シネマ一刀両断

面白い映画は手放しに褒めちぎり、くだらない映画はメタメタにけなす! 歯に衣着せぬハートフル本音映画評!

エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ

「もう子供じゃない」と思い込んでる奴より「まだまだ子供だ」と自覚してる奴の方がよっぽど大人なのよ。

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2018年。ボー・バーナム監督。エルシー・フィッシャー、ジョシュ・ハミルトン、エミリー・ロビンソン。

 

中学校生活最後の1週間を迎えたケイラは、“クラスで最も無口な子”に選ばれてしまう。待ち受ける高校生活に不安を抱える彼女は、SNSを駆使して不器用な自分を変えようとするが、なかなか上手くいかない。高校生活が始まる前に、憧れの男の子や人気者の女の子たちに近付こうと奮闘するケイラだったが…。(映画.comより)

 

うん、どうも。

最近コンピューターが激烈に重い。コロナ禍の余波も多少あろうが、いよいよ容量がギチギチになっているんだと思う。根本的に。あいちゅんで音楽を聴いたり、別窓を開きまくりながら執筆してるのも近因であろうか。キャッシュが溜まっているのであろうか。何しろあまりに長いあいだ画面が動かず、ついに業腹した私、キッチンで「あああああ」と言いながらキャベツを千切りして戻ってくると、まだ動いてなかった。

これはもうニッチもサッチもいかず「動けコンピューター」なる新曲を作るしかないってんで、いまメロディを考えてます。たぶんEDMになるかも。

そんなわけで本日は『エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ』ですが、今回わたくしはお休みしています。あとは任せた。

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◆平均再生回数2回のYouTuber!◆

カモォ~ン、皆さん!

ふかづめさんが「もうしんどいわぁ」とかグズグズ言って筆を執ろうとしないので、今日は私、キャサリン・キャサリン・ランデブーがお送りするわね~~。

2月の『5時から7時までのクレオ』(62年)ぶりの再会と相成るわね! 元気してた?

ていうか最近、元気100パーセント坊ちゃんもあまり出てこないし、この多重人格…イマジナリー・フレンド・システムのこと忘れてたんじゃないの~?

どっこい、生きてるわよこのシステム!

現に最近ふかづめさんときたら、アタシや坊ちゃんやインタ純に飽き足らず「ホワイトメルシータ小暮」っていう新キャラクターを考案中なんだって(苦戦中とのこと)。まったく、おめでたい餓鬼だよ。私たちの存在がブログの世界観を壊してるとも知らずに。

あと、今後は少し声のボリュームを落としていこうかなって思ってるの。これまでは絶叫こそ我が人生とばかりに叫び散らしてきたけど、正直キツいのよ。読者との温度差が。その辺のコトも考えつつ、あまり鬱陶しくない範囲で個性を出していくのだわ!

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キャサリン・キャサリン・ランデブー(絶叫芸を反省している)。

 

さて、皆さん。『エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ』はもうご覧になられたかしら? なに、まだ観てない? 野郎~~。観てない奴はヒールで踏んづけちゃうんだから!

この映画はアメリカを舞台にした素敵なガールズムービーです♡

女子力を磨いているそこのアナタ! 乙女心にキョーミがあるそこの男子! 観なきゃ損、損、孫正義ってな具合だわよォ~~~~う。

この映画はものすごーく低予算で制作されたんだけど、全米大ヒット&大絶賛を受けた青春ガールムービーなのだわよ。「ガール」が複数形じゃない理由は、高校入学を控えた13歳の少女エルシー・フィッシャーちゃんの孤独なぼっち生活を描いてるからなの。

YouTuberでもあるエルシーちゃんは、いつもカメラの前で「自分らしさを貫きつつ友達をゲットよ!」とか「ぜひ勇気をもって行動してみて?」みたいな能天気なアドバイスを視聴者に送ってるんだけど、これが自己満足炸裂のゴミカス動画で、再生回数はせいぜい2回(そのうち1回は自分。残り1回は娘の動画をこっそり見てたシングルファーザーのパパンなので実質視聴者0)。

カメラの前ではよく喋るのに学校ではいつも一人ぼっちで、誰かに話しかけられても愛想笑いを浮かべて「そうだね…」しか言わないから一向に友達ができない。家の中では動画撮影とスマホ三昧。パパンとの食事中でさえイヤホン付けてスマホすいすいやってんの。腹立たしいジェネレーションZだこと!

そんなエルシーが胸に勇気を搔き集めて一念発起するのだわよ!!

 

監督のボー・バーナムって人は1990年生まれの20代キワキワ野郎よ。YouTuber→コメディアン→映画監督というド軽薄きわまりない経歴の持ち主なのだけど、デビュー作の『ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ』(17年)が絶賛された気鋭の若手監督らしいの。

主演のエルシー・フィッシャーちゃんは『怪盗グルーの月泥棒』(10年)でアグネスの声を担当してる娘よ。これでピンときたでしょ!? アタシはきてないけど。アニメ作品で声優やってることが多いエルシーちゃんは、今回『エイス・グレード』で映画初主演を飾り、その瑞々しく繊細な演技に注目が集まったのだわ!

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◆地獄のプールパーティー◆

開幕早々、友達のインスタにいいねを撒き散らしたり、説得力皆無のアドバイス動画ばかり投稿していたエルシーは、ある事がきっかけで一念発起する…というかせざるを得ない状況に追い込まれたの。

なんとカースト上位のギャル、キャサリン・オリヴィエのママンに誘われたことでオリヴィエの誕生日プールパーティーに参加するはめになったのよォ――――ッ!

何の接点もない、明らかに住む世界の違うオリヴィエからね! 彼女のママンが無理に誘うもんだから、エルシーは「こないで!」というオリヴィエのアイコンタクトに威圧されながらもプールパーティーに行っちゃって、周りが可愛い水着でオシャレしてる中スクール水着に着替えて入水するの!

地獄よ、これ。

誰からも話しかけられることなく独りで平泳ぎして。こんな惨めなことってないわ。でも水中にいる時よりプールサイドにいる時の方が悲惨なの。意外とぽっちゃりしてるのよ、エルシーって。

そう、水着にお肉が食い込んでんのよ、思いっきり。

食い込むっていうか…乗っかってる感じだわね…。トドメはどよーんと曲がった猫背。

もうやめたげてええええええええええええ。

こんなの見てられないわァーッ! なにこの観る拷問!

しかも、そのあと皆がバッグやコスメグッズを誕生日プレゼントとして一人ずつオリヴィエに渡すんだけど、エルシーの番になると一気に場が白けてしまうの。

カードゲームあげちゃったのよ、この娘。

よりによってギャルと最も無縁な趣味として名高いカードゲームを「これ面白いよ。色んな戦術があって…」なんつって勧めちゃったの。この世で一番カードゲームをしない人種がギャルだということも知らずに…。

いい? 一度しか言わないからよく聞いてね、エルシー。

ギャルは戦術なんて考えないのよッ!

あいつらが持ってるのはカードはカードでも恋の切り札と親のクレジットカードだけなのォォォォォォォォッ!

ちなみに下の画像はギャルだらけのプールパーティーで撮った集合写真だわよ。エルシーはどこでしょう!?

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正解はこちらだわよ~♡

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 わかるかあ!!!

 

その後も描かれるエルシーちゃんのアイタタ学園生活は「バカもう」を連発すること請け合いなのだわ。

オリヴィエを廊下に呼び出し、勇気を振り絞って「ハ…ハイ、キャサリン。こないだはパーティーに誘ってくれてありがとう。えっと…あの…その服イカすわね」と話してるのに、オリヴィエったらガム噛みながらスマホを触り「うー」とか「おーん」とかテキトーな相槌を打つだけ。

エルシーが一目惚れした不良の同級生ルーク・プラエルからは「裸の自撮りを送ってくれたら付き合ってやらないでもない」と要求され、ルークがクズ男だと見抜けない彼女は大真面目に自撮りを検討する(結局思い止まったわ)。

そんなエルシーだけど、以前よりも人と関わろうと努力はしてるのよ。彼女は彼女なりに殻を破らなきゃって考えてて、たとえクソな連中とは言え、近づきにくいカースト上位勢や片想いの男子に話しかけてんのよ。一か八かでね! 大したもんだわよ。

それだけに、エルシーの勇気を無下にする周囲のクソどもの心ない態度に再び自信を失っちゃうのがまあ不憫でねェ…。

 

それと並行して描かれるのがパパンとの関係性よ!

パパンは妻との離婚が原因で娘がネット依存になったのではと心配していて、だからこそエルシーにそっぽを向かれても毎日明るく振舞ってるの。自分を責めてんのかもね。でもエルシーは、そんなパパンの心配を「憐れみ」と取ってしまい「放っといて!」と苛々をぶつけちゃう。

ようやく少し素直になれたエルシーが、パパンに向けて「もし将来生んだ子供が私みたいな子だったら論」を展開するシーンはボロ泣きだわよッ!

 

エルシー「自分の子供だからそりゃ愛するとは思う。でもその子が私みたいに陰気な子だったら、母親として少し悲しい。恥ずかしいって感じるかもしれない」

 

パパン「それは違う。おまえが居てくれるからパパンはいつも幸せです。こんな娘を持ってパパンは鼻高々なんだ。パパンを幸せにしてくれてありがとう

 

エルシー「パパン!」

 

「パパン!」

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やさしいパパンを持ってエルシーは幸せね。

 

◆拝啓、未来の自分へ◆

高校生を描いたハイスクール・ムービーは腐るほどあるのに、高校に上がる手前の年頃を扱った学園映画ってあまり見ないわよねぇ。

わたしハイスクール・ムービーってあまり好きじゃなくて、「子供扱いしないで!」とか生意気なこと言ってる高校生が恋や進路で苦悩してたりすると「もう子供じゃないんでしょ? じゃあ甘えんじゃないわよ」なんて思っちゃうのよ。自分でモノ考えられる年齢でしょうが、って。

だけど8年生(13歳)のエルシーはまだあまり上手にモノを考えられない微妙な年頃で、だからこそ必死で考えようとしてるし「自分はまだまだ子供なんだ」って自覚してる。だから成長過程を見るのが楽しいのよね。

「もう子供じゃない」って思い込んでる奴より「まだまだ子供だ」と自覚してる奴の方がよっぽど大人なのよ。

「無知の知」ならぬ「稚気の稚」なのだわああああああ!ああん!

 

エルシーに初めてできた友達が一日高校体験でペアを組んだ案内係エミリー・ロビンソンなんだけど、この娘が本当に気さくないいお姉さんで、彼女を慕うほどにエルシーは自分の幼さを(いい意味で)自覚していくのよ。

無事に卒業式を迎えたエルシーが中学生活を「退屈だった」と総括したように、決してこの物語は急に反省したオリヴィエがエルシーをショッピングモールに誘ったり、裸写真コレクターのルークが真剣に彼女を愛するような都合のいい仲良しごっこには終わらないわ。彼女のYouTubeチャンネルの再生回数も相変わらず「2」のままよ。

だけどエミリーとの交流を通して高校進学への不安を払拭したエルシーは、グッと前を向いて、ちょっぴり猫背を気にしながらも未来に歩み始めるのォ――――ッ!

中学卒業時の自分に向けた「未来の私はきっとクールよね。友達は沢山いるんでしょ? 彼氏はやさしい?」という過去の自分からのビデオレターに苦笑したエルシーは、今度は高校卒業時の自分に向けて新たなメッセージを吹き込むのだわ!

「世界でいちばんクールな私へ。今度こそ友達はいるよね! 彼氏はいてもいなくてもいいけど…もしいたら大事にしてもらうのよ」

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一日高校体験で出会った年上のお友達エミリー(左)。

 

なんてトキめく映画なのかしら。

いえいえ。トキめくだけじゃなくて、自分が13歳だったころの心の湿気に気づかせてくれる映画でもあったわ。そして、そんな過去を数十年越しに払拭してくれたのよ。この映画は観た人の「心の湿気取り」になってくれること請け合いだわよう!

人が丹精込めて作った映画を湿気取りに喩えるのもどうかと思うけど。

この映画、ふかづめさん達はどう見たのかしら。あほのメンズにもメールで感想を聞いてみたわ~。

 

ふかづめ「急に鳴る音楽が趣味に寄りすぎ。まあインディーズ的なエモさを狙ったものだろうが。あとヒロインと周囲の人物たちの視線の繋ぎ方が―…」

ハイ、もういいわ。

 

坊ちゃん「ベッドの中で触るスマホの光に照らされたヒロインのニキビがよかったですね! こういう瞬間にこそ『青春』映画が宿ってるような気がしま―…」

ハイ、もういい。

 

インタ純「見てない」

見ろ、おまえは。

f:id:hukadume7272:20200423100127j:plainあっちの人たちってベッドの上にノートパソコン持ち込みがちよね。絶対操作しにくいのに。


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