シネマ一刀両断

面白い映画は手放しに褒めちぎり、くだらない映画はメタメタにけなす! 歯に衣着せぬハートフル本音映画評!

女ガンマン 皆殺しのメロディ

裸にポンチョのグラマラスが荒野の豚どもに復讐の弾丸を叩き込む。砂埃とともに死を運ぶ刺客の名はラクエル・ウェルチ! 〜豚め、許しやしないよ〜

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1971年。バート・ケネディ監督。ラクエル・ウェルチ、ロバート・カルプ、アーネスト・ボーグナイン。

銀行を襲ったクレメンズ三兄弟は逃亡用の馬を盗むために町外れの牧場に向う。兄弟は地主を殺し、その妻ハニーをレイプし、家に火をつけて去った。何もかも失った彼女は復讐を誓い、賞金稼ぎのプライスから射撃を習い、2人はクレメンズたちを追い詰めて行くが…。 (Amazonより)


 被保険者のみんな、おはよ~。
最近、前書きが愚痴化しつつある『シネマ一刀両断』のふかづめです。
昨日、6月分の記事をピャって読み返してみたところ、マァ愚痴が多いね。「世の中バカばっかり」とか「時代おもんね」とか。あと、むやみに店員さんを怖がらせたり
それでなくともジャーゴンね。珍しく愚痴を書かないときは、大体ジャーゴンを書いてるね(ジャーゴン…わけのわからない言葉。ちんぷんかんぷんな言説など)。「おさななななななななななななななじみ」とかいって騒いでいたね。覚えてるよ。シラフのときに読み返して「なんこれ」と思ったよ。詮無いことやで。
 私の場合、前書きは、酒を飲みながらの映画評を脱稿したあと…すなわちドロドロに酩酊した状態でいつも書いているので、その多くが思いつきやデタラメに基づいた拙文と相成ってございます。逆に、あまり「意味のあること」や「私情」は書かないようにしていて、特にパーソナルな話とか時事ネタはあえて避けているのだけど、近頃は少し濃くなってきたなと反省しているのです。いわば前書きとは、映画評という名のメーンイベントの為の前説、余興、お通し、また関西では突き出しとも言うけれど、そのようなもので、ここを濃くするとメーンイベントが薄れてしまう。
 おそらく『痴人の愛』評を読んでくれた読者のうちの約2割は「なんか『ななななな』ってずっと言ってた」という読後感を保ったままスマホをそっと閉じただろうし、『(ハル)』評を読んだ読者のうちの3割の脳みそを「ジャミロクワイのアレ」という言葉が侵しきったはずなのだ。
これすなわち、『痴人の愛』を凌駕する「ななななな」『(ハル)』に勝るジャミロクワイのアレということが言えていくわけで、本末転倒、釈根灌枝。ことわざで言うところの「木を見すぎて森に行っても木が気になりすぎ」なのである。
以上の反省を踏まえた結果、本日から「前書きの文字数は300字以内におさめる」という“300字の誓い”を設けることにしたのであるが、今現在、この前書きは何文字使っているのだらうと調べた結果 870字 であった。
ぎゃあ、もう失敗じゃん。「被保険者のみんな、おはよ~。」を削っても856文字。ビクともしねえじゃん。この失敗はアレだ。5年前に初めて買った32GBのipodをあいちゅんに繋げて全曲ぶち込んだものの「パンパンです」って言われて泣く泣く演歌歌手4名を外したものの「それ外したぐらいじゃムリ。まだパンパンです」って言われた時と同じ類の失敗だ。

~素敵なエピローグ~
そのあと、ついに美空ひばりを外してさえ「まだパンパンです」と言われたので「パンパンやあるかぁ。美空ひばりを外すという、事の重大さをオマエはなんとする。機械畜生がぁ!」と激昂してコンピューターを殴りつけました。美空ひばりを拒否するなど、もってのほかだ。天下のアップル製品がこんなことでいいのか。ひばりは「リンゴ追分」を歌ってもいるのだぞ!

おら あのころ東京さで死んだ
お母ちゃんのことを思い出して
おら おら…
津軽娘は  泣いたとさ
辛い別れを 泣いたとさ
リンゴの花びらが 風に散ったよな
あ――――――

まあ、美空ひばりを外そうとしたオレも大概なんだがよ。でもそれは言いっこナシよ。痛み分けで今回はゆるす。あいちゅんを許していく。
まあ、本当はここで「美空ひばりは外したけど、ビートルズは入れたから痛み分け」と書けたら綺麗だったんだけどね(ビートルズはアップル・レコードを設立。CDの盤面にも林檎の写真。またメンバーの中にリンゴ・スターという世界最高品種のリンゴまで存在する。スティーブ・ジョブズの方のアップル社とは社名をめぐって裁判した戦歴あり)。

…ほら、こんな話してるからもう1540字じゃん。
“300字の誓い”を立てた端から反故にしていく男。誓ったことの5倍の文字数を平然と綴っていく男。せっかく読んでくれてる人たちに無駄な文章を読ませるだけ読ませて何食わぬ顔をする男。不肖ふかづめが一人で運営している『シネマ一刀両断』です。運営局員、募集中(戦歴問わず。夜食あり)。
そんなわけで本日は『女ガンマン 皆殺しのメロディ』です。容赦はしないよ!

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◆そのとき淑女は銃を取った。怒りの弾丸が奴らを狙う!~ジーンズを縮ませてお気に入りのサイズにしてみる~◆

 本日みなさまの耳目にねじ込む映画は『女ガンマン 皆殺しのメロディ』で決まりのマリコ!
遂にこの映画を自由に語れるときが私に来たというのか!
『キル・ビル』(03年) の元ネタとしても有名な本作だが、なんといっても20世紀最高のグラマーの名を欲しいままにした主演女優、ラクエル・ウェルチである。
当くそブログでは『恐竜100万年』(66年) 『マイラ -むかしマイラは男だった-』(70年) を扱ってきたが、その他の代表作に『ミクロの決死圏』(66年) 『悪いことしましョ!』(67年) など、まばら。『ショーシャンクの空に』(94年) の中で『恐竜100万年』のポスターが使用されたことでも知られる60年代のセックスシンボルだ。あなたはこの言葉を知っているだろうか。
「フランスにブリジット・バルドー、イタリアにクラウディア・カルディナーレがいれば、アメリカにはラクエル・ウェルチがいる!」
そう、私の言葉である。ビビった?


そんな伝説的セクスィーのラクエル・ウェルチが銃を握り復讐を誓う!
 強盗三兄弟に夫を殺され、自身もレイプされた挙句、家を放火されて馬まで盗まれたウェルチだが、泣いて枕を濡らす女ではなかった。というか、家を焼かれたので枕も燃えた! 泣き寝入りの枕すら失った彼女には何も残されていない。レイプされた直後に焼討ちに遭ったウェルチは慌てて外に逃げ出したために衣服すら持ってなかったのだ。
枕もねぇ。衣服もねぇ。車もそれほど走ってねぇ。
「あたしゃメキシコさ行ぐだぁ」
何を言うとるんだ。

 そんなウェルチの前に現れたのは伝説の賞金稼ぎ、ロバート・カルプ。彼に師事したウェルチは銃の撃ち方を教わり、女ガンマンとしての腕を磨いていく…。
当初ウェルチは裸にポンチョという刺激的な風采だったが、街に着いたときにロバートからジーンズを買ってもらうことに成功しています。店主に「水で縮めてなじませろ」と言われたウェルチがジーンズを履いたまま風呂につかる茶目っ気シーンは語り草!

f:id:hukadume7272:20210405081254j:plainボディダブルでないことを祈る。

敵役の強盗三兄弟を演じるのは、アーネスト・ボーグナインジャック・イーラムストローザー・マーティンという堪らなくうれしい顔ぶれ!

ヘンコな親父役を得意としたアーネスト・ボーグナインは『マーティ』(55年) 『ワイルドバンチ』(69年) 『ポセイドン・アドベンチャー』(72年) 『ガタカ』(97年) などで暑苦しい演技を披露。2012年に95歳の若さで亡くなるまでアメリカ映画の第一線で活躍し続けた大名優。

ジャック・イーラムは『ウエスタン』(68年) での狂人役、『リオ・ロボ』(70年) での狂人役、『キャノンボール』(81年) での狂人役などでラリった演技を披露。隻眼の怪優として重用された名脇役だ。演じた役の大半が泥酔親父であることから「アルコール中毒の父」と呼ばれた。

ストローザー・マーティンは『暴力脱獄』(67年) の刑務所長や『明日に向って撃て!』(69年) の鉱山マネージャー役で知られる悪役俳優。『吸血こうもり』(79年) という謎の映画を遺作に1980年他界。なお『吸血こうもり』は筆者ふかづめが発表する「観たい映画ランキング」において1025位を記録。


強盗、レイプ、放火、殺人、馬泥棒と、この世の重犯罪をコンプリートする勢いの三兄弟だが、リーダー格を演じたボーグナインが芸達者のためか、不思議と憎めない。彼らは銀行強盗をことごとく失敗している上、放っておけば自滅しかねないほどよく喧嘩するバカ三拍子。西部劇に出てくる悪役兄弟といえば、だいたいが三者三葉の性格を持った凸凹トリオというのがお決まりだが、本作の三兄弟は揃いも揃ってバカばかり。
ボーグナイン…バカ
イーラム…バカミ
マーティン…バカゾーマ
ドラクエのごときバカ三段活用におさまることをよしとする一元的なキャラ造形なのだ。憎めん。

f:id:hukadume7272:20210405074846j:plain左から順にイーラム、ボーグナイン、マーティン。

◆その視線の先に一体何が? なぜイーストウッド・フォロワーはすぐ景色を見ようとするのか。 ~景色を使ったオナニー。その精髄が火をふく~◆

 ファーストシーンではウェルチとロバートの間にピリリ、緊張感が漂っていた。
ロバートが、警戒したウェルチから突きつけられたウィンチェスターライフルを一瞬で奪い取ったまではいいが、ライフルをウェルチに返して背を向けた直後に彼女から銃床で後頭部をしたたか殴られ「ガンマン!」と小さく鳴いて失神する姿は本作初笑いの瞬間である(しかも一日寝込む)。

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「ガンマン!」

伝説の賞金稼ぎのわりに滑稽だな、こいつ。
騙し討ちとはいえ、素人に後頭部しばかれてひっくり返ってるやん。ほいで一日寝込んでるやん。
そんなロバートであるが、ウェルチとの旅を観続けるうち、私の心にある疑念が芽生えた。
この俳優…もしかしてイーストウッド意識してる?
なんしか、苦虫を噛み潰したような顔で、目を細めて太陽をよく睨むんだよね。しかもアオリのアップショットで。
実際、セルジオ・レオーネのマカロニ・ウェスタンで確立されたイーストウッドのキザ芝居が後進に与えた影響は計り知れず、この““苦虫噛み潰し太陽睨み””から派生して、渋い顔で意味もなく景色を見るイズムというのが世界中のアクションスターの間で広く共有された。
ブルース・ウィリスもよく使ってる芝居だが、たとえば西部劇や刑事アクションなどで仲間が死んだり困った事態に直面したとき、ややアオリ気味の構図から困惑したような渋い顔で意味もなく遠くの景色を見ちゃう…という演技プランが浸透したのである。
なんしか苦々しい気持ちがしたとき、アクション映画の主人公は一回地平線の彼方を目に焼きつけるように景色見がち。渋い顔で。
本作のロバート・カルプはひときわ露骨で、身も心もイーストウッドになりきっていた。

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意味ないのに景色見ちゃう。

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誰もいないのにしばらく周囲を見渡してみる。

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そんなことしても何も生まれないのに虚空を睨みつけてみる。

しかもこのシーンがまた長いんだ。たっぷり時間かけて景色を堪能しやがって。これはもう景色を使ったオナニーと言ってよいだろう。本家イーストウッドの“苦虫噛み潰し太陽睨み”は惚れ惚れするが、そのフォロワー勢によるイーストウッドごっこにはいささか辟易してしまう。
すぐ景色見んな。

 さて。ウェルチの銃を調達すべく、二人はメキシコで商売をしているガンメイカーの元へ向かう。ここでウェルチ専用武器の特注リボルバーを作ってもらうのだが、そのガンメイカーを演じているのがドラキュラ俳優のクリストファー・リー。 戦後怪奇映画の立役者であり、2015年に95歳で亡くなるまでに『ロード・オブ・ザ・リング』『スター・ウォーズ』シリーズでも活躍した一流吸血俳優だ。
このメキシコシーケンスではウェルチの武者修行が描かれる。紐で結ばれた石を棒から垂らし、その棒の両端を握った手をぐるぐる回しもって石を巻き上げては再び降下させる…という謎の訓練に汗するのだ。手首のスナップを鍛えるためだろうか? 毎日少しずつ大きい石に変えていくという少年ジャンプまがいの修行シーンが観る者を心地よい眠気へといざないます。

 それをクリアした後はいよいよ射撃訓練。即席で作ったみたいな雑なカカシをバンバン撃つウェルチに、ロバートが一口コメントをします。
「夕方、影が伸びると敵は遠くに見えるが、そうとも限らん。逆に正午なら太陽の真下で影がなく敵は近くに思えるが、そうとも限らん。つまり、瞬時に距離を測ることが大事なのかと言うと、そうとも限らん。要するに、自分で判断することが何より大事だとワシは思うのだけど、そうとも限らないかも…」
含蓄の中に含蓄があるみたいな物言いである。でも、意外とええこと言うやん。これまでの2失点は水に流してもいい。
そんな訓練の最中、ガンメイカーに会いにきた黒ずくめの男が銃を修理に出し、去り際にウェルチに一瞥くれて意味深な笑みを浮かべるのだが、いったいこの男は何者なのだろう…?

f:id:hukadume7272:20210405074237j:plain即席で作ったみたいな雑なカカシをバンバン撃つウェルチ。

 そしていよいよ復讐の時…。
街に着いたロバートは偶然出会ったボーグナインと決闘するが、普通にサシで負けて死にます。
そうとも限らんおじさん、普通にサシで負けて死ぬん?
ヘッボ! 伝説の賞金稼ぎなのにヘボッ! 失点を水に流した端から失点すなよ。失望した!!!
しかもロバートが放った銃弾はヒラリとかわされ、カウンターで飛んできた手投げナイフを腹に受けて負けちゃうんである。
ボーグナインの回避率バグってないか? ていうか銃弾かわせる世界観だったのかよ。なるほどねー。ほぉほぉ。
この映画のリアリティラインは『マトリックス』でした。
銃弾かわせる世界観でした。


恩師・そうとも限らんおじさんを失ったウェルチは「悲しいかって言われると、そうとも限らない」とか何とかブツブツ呟いて三兄弟の抹殺を誓います。さっそく娼館に押し入ってイーラムに早撃ち対決の企画を申し出たウェルチ。
ウェルチ「よーいドン!」
イーラム「バキュン!」
ウェルチ「あ痛! バキュン!」
イーラム「あ痛!」
肩を撃ち抜かれてしまったウェルチだが、見事イーラムを始末した。つよ。
次は、肩の治療後にセレクトショップで出会ったマーティンとの対決だが、これも難なく撃破したウェルチは「勝ってうれしいー」と喜んだ。つよ。
石垂らし棒をぐるぐるして雑なカカシをバンバン撃っただけでこんな強くなるんか。

f:id:hukadume7272:20210405081811j:plain初の実践で勝ち越すウェルチ。つよ。

 晴れて2人始末したウェルチ、残る仇のボーグナインに決闘状を送り、町はずれの旧刑務所で虎視眈々と復讐のときを待つ。しかし観る者には「大丈夫だろうか…」とウェルチを心配せずにいられない懸念ポインツが一つある。
あいつ弾よけよるからなー。
そうとも限らんおじさんの銃弾、完全に見切ってたからねぇ。ひきょいよ。一人だけスペックが『マトリックス』だもん。

そして対決の刻限。ウェルチの背後を取ったボーグナインはニタリ顔で銃口を向けたが、刹那、どっかから飛んできた弾丸に銃を弾き飛ばされ、その音に反応したウェルチが「そこかい! 許しやしないよ!」と言ってボーグナインをパキュンと撃った。
ボーグナイン「イタッ」
そう呟いて、ボーグナインは死にました。ウェルチを助太刀した黒ずくめの男は「やったじゃん」みたいな笑みを浮かべ、無言で頷きます。
…どちらさんですのん。

ラストシーンはウェルチが馬でボーグナインの死体を運ぶショットに謎の不協和音がタラタラ流れてエンドロールです。
結局、やったじゃんの男は何だったのよ? ガンメイカーに銃の修理を頼んでた男と同一人物だったけど、それ以上の情報がまったくないから素性も分からなければ助太刀した理由も分からないままなのよ。何なんだこいつ? こんなものを“キャラクター”と呼んでいいのだろうか。「大勝負のクライマックスなのに正体不明の謎キャラが助けてくれたお陰でなんか勝っちゃった♪」って…ゴミかよ。
脚本という名の、字が印刷された紙が製本になっただけのゴミかよ。モヤッとするわ~。自力で勝ってほしかったわ~~。

f:id:hukadume7272:20210405075811j:plainやったじゃんの男(右)。最後まで素性不明。

◆ラクエル・ウェルチの華麗なる猛追が火をふく! ~永遠のグラマーよ、健康美と共に火をふけ。涙の最終回SP~◆

 この章はまじめに批評するね。
本作は疑似マカロニ・ウェスタン(イタリア製西部劇)である。イギリス資本の作品だが心はマカロニなのだ。
…と言いたいところだが、メキシコシーケンスで画面一杯に広がるを見るにつけ甚だ疑わしく、またメキシカン・スタンドオフの構図もなし。それに青空が濃すぎる点からしてマカロニとは似ても似つかぬ無国籍西部劇なのだけど、かくの如き特殊性は“女ガンマン”が主人公であることからして織込み済み。要するに監督バート・ケネディの主眼は、アイドル映画にならない程度にラクエル・ウェルチの魅力を引き出しながらマカロニ風味の西部劇を作るという一点にハナから集約されていたわけで、そのためには豪華俳優陣で脇を固める、話もポンポン進める、素性不明のチートキャラも出していく…という四十八手の裏表を駆使する必要があったのだろう。
実際、“黒ずくめのアイツ周り”を除けば存外楽しめたし、レビューサイトで指摘されている「B級臭さ」も誉め言葉として捧げたいねー。

 何よりラクエル・ウェルチを男前に撮ったテッド・スケイフの仕事ぶりたるや監督以上である。エロチシズムの権化としてでもメロドラマの特使としてでもなく、凜然と腰のガンベルトに手を掛けて賊を威圧するウェルチを、まるで『100挺のライフル』(68年) の下品なセックスアピールを否定するかのように雄々しくおさめた本作は、だから男性役のウェルチが女性に性転換して男をレイプする『マイラ』の逆張り精神に倣った華麗なる猛追なのだ。したがってラクエル・ウェルチは十分にグラマーであるにも関わらず、ブリジット・バルドーやソフィア・ローレンほどにはセックスの匂いを発散しておらず、今もなお“健康美の女優”として記憶されている。現に私自身、本稿では一度も「おっぱい」と口にしていない。

プロポーションというよりはデザインとして男前なラクエル・ウェルチが楽しめるのは本作だけ。ポンチョ愛好家も垂涎!

f:id:hukadume7272:20210405080543j:plain肩の治療に耐えるウェルチ。