シネマ一刀両断

面白い映画は手放しに褒めちぎり、くだらない映画はメタメタにけなす! 歯に衣着せぬハートフル本音映画評!

好きになりたいのにイマイチ良さがわかんねえ映画十選

あいよーん、おはようございます。

本日はタイトルの通り「好きになりたいのにイマイチ良さがわかんねえ映画」を10本選んでみたよ。吐き気を抑えた泥酔下でのやっつけ執筆なので普段以上の悪文です。

正味の話、映画好きなら誰しも心の中に「いい映画だけど、なーんかピンとこねぇんだよなー」みたいな作品って星の数ほどあると思うのさ。それだけで満天の夜空が描けるぐらい。

基本的には憎からず思ってるし、なんだったら高く評価してもいる。あわよくば好きになりたい。でもなりきれない。なんで。たぶん原因は自分の側にある。この映画にハマれない自分には何かが欠けているのだ。きっと情緒が欠落しているのだろう。自分みたいなもんは社会のために一刻も早く死んだ方がよいのだ…。

そんなピンとこない映画がね。

便宜上、そういう作品をピンとこな映画と呼ぶ。

とりわけ既に評価が定まってる“傑作”や、大衆人気の高い“名作”は「世間との温度差」を感じやすい分その人にとってのピンとこな映画になりやすい。

 

※誤解のないよう改めて断っておくが、これから発表するのはいい映画であることぐらい重々承知してるが「好き」という感情がなかなか持てない映画群である。ゆえに読者から「この映画のよさは~~じゃないか!」と説明されても「分かっとるわボケ!」ということになってしまいます、それは。どうしても。

アンタのいいところ、あたい分かってんだ…。優しくて思いやりがあるのだわ。でも男として見れないの。すごく好い人だけど、恋愛対象としては、なんていうか、ピンとこないの。だからごめんネ。今後も仲のいい友達でいましょおおおおおおおお!!!

そういうことだよね。だから。

それでは十選の始まり。

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『ゲームの規則』(ジャン・ルノワール監督/39年)

はーい、もう終わりですね。お疲れさんでした。

もはやこの映画が分からない時点で終わりきってるわけですが、どれぐらい分かってないかというと粗筋すら説明できないぐらい分かってない不肖イッツミーであります。

映画愛好家の中では『市民ケーン』(41年)以上に重要視されているジャン・ルノワールの埋もれた逸品として後年評価を爆上げしたフランス映画の金字塔なのだが、何度観てもそれだけの価値を見出せない、あるいは見出す前に居眠りを遂げるというのが毎度のパターンで。私がシネフィルを自称しない(できない)理由のひとつがこの映画への無理解にあります。

でも、どれだけ美味しいビールだろうがお酒が飲めなきゃ苦い水。私はまだこの映画の嗜み方を知らないようだ。「どこがいいんだろう?」と小首傾げながら観返しすぎたせいで『もののけ姫』(97年)の“こだま”みたいになった。

【ピンとこな度】70コナ

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『めまい』(アルフレッド・ヒッチコック監督/58年)

とかく映画愛好家がヒッチコック・ベストに挙げがちな名画の決定版だが、私の中の名作である理由はわかるが傑作である理由がイマイチわかんねえ映画の筆頭。

以前『めまい』好きの知人からこの映画のよさを教えてもらったことがあるが、話を聞いてる内にめまいを起こし、しまいには泡吹いて卒倒。この経験がトラウマとなり『めまい』について考えただけでめまいを起こすという目まぐるしい奴にオレはなった。

私はミステリとかトリックみたいなものにビタイチ興味がないので、そもそもからしてヒッチコック不感症なんですね。だったら尚更『めまい』は最適じゃないか、と人は言うけれど、これがダメなのよ奥さん。色彩と編集が合わないのかもしれない。一度でいいからこの映画を心行くまで堪能したいとは思っているのだけど。

ちなみに私のヒッチコック・ベストは『救命艇』(43年)です。その次が『疑惑の影』(43年)。Viva!ノートリック。

【ピンとこな度】75コナ

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『アラビアのロレンス』(デヴィッド・リーン監督/62年)

いい映画です。特にフレディ・ヤングとニコラス・ローグの撮影が。482ミリの望遠レンズを使ったロングショットに至ってはケチをつけろという方が難しい。

また、二人が織り成したマジックリアリズムのごとき映像世界は多くの若手作家に影響を与え、ウォン・カーウァイ『恋する惑星』94年)、トッド・ヘインズ『キャロル』15年)、クリストファー・ノーラン『インセプション』10年)などに受け継がれた。スピルバーグは夢遊病のようにこの映画を観返すらしい。

映画好きのおっさんが大体好きな名画だが、なぜ私にはピンとこないのだろう。茶色(砂丘)青(空とピーター・オトゥールの瞳)の色合わせがあまり綺麗に思えないからかもしれない。ピンとくる/こないというのは感性の問題なので、意外とこういうところが好みの分水嶺になってたりするのよね。

だもんで、もし映画好きの人と話をしていて「ぼく『アラビアのロレンス』が猛烈に好きなんです!」なんて言われたら「あっ…」つって、あとは容疑者のように押し黙るだけの私がそこには居るでしょう。

ラビアについては喋レンス、というギャグを思いついたので取り急ぎ使用。

【ピンとこな度】60コナ

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『スティング』(ジョージ・ロイ・ヒル監督/73年)

ポール・ニューマン×ロバート・レッドフォードはポール・ニューマン×ロバート・レッドフォードでも明日に向って撃たないポール・ニューマン×ロバート・レッドフォードにはあまりエキサイティンできない…というワガママボディになっちまったほど同監督の『明日に向って撃て!』(69年)が狂的に好きなので、どうしてもこっちを基準にしてしまう。

ジョージ・ロイ・ヒルのセンチメンタリズムは割に好きだけど、それがあまり感じられなかったのがピンとこない理由かもしれない(そもそも痛快娯楽路線だしね、『スティング』は)

でも『スティング』について楽しそうに語ってるおっさんを見ると、やっぱり羨ましいんだよなぁ。同じように『大脱走』(63年)とかも僕ダメなんですけど『大脱走』が好きな人のことは好きです。いいなぁ、俺もあいつらの輪に入りてえよー…ていう。その手の孤独です。

【ピンとこな度】20コナ

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『ジョーズ』(スティーヴン・スピルバーグ監督/75年)

『ジョーズ』にピンとこないなんて言うと映画愛好家の皆さんからアホと思われそうだね。まあ何でもいいけど。

『ジョーズ』を子供のころに初めて観たとき「後半、なんか違うなぁ」と思ったことを記憶している。急にトーンが変わって決闘映画みたいになるでしょう。あと「意外と長いのね」みたいな。

ただ、10年後に観返したときは「演出がジョーズだなぁ」とえらく感心し、さらにその5年後に観返して「ホークスやってるじゃん」ということに気付いてからはViva!スピルバーグ!って感じですけれど、未だにあの決闘シーケンスだけは「おぇ?」なのである。

なので私にとっては頭で理解できる良い映画なんですね。じゃあ気持ちはどこにあるかって言うと『オルカ』(77年)にあるわけです。私は『ジョーズ』の面白さよりもその亜流作品たる『オルカ』を愛してしまう(とかく“良し悪し”と“好き嫌い”は座標軸を異にしがち)。

スピルバーグで興奮したのは『激突!』(71年)だな。あと『フック』(91年)は擁護します。『フック』なめてる奴にフック喰らわす、ぐらいには血の気が多い性分なので、そこはよろしくお願いします。

【ピンとこな度】35コナ

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『ナッシュビル』(75年)

そろそろ読者にとって軽蔑の対象と化しつつある私が、なんら痛痒に感じぬまま思いの丈を書き殴っておりますねぇ。

よりによってロバート・アルトマンの中で唯一ピンとこないのが氏の代表作という、ずいぶん悲しい様相を呈してしまったけれども、「ピンとはこないけど滅法おもしろい」という複雑怪奇な満足感にいくらか居心地の悪さを覚えながらも称揚し続けているのが『ナッシュビル』なのです。総勢24人もの主要人物がナッシュビルを目指して右往左往する。ただそれだけ。「めっちゃ面白いけど何が面白いんだろ?」と思いながら毎回観てる。

アルトマンの面白さってすごく感覚的なもので、言語化しにくんだよね。正直言って他の作品も全然ピンときてないし、ことによるとアルトマンにとってはまったく不本意な見当違いの楽しみ方をしてるのかもしれないけど、そんなことは私の知ったことではない。面白いものは面白いのだ。

【ピンとこな度】85コナ

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『スキャナーズ』(デヴィッド・クローネンバーグ監督/81年)

私にとってクローネンバーグはピンときた気になってる作家です。たぶん本当はよく分かってないんだろうけど(それすらよく分かってない)、分かった気にでもならないと何も語れないので、理論武装ならぬ感覚武装をして「クローネンバーグ最高」って言ってる。そんなもんだろ?

『ヴィデオドローム』(83年)『裸のランチ』(91年)『クラッシュ』(96年)のような暗黒哲学路線は大のお気に入りなのでピンピンきてるのだが、『スキャナーズ』っていい意味で直球でしょう。念能力で人の頭を爆発させる映画ですけど。物語…というか作品理解が直線的なんです。

それゆえに、いつもは変化球しか投げないヤツがある日急に何の衒いもなくストレート投げてくるもんだから逆に混乱して「あれ、ストレートって…どうやって打つんだっけええええ!?」つって結局空振りみたいな。試合終了です。

【ピンとこな度】40コナ 

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『汚れた血』(レオス・カラックス監督/86年)

レオス・カラックスについて私が知りうることは「ヌーヴェルヴァーグに憧れた若武者による無邪気な習作の連発者」ということと「昼の自然光をたらふく吸収させるゴダールとは対照的に全編ほぼ夜間撮影の人」ってことぐらいだ。

ここだけちょっと真面目な話をするけど、やはり『汚れた血』といえばデヴィッド・ボウイの「モダン・ラヴ」をバックにドニ・ラヴァンが夜の路上をどこまでも疾走してゆく3分間のドリー・ショット。

このムチャクチャな疾走が『勝手にしやがれ』(59年)『大人は判ってくれない』(59年)といったヌーヴェルヴァーグの疾走から逸脱し、イタリアのネオレアリズモ『無防備都市』(45年)の疾走とも地平を隔て、イギリスのフリーシネマ『長距離ランナーの孤独』(62年)の疾走からも遠い次元の、そしてアメリカン・ニューシネマ『イージー・ライダー』(69年)の疾走とも異なる道をひた走った果てに計測不能の偏差を含んだ解放感を獲得していることは良くも悪くも映画史における無視しがたい事件だと思ってる。

たとえば、私がテン年代ベスト10に選んだ『フランシス・ハ』(12年)でも、ドニ・ラヴァンの疾走をパリからニューヨークに変えて新人女優のグレタ・ガーウィグに反復させてるわけで(「モダン・ラヴ」もしっかり流れる)。

思うに、この事件性は私だけでなく誰にもピンときてないし、なんなら私がいま話してる言葉すら多くの読者にはピンときてないでしょうから、今回の【ピンとこな度】は我々のポイントを合算して発表します。

【ピンとこな度】13790077100102078050376501200060コナ (皆のピンとこな)

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『レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ』(アキ・カウリスマキ/89年)

よくわからない魅力を感じすぎて「なんだこりゃ」って思った。

【ピンとこな度】知るか

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『ビッグ・リボウスキ』(98年)

以前、コーエン好きのツルコフさんというmixi時代からのお友だちに「コーエン兄弟の楽しみ方を教えて丁髷」と丁寧にお願いしたのに全然教えてくれないもんですから、未だにコーエン・リテラシーが会得できておりません。

で、私みたいにコーエン兄弟にピンときてない奴がコーエン兄弟ベストを発表し出すと、平気で『ディボース・ショウ』(03年)とか挙げたりするんですよ。しょうもね~~~~。いや、映画がしょうもないって意味じゃなく、このチョイスがね。

そういえば『バートン・フィンク』(91年)も大好きだった。

でもさぁ、コーエン・リテラシーなんか持ち合わせてなくても『ファーゴ』(96年)『ノーカントリー』(07年)に関してはバカでも分かるんだよ。ただ『赤ちゃん泥棒』(87年)『ビッグ・リボウスキ』だけはピンとくる奴/こない奴がハッキリ分かれる(恐らくコーエンエッセンスがたっぷり詰まってるだけに)。特に『ビッグ・リボウスキ』だね。

ボーリングの何が面白いのか全然わかってないジジイみたいに、私にはコーエン兄弟の楽しみ方がわからない。もう一度ツルコフさんに頼んでみようと思います。袖の下でも渡せば教えてくれるのかなぁ?

【ピンとこな度】55コナ

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以上、『好きになりたいのにイマイチ良さがわかんねえ映画十選』を一息に書き上げた私がカフェラテを飲んで温まってるで。

いまザッと読み返してみたけど…結構ひでえなこの記事。

驚くほど実のある話をしてないばかりか、ただでさえ普段バカと思われてるのに映画好きの読者から余計にバカと思われるような名作揃いのラインナップで、なんだかちょっぴり決まりが悪い。でも好みの問題だからしょうがねーべ。感性にバカもヘチマもねえんだよ、バカ!

改めて言うが、ここに挙げた10本の映画はとくべつ心惹かれたわけではないけど高く評価してます(技巧だけ見て無機的に)。本文でも述べたように“良し悪し”と“好き嫌い”は別モノだからな。それがピンとこな映画なんだよ。私はマライア・キャリーのファンではないし特にこれといった思い入れもないが、楽曲を聴くにつけ「ホイッスルボイスすげーな!」と素直に驚嘆するし、圧倒的な歌手だとも思う。でも別に好きってわけじゃない。そういうことです。

みんなにとってのピンとこな映画は何ですか。そういうのを互いに教え合って「私はこの映画のこういうとこが好き」と言い合える言論空間が出来たらいいですね。じゃあ、ばいばい。