シネマ一刀両断

面白い映画は手放しに褒めちぎり、くだらない映画はメタメタにけなす! 歯に衣着せぬハートフル本音映画評!

ださいアルバムジャケット10選

おはよう、諸君。

更新が滞ってすまないな。もうしばらく滞りそうだから、それまでの接ぎ穂として当記事をアップすることにした(こういう時にこそストック記事が活きる)。

さて。ハードロック/ヘヴィメタルの世界はダサいジャケットの宝庫だ。本人たちは格好いいと思っているのだろうが、それゆえにシリアスな笑いを生んでいるわけだ。嘘だと思う? 嘘だと思ったらこの記事を読んでみるといい。

そんなわけで、本日は『ださいアルバムジャケット十選』と題して、みんなと一緒に妙ちくりんなジャケットを見ていこうじゃないの。「これ何なんかなぁ…?」と思うような、滑稽で、謎めいていて、ときに味わい深いアルバムジャケットを10枚用意したからな。

※一応断っておくが、この記事はバンドの音楽性を否定するものではなく、あくまで妙ちくりんなジャケットデザインを「これ何なんかなぁ?」と首を傾げながらクスクスと楽しむために作成されたものなんだ。

それでは、目くるめく妙ちくりんなアルバムジャケットの世界に、ゴゴー!

 

【何なんかなぁファイル01】

Y&T 『In Rock We Trust』

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ビックリマンの親戚なんかなぁ?

Y&Tには変ちくりんなアルバムジャケットが多いが、とりわけこの作品はストレートにダサい。

ロビンマスクがさらに着込んでビックリマン仕様になったみたいなメタルの騎士が、誇らしげに左手を突き上げ「我ここに在り」だか何だかと主張をしている。宇宙空間で。

当初、私はギターを持つ右手がダサさの原因だと分析していたのだが、よく見ると紫のマントが非常に安っぽいんだよね。パンツと同じ色だし。

Y&T…アメリカ西海岸のハードロック・バンド。1976年にイエスタデイ&トゥデイというバンド名でデビューしたが、1981年にY&Tに改名。解散と再結成を繰り返しながらHR/HMシーンに痛烈な一撃を加え続けた。また、2017年の時点でボーカル以外のオリジナルメンバーが全員死亡している(なのにバンドは活動中)。

 

【何なんかなぁファイル02】

ポイズン『Look What the Cat Dragged In』

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チアリーダー部のプリクラなんかなぁ?

唇が潤っている。そう。全メンバーの唇が十分に潤っている。一人ウィンクもしているし。

少なくとも店頭で買って気分の上がるジャケットではないだろう。

ちなみに、この作品はポイズンの記念すべきデビューアルバムだ。こんなことでいいのか。 邦題は『ポイズン・ダメージ』そんなことでいいのか。

各メンバーのご両親が「やっと息子がメジャーデビューしたのね!」と喜んでレコードショップに行ってこのジャケットを見たとき、親として何を思ったのだろう。 やはり「チアリーダー部のプリクラなんかなぁ?」と思ったのだろうか。回答が急がれる。

ポイズン…80年代に西海岸ロサンゼルスで栄えたLAメタルバンドの一派。レザーファッションに派手な化粧…という出で立ちでグルーピーを虜にした。先輩のモトリー・クルーと同じく薬物依存と交通事故を経験済み。毒々しくもポップなリフでLAメタルシーンに痛恨の一撃を加えたとか、加えなかったとか。

 

【何なんかなぁファイル03】

コージー・パウエル『Over the Top』

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このあと怪人の前で変身するんかなぁ?

ハードロック界のドラムヒーローといえばコージー・パウエル。そんな彼の1stソロアルバムなのだが……新手の仮面ライダーなんかな?

どうしてドラムセットの上をバイクで飛び越えねばならないのだろう。それはどういった部類のチャレンジに含まれるのだろう。成功報酬も気になるところだ。

第三者の目には何がしたいのかまったく分からないジャケットワークだが、本人は至って真剣。我々はその静かな情熱にほだされ、ふと気づけば目頭を熱くしながらこのチャレンジを見守っている。

コージー・パウエル…ハードロック界に会心の一撃を加えた、不世出の天才ドラマー。ひとつのバンドに落ち着くことが出来ず、ジェフ・ベック・グループ、レインボー、マイケル・シェンカー・グループ、ホワイトスネイク、ブラック・サバスなど錚々たるロックバンドを渡り歩いたことから「渡り鳥」という異名がつく。1998年に交通事故で他界。

 

【何なんかなぁファイル04】

コージー・パウエル『Octopus』

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上京したての千手観音なんかなぁ?

またしてもコージー・パウエル先生。

本作も彼のソロアルバムだが…、どうもソロになると少し様子がおかしくなるらしい。このアルバムも、思わず怯んでしまうようなジャケットワークだ。親の仇みたいにドラムを叩きまくってらっしゃる。しかも何故かこっち見ながら。いや。見やんといて。

はぅあ…! な、なるほど。そういうことだったか。このアルバムのタイトル…

『オクトパス』!

ただのシリアスなギャグやないか。

 

【何なんかなぁファイル05】

ディープ・パープル『Fireball』

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五つ子の精子なんかなぁ?

ディープ・パープル唯一の駄目ジャケ。5人の生首が一丸となって火の玉を形成し、これ見よがしに宇宙空間を飛行するという、色んな意味で冒険しすぎたジャケットデザイン。

反面、「Fireball」の字体はけっこうサイケデリックな趣があって「1971年してるねぇ」という感じがする。

しかし、このジャケットのダサさは5人の生首ではない。全体的に持て余し気味の宇宙空間のしょぼさ。これなのだ。申し訳程度に星をちりばめているけれど、美術的な観点からいえばココが一番ダサい。つまり絵そのものではなく構図でやらかしたのだと思う。

ディープ・パープル…レッド・ツェッペリン、ブラック・サバスらと肩を並べるハードロック御三家のひとつ。イギリス本国よりも日本での人気が非常に高い。メンバーチェンジがやたら激しく、「第〇期のメンバーをすべて挙げよ」というなぞなぞは古参ファンすら苦しませることはあまりに有名。全国の吹奏楽部に魅惑の一撃を加えもした。

 

【何なんかなぁファイル06】

サミー・ヘイガー『VOA』

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望んだ着地点がそこなんかなぁ?

背後に描かれているのはワシントンD.Cの国会議事堂だろうか。その周辺にパラシュート降下して大喜びしているサミーのようす。

ちなみにアルバムタイトルの『VOA』とは、サミー・ヘイガーに与えられた異名「ヴォイス・オブ・アメリカ」の略称。だからアメリカの議事堂をジャケットに使ったのだろう。「俺はミスター・アメリカだ」的なノリで。

だが、このあと確実にセキュリティに捕まってバチバチに怒られたであろう未来が容易に想像できてしまう、そんな物語性豊かなジャケットといえる。

他方、このデザインが少々まぬけなのは着地寸前だからである。いっそ飛行機から飛び降りる瞬間をジャケットに使った方がよっぽど格好いいデザインになっただろう。

サミーヘイガー…モントローズやヴァン・ヘイレンに在籍していたことで知られる絶唱型ボーカリスト。桁違いの歌唱力を誇り、分厚くて官能的なチェストボイスと、高音になるにつれて先鋭化するハイトーンボイスは飛行昆虫の感覚器を狂わせるという(あまりに有名)。公私ともに赤の衣装を着用することを好み、周囲の人間に対しては、しばしば愛の一撃を加えるらしい。

 

【何なんかなぁファイル07】

マノウォー『Anthology』

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ゴールドジム地獄店の広告なんかなぁ?

「他のバンドは演(や)るが、マノウォーは殺るのだ」という名言でお馴染みの筋肉バンド、マノウォー。

このアルバムは、ネット上に転がっている「ダサいジャケット集」の常連作品だが、なんだかそこには退くに退けない一貫性のようなものを感じる。

騎士道や武士道に忠誠を誓い、レコード会社と契約するときに自らの胸にナイフを突き立て、そこから流れた血で書面にサインしたマノウォー。 「俺たちが気に入らない奴らは死ぬべき」「偽メタルは死ぬべき」「音量を下げるぐらいなら死を選ぶよ」など、すぐ物事を死に直結させる思考回路のマノウォー。

力を渇望し、筋肉を探求する飽くなき精神。それを体現した結果がこれなのだろう。

マノウォー…マチズモが売りのパワーメタル・バンド。独特の濃い世界観を持ち、楽曲面では中世ヨーロッパの騎士道精神を力強く歌ったり、戦士の孤独や死にゆく同志たちへの哀悼などをたっぷり表現。他のアルバムジャケットでは敵の生首を誇らしげに掲げるメンバーの足元に全裸の女が跪いている…といった感じのデザインばかりなので、このご時世では即アウト。言うまでもなく力強い一撃を何かに加えている。

 

【何なんかなぁファイル08】

キャンサー『To the Gory End』

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ハム切る一発目なんかなぁ?

キャンサーの1stアルバムです。「怖い」とか「気持ち悪い」とか色々あるだろうが、その前にまず「ダサい」。

さまざまな感情に先制しての「ダサい」が、ここにはある。

どうしてこの子は頭を斬られなきゃならないんだ。それも縦に。何をしたらこんなバチが当たるというんだ。

そして、この子もこの子で、どうして頭を斬られたからといって、こんな生タコみたいな顔をしてしまうんだ。

それにキャンサーというバンド名は「癌」って意味でしょう? なんでそんな気の滅入るバンド名にすんの。だが…ことによると「カニ」の方かもね。それならタコとも符合するし。カニとタコで魚介攻めとる。

キャンサー…イギリスのデスメタル・バンド。寡聞にして詳細は知らないが、デスメタル界に何らかの一撃を加えた確率は高いと見ていい。

 

【何なんかなぁファイル09】

バトル・アックス『Burn This Town』

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こども絵画コンクールの入賞作品なんかなぁ?

バトル・アックス(戦斧)というバンド名からして既にダサさが漂っているが、この1stアルバムのジャケットを見て成程、合点。聞きしに勝る格好悪さ。

なんといってもこの絵な。幼稚園児が描いたのならすごいと思うが、大のオトナがどうしてこんな絵を描かなくてはならないのだろう。どうしてこんな絵を採用するのか。これで「いける」と思ったのだろうか。どうしてだ。固く握った左手のグーは「いける」のグーか? いけないよ。むしろパッパラパーのパーだよ。

弱々しく書かれたアルバムタイトルが一際ダサい。ダサいを通り越して、もはや、ちょっぴりだけ可愛い。

バトル・アックス…70年代に活動していたイギリスのメタルバンド。日本ではまったくの無名だし、私もレコードを持っていない。数少ないオールドファンからも「パワー不足のAC/DC」と評される始末。アルバム2枚を残したきり長らく失踪していたが、2010年代に約30年ぶりの大復活を遂げ3rdアルバムを発表。オールドファンからは「まったく成長が見られない」と評される(本当にファンなのだろうか)。

 

【何なんかなぁファイル10】

イングウェイ・マルムスティーン『Fire & Ice』

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デッサン用ポーズ集の幻のページなんかなぁ?

ダサいジャケットで有名なイングウェイ・マルムスティーン、渾身のいちびり。満を持しての決めポーズである。右足に重心置きすぎて全身で90度測ってるみたいになっとる。炎の軌跡もすごい事なっとるがな。

HR/HMのアルバムジャケットは大抵がイラストだ。バンドのロゴマークだけだったり、イラストレーターによる挿絵風のデザインだったり。よほどのことがない限り本人は映らない。「見た目で売ってるわけじゃないんだ」みたいなロックバンドとしての矜持があるのだろう(先に挙げたマノウォーとかは別)

だがイングウェイはそんな常識を根底から覆し、カメラの前で渾身の決めポーズを披露してのけた。「私のルックスも込みで楽しむといい!」という、スターならではの大盤振る舞いといえる。

それにしてもこのポーズはない。

イングウェイ・マルムスティーン…速弾きを得意とするスーパーギタリスト。先祖がスウェーデンの貴族であり、その高貴な印象と共に「王者」の異名で畏怖されていたが、90年代中頃に激太りしたことからメタルファンの間では「豚貴族」「光速の豚」と呼び親しまれている。私生活ではこんがり焼けたウェルダンのステーキを好み、焼き加減がレアやミディアムだと手掴みでステーキを壁に叩きつけて激怒する。

 

というわけで『ださいアルバムジャケット10選』でした。どれもいかがわしかったね。

最後は、たったいま紹介したばかりの天才ギタリスト、イングウェイ・マルムスティーン…通称インギー様によるありがたいお言葉を紹介して終わりたいと思うわ。

 

~麗しきインギー語録~

「俺は貴族なんだ。そうとも。伯爵だ」
※実際のところは最も身分が低い貴族で、かつ爵位はない。

「俺の音楽が分からない奴らはクズ」

「ネヴァー・ダイっていうのは、結局のところ俺のポリシーかもしれない」


「『ブラック・スター』と『ファー・ビヨンド・ザ・サン』。この2曲はお気に入りだ。死ぬまでプレイするだろう」


「『ブラック・スター』と『ファー・ビヨンド・ザ・サン』にはウンザリだよ」

「俺以外の奴らは皆カス」


「クリス・インペリテリは俺のプレイを端から端までパクってる」

「ジョー・リン・ターナーは唯一の相棒だ。彼は本当にパワフルで、かつソウルフルだよ!」

「ジョー・リン・ターナーがソウルメイトだって? あんな奴がソウルメイトだなんて聞いて呆れるよ」

「エディ・ヴァン・ヘイレンは好きだし、巧いと思うよ。でも、彼は俺のことを怖がってるみたいなんだよ(笑) どうしてだか分からないけど、俺から逃げているみたい!」


「ヨーロッパだって昔はビッグだった。大昔はね。『ザ・ファイナル・カウントダウン』のあとは急降下さ。本当に“最後の秒読み”だったな(笑) ご苦労さん」


「ハッハー! スレイヤーなんてお笑いだぜ!」

(解雇したドラマー、ボー・ワーナーについて)彼はドラマーとしては最高だったが、とんでもない馬鹿だった。生まれてこの方、あれほど頭の悪いやつには会ったことがないってくらいヒドくて、この俺でさえ手に負えなかったんだ。そんじょそこらの馬鹿とはワケが違うぜ。あれは世界でも1、2を争うほど凄まじい馬鹿だ。脳みそがあるとはとても思えなかったね」


「マッツ・レヴィンは素晴らしい。本当に巧いよ!」


「マッツ・レヴィンの起用は間違いだった」

「俺は意識して速く弾こうとしたことはない。意思と関係ないところで、結果的に速くなっちまっただけのことさ」

↓ 後日インタビューで…

「今回は誰も真似できないくらい速く弾いてやったぜ!」


「バッハが死んでから誰も“作曲”してこなかった。みんなバッハの真似なんだ。それ以降、真の意味で“作曲”をしたのは、俺さ…」


「例えばドリーム・シアターってバンドがあるだろ? 彼らは結構いいよね」


「ドリーム・シアター? あのドラムには時々イライラさせられるね。ああいうのは好きじゃない」


 「正しいやり方(The Right Way)があり、間違ったやり方(The Wrong Way)があるとすれば、俺にはYngwie(イングウェイ)があるんだ!」

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火を噴くギターで三つ首竜と対決するインギー先生。