやり合うわけだ。シビれる展開じゃないか。ロマンじゃあないか!
私はDPよりもホワイトスネイクの方が好みだ。キャリア初期はソウルとブルースを摂取したロックンロール(ゴキゲンそのもの)で50`sロックのようにスウィングしていた。ところが8th『サーペンス・アルバス』がマイケル・ジャクソンの『バッド』に次いでビルボード2位を記録するほどのメガヒット。以降は王者の風格を身につけ、煌びやかでセクシーなスーパーバンドとして君臨している(カヴァデール先生も顔面整形してイケメンに変身)。
ミーハーな私は狙いまくりの大作『サーペンス・アルバス』も死ぬほど好きだが、いつも映画評を書くときに聴くのは初期のソウル&ブルース路線。うねるギター、とぐろを巻くリズム、鋭い牙のごときドラム。そしてギラつく鱗のように色気あるカヴァデールの歌唱。
わぁ、ホワイトスネイク!
すまん、騒いでしまった(騒がないことだけが私の取り柄だったのに)。
初期が好きと言っておいてなんだが、いちばん好きな曲は『サーペンス・アルバス』に収録されている「Still Of The Night」だ。超弩級の色気、緊張感、構成力。私はこの曲でハードロックに堕ちた。聴けば最後、気付いた頃にゃあヘビの胃の中だ!
【 効 能 】静かな夜に聴くと発想力アップ。
【 注意点 】『サーペンス・アルバス』以前/以後で音楽性がまったく違う(カヴァデール先生の顔も)。
【この1曲】「Still Of The Night」
www.youtube.com曲構成は完全にZEPだが、それをホワイトスネイク流に昇華させた超大作「Still Of The Night」。ハードロック様式を線でなく面で捉えたスリリングな一曲。全パート、全楽器からフェロモンが溢れ出ているゥゥゥゥ。
【7】DIO
「メタル界のゴッドファーザー」ことロニー・ジェイムス・ディオが1982年に結成したアメリカのヘヴィメタルバンドといえばこのバンド!
ディオの歌声が大好きなんだよなぁ。ハゲてるけど。
演歌調の絶唱を得意とすることから日本では「メタル界の北島三郎」として親しまれており、『ジョジョの奇妙の冒険』における人気キャラクター「DIO」の名前の由来でもある。
そんなディオ様の経歴をザッと紹介すると、ロックバンドのエルフからレインボーに加入したのちブラック・サバスに鞍替え、ついに自身のバンドDIOを結成、2010年に死亡。
HR/HM界にはディオのようにいろんなバンドに使われることに嫌気がさして自分のバンドを立ち上げる人物が多い。脱サラしてベンチャー企業起こすみたいなノリかな。
彼が在籍していたレインボーとブラック・サバスはあまりに巨大なバンドだったので「ベンチャー企業DIO」はやや見劣りするものの、ガリッとしたフィジカルな音が癖になるミドルテンポの様式美メタルを貫いておられます。炎を吐くようなディオの中音域と衒いのないメタルサウンドの親和性。すなわち安定感ッ。 この安定感こそがディオの魅力なのだ(おまけに絶対音感の持ち主。安定感ッ)。
だが、安定はいずれ揺らぐもの。
最初の4枚までは順調だったが、5th『ロック・アップ・ザ・ウルブス』で急に音が重くなり人気下降、そして6枚目からはオルタナの波に打ち勝とうとモダン・ヘヴィネス路線に転向してグズグズと化す。よって私は初期4枚を延々リピートしている。アルバムジャケットにちょいちょい現れるイメージキャラクターも好き(画像右下以外)。
このようにバンド運営は途中からグズグズになってしまったが、歌手としてのディオはまったく素晴らしい。オペラ歌手のように格調高いボーカリストだったなぁ。1st『ホーリィ・ダイヴァー』は一生聴き続けるであろう一枚。一生はウソかもしれないが。
【 効 能 】思いきった文章が書ける。
【 注意点 】曲が暑苦しいのでしんどくなってくる。
【この1曲】「King Of Rock And Roll」
www.youtube.comミドルテンポの曲が多いディオ様にとって「King Of Rock And Roll」は数少ないスピードメタル。芯が太くてどこか温かい奇跡の声質。
【8】インペリテリ
世界最速ギタリストの異名をとるクリス・インペリテリが「みんな集まってよ」と言って1987年に結成したアメリカのヘヴィメタルバンドであられる。
同じく速弾きを得意とする「光速の豚」ことイングヴェイ・マルムスティーンとはたびたび比較されるバンドだが、なんといってもクリスのザクザク刻む光速ギター。これひとつ!
ネオクラシカルメタルに分類されるのかね。よく知らねえけど。メタルはメタルでも重苦しいスラッシュメタルとかピロピロ系のメロディックスピードメタルが少し苦手な私にとっては丁度良いバンドなのである。これより激しいとだめ。「うるせ」ってなっちゃう。
インペリテリを聴く前まではインテリペリと誤読していたが、いみじくもクリス・インペリテリはインテリな奴だと思う。HR/HMバンドの多くはギター中心主義で「俺が弾いてんだからボーカル黙っとけ」という出しゃばりなギタリストが多いが、クリスは歌メロを優先させるしギターソロもタイトにまとまっている。なんて謙虚な奴なんだ。
また、西洋美術でいうロマン主義のようなアルバムジャケットもベリークールだ。
私はアルバムジャケットも音楽の楽しみの一つだと考えている。どれだけ名盤でもジャケットがダサいとがっかりするし、手に取る気すら起きない。これは映画のポスターにも言えることだ。この世のすべての商品はパッケージありきである。フィルムやレコードそれ自体は作品(芸術)でも、それを包むパッケージは商品なのだ。
これと同じことがインペリテリの楽曲にも言える。芸術的なまでのクリスのギタープレイを包むのはロブ・ロックが絶唱する口ずさみやすい歌メロである。決してロブ・ロックの歌が商品だと言っているわけではないが、この「歌の分かりやすさ」が「複雑に鳴りまくるギター」を媒介しているからこそインペリテリは「やかましいけどギリ聴ける」のである。
そんなインテリ…インペリテリの欠点はレコード店に行ってもなかなか置いてないこと。私の住んでる地域が悪いのかもしれない。ネットで買おうにも値段が高騰しとる。なんて稀少価値の高いバンドなんだ。金がすっ飛んでいく。
【 効 能 】語彙が増える。
【 注意点 】やかましい。
【この1曲】「Hungry Days」
www.youtube.com弾きまくりながらもどこか謙虚なリフ&ソロが、爆裂するツーバスの間隙をすり抜けていく。そして歌メロの格好良さ、曲の短さ。クリスの美学が敷き詰まった一曲。
【9】プリティ・メイズ
1981年にデンマークで結成されたヘヴィメタルバンドである。
ハロウィンに続いてメロディック・パワーメタルの雄とされるプリティ・メイズは、そのバンド名とは裏腹にきわめて男臭いメタルを聴かせる。プリティでもなければメイドでもないという裏ぎり。
1st『レッド・ホット&ヘヴィ』は汗だくつゆだくの漢メタルだが、2nd『フューチャーワールド』と3rd『ジャンプ・ザ・ガン』はアメリカ市場を意識したポップな曲調に変わり、出来もやや中途半端、世界中のファンをして「ん、あれ…?」と思わしめた。
だが続く4th『シン・ディケード』。これが良くも悪くもプリティ・メイズの運命を変えた名盤となる。北欧メタルの旋律美とジャーマンメタルの叙情性を融合させた『シン・ディケード』は彼らの最高傑作に位置付けられたが、このアルバムの最後に収められた「PLEASE DON'T LEAVE ME」の完成度があまりに高すぎて一発屋の誹りを受けてしまったのだ。しかもこの曲は彼らのオリジナル楽曲ではなくジョン・サイクス(元シン・リジィ、ホワイトスネイク)のカバーである。
カバー曲を代表曲に持ってしまったことで過小評価を受けたプリティ・メイズだが、以降はメタルの重さを保持しながらもメロハーに寄せた音楽性へと姿を変え、今なお質の高いアルバムを発表し続けている。
私が思うにメイド喫茶の店員をメンバーに加えればもっと売れたに違いない。それぐらいプリティ・メイズなのにプリティ・メイズ感がない。
【 効 能 】凶悪な言葉が思いつく。
【 注意点 】うるさい。
【この1曲】「PLEASE DON'T LEAVE ME」
www.youtube.comプリティ・メイズ版「PLEASE DON'T LEAVE ME」。哀愁あるバンドサウンドに変身させた名カバー。とても有名なので耳にしたことあ・る・か・も。
【10】プログレ各種
美大時代はプログレッシヴ・ロックに狂っていた。キング・クリムゾン、ピンク・フロイド、エマーソン・レイク&パーマー、イエス、ジェネシス…。
プログレ以外でハマっていたのはデヴィッド・ボウイだ。大枠としてはどれもアート・ロックである。いかにも美大生の趣味って感じでちょっとハナにつくよな。
でも美大野郎にとってプログレはこの上なく創作に適した音楽だったのだ。特別贔屓にしていたピンク・フロイドは思索的というか宇宙的というか…まるで自分の深層心理に釣瓶を落とし、そこで胎児だったころの自分自身と出会うような四次元的な音像が広がっていた。『狂気』や『原子心母』を聴きながら絵を描いていると精神が拡張され、意識と感覚がマグリットの絵みたいに飛んでいっちまいそうになったものだ!
まぁ、気のせいなのだが。
プログレ最大の欠点は演奏能力が常軌を逸していて聴き疲れを起こすことです。
あまつさえ一曲の長さが20~30分なんてのはザラで、その間こちらは恍惚と緊張を強いられ、金縛りに遭ったみたいに涙目でぷるぷるするのみ。瞼もぴくぴくする。聴き終えたあとは充足感と同時に疲労感が全身を襲い、頭はクリームシチューのようにドロドロに熱されてしまう。したがって執筆時に聴いてはなりません。
唯一聴けるのはピンク・フロイドだけだ。鬼気迫るキング・クリムゾンや、全てが調和したイエスのような技巧派ではないが、フロイド独特の哲学的サウンドには抜群のヒーリング効果がある。デヴィッド・ギルモアが奏でる むせび泣くギターが安息を約束します。中でもギルモアがとことん弾き倒す「Shine On You Crazy Diamond」を聴いていると時空を超えてどこかへ行っちまいそうになる。過去と現在がひとつになっていく…。
気のせいだがな。
【 効 能 】胎児の自分と会える。
【 注意点 】演奏力高すぎ&世界観深すぎで逆に疲れる。
【この1曲】ピンク・フロイド「Shine On You Crazy Diamond(Parts I - IX)」
www.youtube.com『ジョジョ』に出てくる「クレイジー・ダイヤモンド」の名前の由来である「Shine On You Crazy Diamond」。9つのパートからなる壮大な組曲で、アルバムでは「(Parts I-V)」と「(Parts VI-IX)」で2曲に分かれている。
以上をもって『レビューを書くときによく聴く音楽10選』を終わる。気持ちの上では50選ぐらいまで書きたかったが、あまりムチャすると脳と指がだめになってしまうので泣く泣く10選に絞った。
次回は『皿洗いをするときによく聴く音楽10選』でお会いしましょう(安心してね、書かないよ)。