優しさや思いやりの心なんて知る必要ないのだわよ!
2017年。レオノール・セライユ監督。レティシア・ドッシュ、グレゴワール・モンサンジョン、スレマン・セイ・ンディアエ。
パリで暮らす31歳の女性ポーラは、10年付き合った恋人に捨てられてしまう。お金も家も仕事もない彼女は途方に暮れ、恋人の飼い猫ムチャチャを盗み出す。猫を連れてきたことで居候先の友人宅からも安宿からも追い出され、実家に戻ろうとしても母親から拒絶されてしまうポーラ。やがて住み込みのベビーシッターのバイトを見つけた彼女は、ショッピングモールの下着店でも働きはじめ、ようやく自分の居場所を見つけたかに思えたが…。(映画.comより)
おはよう、 ふだん平熱のみんな。
季節外れと判っちゃあいるが、たけのこ掘りがしたいのさ。
たけのこ。食べるのは好きだが掘ったことがないのだ。たけのこは見た目からしてドリルみたいでかっこいいし、なんというか、存在自体に風格がある。まるで大作家みたいだ。
この時期はたけのこのおでんが美味しいと思うから、みんな、ぜひ作ってみよう。そのためにはまず我々は何をすべきでしょうか。たけのこを掘ります。この作業に着手しなければいつまで経ってもたけのこのおでんは作れませんよ。永遠に幻です。
そんなわけで本日の『若い女』評は人任せにして、たけのこ彫りに出発するんだ。この日のために「たけのこレーダー」と「たけのこ引っ張り出しマシン」を通販で買ったんだからね。みんな僕について来い。おっしゃー、行くぞー。
◆キャサリン、カムバックだわよ!◆
カモォ~ン、皆さん!
ふかづめさんが「たけのこ掘りにいく」って言い出して姿をくらましたので、今日は私、キャサリン・キャサリン・ランデブーがお送りするわね~~。
6月の『マイ・プレシャス・リスト』(16年)に続いて2度目の出演よ。何人かのランデブーナたちにラブコールを頂いたからまた出てあげたわ。感謝しなきゃあならないわよ、おまえたちィ~。
実は前々から「また出たい」って何度もせっついてたんだけど、ふかづめさんったら「こういう飛び道具は一度しか通用しない。次は飽きられますよ」なんて偉そうなこと言うのよ。
たけのこ掘った穴に埋めちまうぞクソガキ!
春まで眠ってろ!
キャサリン・キャサリン・ランデブー(年齢不詳)
すべてが謎に包まれた妖しき女。血の気が多い。なぜか衣服の中に煙玉を隠し持っており、都合が悪くなるとすぐ煙幕を張る。ふかづめ、元気100パーセント坊ちゃん、インタビュアー純とは古くからの付き合いで、誕生日には手裏剣をプレゼントしてくれるなど優しい一面も。
さて、皆さん。『若い女』はもうご覧になられたかしら? なに、まだ観てない? 野郎~~。観てない奴はヒールで踏んづけちゃうんだから!
この映画はパリを舞台にした素敵なガールズムービーです♡
女子力を磨いているそこのアナタ! 乙女心にキョーミがあるそこの男子! 観なきゃ損、損、孫正義ってな具合だわよォ~~~~。
あ。前にも言ったけど 最後までこういう感じでいくわよ? キャサリン嘘つかない。伊達や酔狂でやってんじゃないのよ。前にも言っただろうが! 何度も同じこと言わすな!
まあ、こんな感じでレビューしていくから、お互い相当疲れること請け合いだわよ。でもカロリー消費できてウィンウィンと言えなくもないわよね。森崎ウィン! ガゼン筆をふるうわよ~~~~。読む気のない奴はさっさとページを閉じてママのおっぱいでもしゃぶってなっ。
じゃあ仕切り直すわね。
今回レビューする『若い女』はフランス映画だわね。しかもパリが舞台だっつうーだから堪んないわよね。なんてロマンチックなのよ!
ちょっとだけストーリーを紹介しちゃうと、写真家の彼氏に捨てられたレティシア・ドッシュちゃんがパリでホームレスになっちゃうって話なの。すでに面白そうでしょ。
ファーストシーンでは恋人に捨てられたばかりのレティシアちゃんが憤怒のあまりドアに頭をぶつけて血だるまになっちゃうのよ。病院に担ぎ込まれても彼女の怒りはおさまらず、医師や患者にぶち切れ! とりあえず仕事を探そうとするものの、面接を断った奴にガチ切れ! ますます面白そうでしょ。
激おこぷんぷん丸のレティシアちゃんは「むかつくんじゃあー」と叫び、元カレの家の前にいた飼い猫をさらってパリ中を放浪しちゃうの。住む家を失ったレティシアちゃんは、よく知らない人のパーティーに潜り込んで食べ物を漁ったり、自分を旧友と勘違いした女の子に話を合わせてその娘の家に転がり込んだりしちゃうのよ~。おほほ!
まぁでも、きっと男性読者は「ただのヒステリー女では?」なんて思ってるでしょうね。レッテルを貼ることでしか人を規定できない悪辣便所のウジ虫どもが!
まだレティシアちゃんのすべてを語ってもいねえ内から「ヒステリー女」と決めつけたオマエの方こそヒス起こしてることに一刻も早く気づけェェ――——ッ!
ヤダ、ぶちぎれ過ぎて化粧が崩れてきちゃったわ…。ヒス起こしてたのは私の方だったわね。
次の章ではレティシアちゃんの魅力にググイと迫っていくわよ~。カモォ~ン。
主演のレティシアちゃんだわよ~。
◆変わらない強さだわよ!◆
カモ~ン、第二章ね。
この章ではレティシアちゃんの人物像を深掘りしていくのよ~。
彼女は若いころに家出したせいでママンに勘当されちゃったの。でもそのすぐ後に写真家の恋人(50歳よ!)と出会って10年も贅沢な暮らしをさせてもらっていたけど、このたび破局したことで初めて世界に放り出されたのよ。言ってる意味わかるわよね。
社会というものを何ひとつ知らない温室育ちの甘ったれガールが、ある日突然ホームレスになって右往左往するわけだわよ~~。
だから、ある意味ではレティシアちゃんにさらわれた元カレのペルシャ猫は彼女自身とも言えるわけよね。温室育ちのペルシャ猫に自分を重ね合わせて一緒にパリ中を彷徨うことで、彼女はこの猫にいくらか慰められたんだと思うわ。けっこうイイ線いってるでしょ、私のコーサツ!
レティシアちゃんの問題は人格破綻しちゃってるコトね。
とにかく口汚くて、皮肉屋で、しょっちゅう人に突っかかるもんだから、周囲の人からすごく嫌われてしまうの。ファーストシーンでMAX怒ってるときなんかはさすがの私も不快感を抱いたわ。「ちょっと勘弁してよ。この頭のおかしい女がヒロインなわけえ?」ってね。ごく控えめに言って私の5倍はヒステリーなんだもんナー!
あ、このヒロインがヒステリー女であることを認めてしまったわ。語るに落ちたわ。チクショー、やるじゃないのさ。悪辣便所のウジ虫どもめっ。
しかも『若い女』って邦題だけど、レティシアちゃん…31歳なのよ。31歳でこの幼稚な性格はアイタタタってなもんだわよぉ~~~~。
でもね、でもね、そこから少しずつ尖った人柄が丸くなっていくの。
…いいえ、「人柄が丸くなる」というよりは「社会に適応する上で相応しい人柄を演じるようなっていく」と言うべきだわねぇ~~~~!
今言ったことがこの映画のポイントだと思うわけ。いい? よく聞いてね。
並みの映画だったら「擦れた主人公がさまざまな人と交流するうちに優しさや思いやりの心を知っていく」みたいな描き方をするし、それこそがヒューマンドラマだと思うんだけど、べつにレティシアちゃんは優しさとか思いやりの心を知っていくわけじゃないの。
ただ社会生活を送る上ではそういう心があるフリをした方が都合がいいからペルソナを被っているだけなのよォ――――ッ!
これって「女の処世術」そのものだと思うわけ。じつは私ってバツイチなんだけど、前の旦那と付き合ったばかりの頃はわざと物を知らないフリをしていたもんだわ(男って自尊心を満たしてあげると喜ぶのよねぇ、バカだから)。それにお義母さんの前では「あら、気が利くわね。キャサリンさん」と思われるために100点満点の妻を演じたし。時代が時代だったから、そうでもしないとやっていかれなかったのよ。命懸けで猫被ったわよ、こなくそ~~~~!
私もレティシアちゃんと同じように口汚くて皮肉屋でしょっちゅう人に突っかかる性格だから、なんだかこの娘の気持ちがわかるような気がしてサ。だから「人格破綻者が優しさに目覚める」とか、そんなキレイゴトを描いた作品じゃないの、これは。
むしろ「変わらない強さ」を描いているのよォォォォ!!
たとえ性格が捻じ曲がっていても自分は自分でしょ? その自分を変えてまで優しさとか思いやりのある善人になることが大事だっていうの?
それに、どんな性格や人柄だって一長一短だわよね。気が強い性格ゆえに権力に立ち向かったり、皮肉屋だからこそのモノの見方だってあるわけじゃんかいさ。そりゃあ他人様に迷惑をかけるのはよくないけど、だからといって優しさとか思いやりに目覚めてお利巧さんになることが人間的成長? それがヒューマンドラマだとでも?
くそを喰らえ!
自分の「核」は決して譲らずッ、TPOに応じてペルソナを被りこれを対処ッ、それがアスファルトジャングルを生き抜くたったひとつの術でしょうがぁぁぁぁぁぁ! 令和ですッ!!
そりゃあ、楽な生き方じゃないわ。あちこちでしんどい思いを溜め込んで、その捌け口だったはずの友人とのお喋りでさえも気が付いたら愛想笑いを浮かべてる自分がいたりなんかしちゃったりして。
人間関係にはストレスという名の税金が掛かるのだわよ!
みんながインスタ用に料理の写真を撮り始めたから「自分も撮らなきゃいけないのかな」みたいな気になって一応撮ったはいいものの私インスタやってねぇ~~~~みたいな。人生ピリ辛! アスファルトジャングルやべ~~~~!
……あれ?
これヤバくない? ハナシかなり脱線してない? 軌道修正できない。どこココ? 宇宙?
ヘンなとこに来すぎて宇宙船に戻れないわ!!!
「助けに来ました!」
元気100パーセント坊ちゃん
キャサリン「あらあら、坊ちゃん。久しぶりの登場ね!」
坊ちゃん 「キャサリンがこうなるであろう事を見越したふかづめさんが予め僕を手配していたようです」
キャサリン「ふかづめマジやべー。ただ闇雲にたけのこを掘りに行ったわけじゃなかったのね、あのこましゃくれ」
坊ちゃん 「そんなわけで、ここからは対談形式です! 二人で第三章に向かいますよ!」
キャサリン「いや、それはいいわ」
坊ちゃん 「えっ…」
キャサリン「今回の主役はあくまで私だから。対談形式でやったら出番半減するじゃない」
坊ちゃん 「久しぶりに登場したと思ったらこの仕打ち」
キャサリン「ガキは家帰ってママのおっぱいでもしゃぶってな」
職場の上司と交流するレティシアちゃんだわよ~。
◆ダサくてミジメだからいいのよ!◆
カモ~ン、第三章ね。宇宙船に復帰したわよ!
やがてレティシアちゃんは住込みのシッターの職にありつき、高級デパートのパンティ売り場でも働くようになるの。
ようやく自立し始めたころに住込み先のママンから「部屋で猫を飼わないで」と言われたことでデパートの上司に猫を預けちゃうんだけど、これって素敵なことよ。猫=慰めを必要としなくなったってことなんだから。
そのあと元カレに「ヨリを戻そう」と言い寄られたレティシアちゃんは「願ってもない申し出だけど、むり!」といって突っ撥ねるわ。もう世界を知ってしまった彼女にとって「温室」はあまりに狭くて退屈なのよ。
映画中盤では彼との赤ちゃんを身籠っていることが発覚するけど、これも「堕ろす」とハッキリ断言しちゃうのだわよ!(アメリカ映画ではまず考えられない展開よね)
要するに、この『若い女』という映画は何も知らない「31歳の小娘」が世界を知るまでの物語なのよォ――――ーッ!
だから『若い女』という邦題は言い得て妙なわけ。無知な小娘は31歳にしてようやく女になり始めた。だから『若い女』なのよね。
ちなみに私、恋に仕事に頑張る女性を応援するキラキラ☆ガールズムービーってヘドが出るくらい大キライなんだけど、奇しくもこれまでに扱った『マイ・プレシャス・リスト』と今回の映画って全然そういう映画じゃないのよね。もっとダサくて、みじめで…、ふかづめさんの言葉を借りるなら「地べた的」って言うのかしら。女子のだらしない部分がグチャーッてブチまかれてるような映画なのよねぇ。
それに両作ともヒロイン像が超よくて…絶妙にぶちゃいくなのよ、えらいもんで。アン・ハサウェイみたいなカースト上位のモテ女子を首ギューンってなるぐらい見上げてるような底辺女子の視点から描かれた生臭い作品といえるわね。だけど映像的にはとってもオシャレだから楽しめちゃう!
アイペンシルで鼻の下にヒゲを描いちゃうレティシアちゃんがまた実にいいのよぉ~~~~。髪も巻いてオシャレしてるんだけど、じつはこの髪型、トイレットペーパーの芯で巻いてるのよ♡
髪の毛の中にトイレットペーパーの芯があるわよ~~。
ちなみに、さっき追い返した坊ちゃんはこの映画をどう見たのかしら…と思って先ほどメールを送ったところ「すみません。まだ観てません」って返ってきたわ。
観てねえなら なんでさっき来たのよ!
あのチビガキが!
レティシアちゃんは世界を知ったのよ~~。
(C) 2017 Blue Monday Productions