シネマ一刀両断

面白い映画は手放しに褒めちぎり、くだらない映画はメタメタにけなす! 歯に衣着せぬハートフル本音映画評!

ランド・オブ・ウーマン 優しい雨の降る街で

おどれ、なんべん人生を再出発すんのじゃ。ネスカフェのCM見てた方がマシ、としか言いようのない状況が巻き起こってるわ。

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2007年。ジョナサン・カスダン監督。アダム・ブロディ、クリステン・スチュワート、メグ・ライアン。

 

仕事も恋もうまくいかず人生に絶望してしまった新人脚本家カーターは、祖母の面倒をみるためミシガン州の郊外へ引越し、近所で暮らすハードウィック家の美しい母娘と出会う。(映画.comより)

 

おはようござーる。

最近、生ハムのユッケをつまみに『おジャ魔女どれみ』を見ながら熱燗の焼酎を飲むという、精神年齢が高いのか低いのかよくわからん道楽を嗜んでいる。まあ、OP曲に合わせて「どっきりどっきり DON DON!」なんて爆唱してる時点で精神年齢は十分に低いともいえるが。ほっとけ。まあ、『おジャ魔女』のハナシは評の中で追々するだろうから、そのときは無視せず読んでくれ。

大体なあ、私のような人間は人に無視されるのがいちばん堪えるのである。無視されるくらいなら「はは、莫迦な野郎だ」と嗤われた方がよっぽどいい。だってそうじゃない。この前書きにしたって、シネトゥ読者は私の文章や思考のスタイルに既に慣れてる、という前提があるからこそ自由かつデタラメに書けるのであって、もし読者が糞真面目に前書きを読んで「…………」なんて引かれでもしたら、さすがの私も冷汗三斗。こんな面映ゆいことってナイ。

それはそうと、シネトゥから忽然と姿を消していたGさんが、最近またちょろちょろと出没するようになりました。うれしい。でも多分また姿を消すんだと思う。

そんなわけで本日は『ランド・オブ・ウーマン 優しい雨の降る街で』です。思い出すだにバカ臭い映画なので罵詈雑言のランボルギーニをぶっ飛ばしてしまいました。

※けっこう口汚く罵ってます。

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◆あわよくば母と娘を両方いこうとする話◆

秘技「零式・直感爆選法」で手に取ったDVD『ランド・オブ・ウーマン 優しい雨の降る街で』を観た。都会人の疲れた心にそっと寄り添うホットレモンのようなハートウォーミング・ヒーリングムービーだったわ。

でもすこぶる腹の立つ内容だったので批評そっちのけでこんこんと説教してみたい。

出演者はアダム・ブロディクリステン・スチュワート。それにメグ・ライアン

海外ドラマ『The O.C.』(03-07年)で有名になったアダム・ブロディは、ティーン向け雑誌が発表した「彼氏にしたい男性」で第1位に輝いた実績を持つキュートな俳優だ。プロフィールを調べると、どうやらジャズとインディーズ・ロックをこよなく愛しており、好きな祝日はハロウィン、好きな映画は『エターナル・サンシャイン』(04年)という、典型的なキラキラボーイである。

ブッコ・ブッコロ・ブッコの対象だわぁ。
ブッコ・ブッコロ・ブッコ…「ぶっ殺したい」という思いを呪文化したもの。

でも、まぁ、なるほどね。10代の女子に好まれる条件をすべて満たしとんな、こいつ。

母性本能をくすぐる可愛らしい顔立ちと、柔らかい物腰。それにサブカルというよりミーハー寄りの洒落たセンス。たぶん間接照明とかが好きで、デートの前にはブレスケアを欠かさないタイプと見た。鞄の中には汗拭きシートも入ってる。一途で友達思い。聞き上手でフレンドリー。どんな話題にもうまく対応できるので交友関係も広いが、その反面これといった思想哲学はなく、たとえば人を慰めるときも決まりきった文句しか口にしない。だから観念的な話とか出来ない。良くも悪くもモノの考え方や感じ方がフツー。平均的一般人。映画や音楽が好きで、何かにつけて自分はオタクだと主張するが、その実態はオタクと言いたいだけのリア充なんだよな。

要するにとてもいいヤツなのだが、裏を返せばただのいいヤツでしかない。「好きな祝日はハロウィン」とか言ってる人間には大体こんな奴が多い。要するに薄っぺらいってことだ。べつに嫌いなタイプではないから幸せな人生を歩むことを願っているが、まぁこの手のタイプは放っておいても勝手に幸せになるだろう。少なくともオレは友達になりたいとは思わないし、それは向こうにしても同じだと思う。そう。オレとオマエの世界は決して交じり合わない。実際、アダムのような男と喋ったこともあるが、根本的に周波数が合ってないからずいぶん奇妙な言論空間を構築してしまいました。口惜しい。

f:id:hukadume7272:20201122005438j:plain中央がアダム坊。

 

さて。物語はロスでポルノ専門のシナリオライターをしているアダム坊が交際中の有名女優にフラれたショックからミシガン郊外に越して祖母と同居するシーンに始まる。そこで出会ったメグ&クリステン親子とのご近所付き合いを通じて人生を再出発する…みたいなエラく牧歌的な内容である。

あ、この時点でノれないや。

失恋したぐらいで生活環境変えて人生を再出発だぁ? ンーフーン? いちいち大袈裟な野郎だなぁ~。ハロウィン坊主の分際で有名女優と付き合えただけでも幸せだっつーのにさ。現状に満足しろやぁぁぁぁぁああああああしろおおおおおおおおお。

しかもミシガンに越してからも失恋の痛手を引きずっており、未練がましく有名女優の元カノに電話をかけたり、かつての幸せな日々を回想しながらジョギングしてみたり、元カノとの思い出の曲を聴きながら各種思い出に浸ったりと、気持ちの整理にえらく手間取るアダム坊にこっちのイライラは煮崩れ寸前。どしてボク、こいつの自己憐憫に付き合わねばならないデスカ? そんなカサブタ、さっさと引っぺがして次に進めって言ってんの!

さらぬだに! これが10代の恋ならまだ分かるが、本作のアダム坊は26歳という設定なのだ。

おまえ26でそれは大概にせえよ。back numberのしみったれた失恋ソング聴きながら恋のカサブタをわざと弄くり回して“悲しむワタシ”に酔ってる小娘じゃあるまいし、いい加減に目覚めろブタ。甘えるな。くそが。潰すぞ。

そんなアダム坊だったが、メグとは毎日散歩しながら身の上話をする仲に。どうやらメグの夫は浮気をしていて、17歳のクリステンは反抗期なんだと。そこへ追い打ちをかけるようにメグに乳がんが見つかってしまうのです。

f:id:hukadume7272:20201122005338j:plainメグとアダム坊。

そんなメグに少しずつ惹かれていったアダム坊は、珍しく彼女が弱気になったところにつけ込んで急にキスをする。

ええ? この映画のヒロインってメグの方なんだ?

ポスター写真ではアダム坊とクリステンがむちゃむちゃキスしてるけど…。

まさか親子丼…。これ大丈夫? あとでちゃんと辻褄合う? …なんて思ってると、そのあとアダム坊はクリステンにも惚れちゃって、ポスター写真の通りむちゃむちゃキスをする。

はい、さっそく辻と褄が駅でバイバイしました。

頼んでもない親子丼が出てきたよ。しかもクリステン…17歳だからね? こうなってくると事実上の山口メンバーじゃん、アダム坊。やってることが。アダムメンバーだよ。事実上の。

ていうか 46歳の母親と17歳の娘を両方いくかね?

たとえイケてもいくかね? おまえの中のモラル、革命起こしとんのか?

その後、庭でクリステンとむちゃむちゃキスしてるところを家の中からメグに目撃された事実上の山口メンバーとしてのアダムメンバーは「この変態。二度と娘に近づかないで!」とブチ切れられ、実質ロリコンとみなされてしまいます。

これによってメグ親子とのご近所付き合いは絶たれてしまい、メグは闘病の末にがんを乗り越え、実質ロリコンである事実上の山口メンバーとしてのアダムメンバーは、メグ親子に対して「あわよくば両方いこうとしてすみませんした」という謝罪の手紙を送ってロスに戻ります。手紙を読んだメグは「まあ、ゆるす」みたいな朗らかな表情で、なぜか笑ってた(笑う余地をどこに残してたの?)。

ほいでそのあと、夜のダイナーで可愛いウェイトレスと知り合ったアダムメンバーはこれまでの半生を綴った自伝を完成させ、ロスで人生を再出発するというのです。おしまい。

おどれ、なんべん再出発すんのじゃ。

ええ加減にせえよ。なんでおまえは失恋するたびに街を変えて人生を再出発するんですか。何そのスゴロクみたいな人生。おまえの恋路という名のスゴロク、「〇〇にフラれた。スタートへ戻る」だらけやないか。

ほいで誰が読みたいねんその自伝。

おまえの薄っぺらい半生を書籍化すな。しれっと書き上げてんちゃうど。そもそも誰に読ませるつもりで書いたん。ターゲット層どこなん。back numberのファン? 「有名女優にフラれたあと、ミシガンで知り合った46歳の母親と17歳の娘を両方いこうとして失敗しました」みたいなこと書いたん? それ読んで誰がおもろいん? 紙の無駄や。エコロジー気にせえ。潰す。

f:id:hukadume7272:20201122005416j:plainアダム坊とクリステン。

◆想像するための想像力がない◆

おもんね。バリおもんね。

まるで『卒業』(67年の出来損ないみたいなアホ丸出しムービーでした。おもんなさ過ぎて口から血ィ出てきたわ。唇を噛みしめ過ぎたのだろうか。キミはどう思い過ぎた?

とはいえ、メグの乳がん手術が成功したのは実に喜ばしいことだが、よく考えたら浮気夫との家庭問題は何一つ解決してないし、アダムメンバーとの禍根を残した別れ方も決して気持ちいいものではない。

何より、すべての登場人物がじつは恋愛感情なんて持ってなくて、興味本位だったり成り行きだったり、あるいは孤独を埋めるために相手を求めてるだけなので、ちくとも応援できないのよね。早い話が全員甘ったれ。現状認識ができてない。情操教育をイチから受け直せ。そしてその結果報告をEメールでいいから俺にしてくれ…としか言いようのない惨状がこの映画をつまらないものにしていることに監督はさっさと気づけカス。

 

演出面に関しても終わりきっていた。終わりきり過ぎて逆に始まったのか?と思ったし、これが終わりの始まりか…とすら思い過ぎた。

アダムメンバーは迷いや困難にぶち当たるたびにiPodを聴きながらランニングし、クリステンは自宅ガレージで絵を描く。ここまでは凡庸ながらも凡庸なりに頑張ってるようなので「ほーん」って感じだが、肝心のアダムが聴いてる“iPod”や、クリステンが描いた“メグの似顔絵”はいっさいドラマに活かされないんだよね。活用法なんていくらでもあるだろうに。

思うに、たぶんこの映画の作り手たちは想像力が足りない…というより想像力を働かせるということすら思いついてないんだと思う。想像するための想像力がないというか。キミの周りにも、同じミスばかり繰り返す人っているでしょう? そういう人って、考えたら分かることなのに考えることをしないんだよね。だから「考えたら分かるでしょ?」って叱っても意味ないわけ。だって「考える」というコマンドがそもそも無いんだもの、その人の中に。

そして本作には、悲しいかな「想像する」というコマンドが無かった。ゆえに演出も無かった。厳しいことを言うようだが、想像力のない創造物のことを人は「ゴミ」と呼ぶわけです。だからゴミ箱というのは“想像力の墓地”なのね。したがって本作は墓地に埋葬されるべくして生み出されたナチュラルボーン・ゴミということが言えてしまうんだと思う。

 

ちゅこって、総括としましてはメグ・ライアンが出てるネスカフェのCMを見てた方がマシ。遥かにマシという結論に至らざるをえない過ぎた。こればっかりは。

ちゅーか、懐かしいなー。不肖ふかづめが発表する「思い出深いCMランキング」で堂々の第33位に輝いた「ネスカフェ エクセラ」のCM! 名作ですよこれは。犬とたっぷり戯れたメグが「パーフェクツ!」つってコーヒーを嗜む、充実の30秒。かわいい。ロバータ・フラックの「やさしく歌って」もピシャリと嵌ってるし、大好きなCMです。また流れないかな。だって、こんなにも素敵な30秒があっていいのかぁ!?

★知ってうれしいおトク情報★

『ランド・オブ・ウーマン』を観る暇があれば、このCMが正確に196回見れます(見ようよ)。


可愛かったころのメグ・ライアンが「ネスカフェ エクセラ」の価値を伝えたCM。犬飼いのメグが一杯のアイスコーヒーで夏気分を味わうストーリーに仕上がっている(YouTubeより無断転載)。