幼少期に見てこその人格形成前夜専用ムービー。
1974年。石井輝男監督。千葉真一、佐藤允、郷鍈治、中島ゆたか。
甲賀忍法の嫡子、殺し屋、元合気道師範の3人が国際麻薬組織に潜入して地獄拳をお見舞いする。地獄拳が直撃した人間は鼻血を噴きだし、目玉とか吹き飛んで死ぬる。 いま降り注ぐ鮮血の豪雨! うなれ地獄拳。右だ! 左だ! あっちだ! そっちだ! どっちだ! こっちだ!
はい、おはようとしか言いようのない状況が巻き起こってる。
大体なぁ~、調味料をかける際に「サッとひと回し」とか「2周半で」とかいうけど、そんなもん、こっちの傾け具合とか握力次第でチョロチョロ出たりドボドボ出たりするんだから「どの勢いを想定しての『サッとひと回し』とか『2周半』をおまえは言っていますか?」っていつも思うんだよ。なんなら「チョロ1周」とか「ドバ2周」って表記してくれればいいのに。
料理番組を見てると、みんな言いよるわ。「サッとひと回し」って。腹たつ。
お前にとっての「サッ」が俺にとっての「サッ」だと思うなよってことです。
十人いれば十人十色の「サッ」が、そこにはあるわけじゃん。涼しい顔してサッ。子守りをしながらサッ。ポルカみたいにサッ。暗号解きながらサッ。福原愛もどきのサーッ。
それなのに、奴らときたら「サッ」を世界基準みたいに…。
サッの画一化はやめろ!
人には人それぞれのサッがあるんだから「サッとひと回し」なんて無責任なことをいうな。わかるだろう? ありがと。
あと「適量」も腹たつな。レシピに「適量」って書いてあったらだいぶ腹たつ。
「ウン。だから、その量を聞いてる」って。
適量…ちょうどよい量
ウン。だから、それを知りたいからレシピ見てる。でもレシピに「適量」って書いてる。適量を知りたいからレシピ見てるのに「適量」って書いてる。
イタチごっこはうんざりだ!!
嘆く私に、ある人は「適量なんだから、好みの量でいいんだよ」と助言した。言いたいことはわかるけど、好みの話にすり替えるなっ。私は「適した量」を知りたいだけなのに。それに、適した量を知らなければ好みの量なんてわかるわけねえじゃん。適量を知り尽くしてこそ自分好みの量に調整できるんでしょ。多めにしたり少なめにしたり。そうでしょう? ありがと、ありがと。
そんなわけで本日は『直撃! 地獄拳』です。取り立てて書くことのない映画だったので、しこたま酒を飲んで、なりゆき任せに“酔筆”をしました。そりゃもう酷いもんだわ。
◆そう、この世には存在する。いいねを超えた「うぃーね」が◆
カァァ~~~~、ハッハッ。
新田真剣佑を子にもつ国際派アクションスター、千葉真一によるハードアクション忍法コメディ空手コメディ天井はりつき独特呼吸ハードアクション映画『直撃! 地獄拳』。
千葉真一が演じた主人公は甲賀流忍法を会得した空手家!
なんじゃそら。
空手か忍法か、はっきりせい。
千葉真一の仲間には、元麻薬課の刑事で現在は殺し屋という設定の佐藤允!
なんじゃそら!
さらには合気道師範にも関わらず合気道を使わない死刑囚・郷鍈治!
なんじゃそら!
3人を集めた元警視総監の池部良は国際麻薬組織の殲滅班を結成! 連絡係の美女・中島ゆたかが指示をくりだす!
「あんたら3人で麻薬組織を潰すのよ!」
なんじゃそら!
左から千葉真一、郷鍈治、佐藤允。
脇を固めるキャストもぼちぼち豪華。
幼少期の主人公の姿を真田広之!
いいね!
麻薬組織のボス役には津川雅彦!
いいね!
その子分役には王様ゲームの発案者・安岡力也!
うぃーね!
その他、実際の武道家も多数参加する!
和製ドラゴンこと倉田保昭!
いいね!
ボクシング世界フェザー級チャンピオンの西城正三!
うぃーね!
レバノン空手チャンピオンのジョージ・ユリキアン!
なんじゃそら!
元中部アジアプロレスチャンピオンのヤン・ハーマンソン!
なんじゃそら!
元プロレスブラックサンダーのウイリー・ドーシー!
なんじゃそら!
インド少林源流のジューン・フェロー!
なんじゃそら!
ペルシャ古武術師範のバート・ヨハンソン!
なんじゃそら!
この中でも、ぶっちぎりで分からなかったのは「元プロレスブラックサンダー」という概念。
なんじゃその専門の概念!
監督は東映ポルノの覇者・石井輝男。
ウィーネ!
広く知られているのは高倉健の『網走番外地』シリーズだが、その他の作品に『セクシー地帯』(61年) 。
なんじゃそら!
『温泉あんま芸者』(68年) 。
なんじゃそら!
『恋愛ズバリ講座 第三話』(61年) 。
一話と二話の立場は?
『徳川女刑罰史』(68年) 。
なんじゃそら!
※ベチョベチョに泥酔しながら書いてます。もろもろ許してね。
左から順に、幼少期の真田広之、幼少期の津川雅彦、幼少期の安岡力也。
◆そう、この世には存在する。人格形成前夜専用ムービーというやつが◆
前章を書いたらすげー疲れた。クールな私にはらしくない振舞いだったことを認めた上で、ここからは落ち着きを取り戻して続きを書いてく。
さて、『直撃! 地獄拳』。
久しぶりのハードアクションは、私のねむけまなこに重力をかけました。
あの手この手でエンターテイメントという名の“突き”を繰り出してくる作品だが、悲しいかな、その突きは私を抗しがたい眠気へと誘うばかりで、もっぱら「退屈の歌」という自作ソングを脳内で掻き鳴らすことだけに集中することで眠気を撃退し続けるといった“忍耐の87分”を私に強いたのである。
一応、ハードアクションとお下品コメディをふんだんに塗した作風で、全編通して非常にエキセントリックなバカ映画ではあるのだが、なんだろうな、そういうのに乗っかって「ほほ。愉悦」と素直に笑える季節がオレの中では過ぎたっていうか、真顔で「へえ、おもしろい映画だね」と言ってそれっきり終わっちゃうような“無感動の肯定”へとオレを走らせる、そんな作品とオレ間の齟齬が最後まで修復できないままエンドロールを迎えてしまった、って感じだ。
早い話が全然おもんなかった。
たとえば本作を12歳のときに見ていたら、きっと今ごろは前章のごとく「カァァ~~、ハッハッ!」なんつって快哉を叫びながら歓天喜地していたに相違ないが、あれから私も色々ありました、お母さん。ブニュエルを見ました。ヤン・シュヴァンクマイエルを見ました。背骨が歪みました。その結果、少年心をくすぐるような映画がまったく刺さらなくなり、たとえば『グーニーズ』(85年) を観るとイライラするような癇癪持ちの大人になってしまったのです。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(85年) とかも大嫌いだからね、はっきり言って。
それだけに、人格形成される前の文化体験はとても貴重といえるわけです。かくいう私も、人格形成前夜には『アマゾネス対ドラゴン 世紀の激突』(74年) だの『片腕カンフー対空飛ぶギロチン』(75年) だのといったポンコツ映画の洗礼を受けてはカラカラと喜んでいたのだ!
しかし、そんな人格形成前夜専用ムービーも今観るとイライラしてしまう。だからこそ、間に合ってよかった。ブルース・リーも、『スタンド・バイ・ミー』(86年) も、アルバトロス系も、桃色ネオレアリズモも、ぜんぶ間に合った。
でも『直撃! 地獄拳』は間に合わなんだ。
すまん地獄拳。オレを直撃しろ。本作の不良性感度に共鳴するには人格形成が間に合いすぎたぁ。後夜祭とうに終わっとる。
◆そう、この世には存在する。「あおっ! あおっ!」という叫びと共に推移する千葉百面相が◆
カァァ~~~~、ハッハッ。
クールな私にはらしくない振舞いであることを重々承知しながらも、最後の章では残るファイトを振り絞ってハイテンションな態度へと再び豹変。これが地獄拳へのオトシマエ。
間に合わなくてもいいじゃないか。今からでも遅くねぇよ、歓天喜地。
ちゅーか、さいぜんからワシは何の話をしとるんだ。シラフで読み返したら頭痛くなるだろな。読者はいつもこんな文章をシラフで読んでるのかーと思うと、おまえ達が実にいじらしいよ。見上げたおまえ達です。
だが、ここまでお付き合い頂いてる読者諸君の脳内にぐりぐりと渦巻いてるのは「さっきからカァァ~~~~ハッハッってなに?」という素朴な問いであろう。これは主演の千葉真一が空手の型をしながら息をスーハーする呼吸法なのだ。「カァ~~」と息を吐き、だしぬけに「ハッハッ!」と騒ぐ。訳はわからんが、きっと何ぞ意味はあるのだろう。
それにつけても映画終盤、千葉ちゃんがカメラ目線でヌンチャクを振り回すシーンがやけに長い。「あおっ! あおっ!」と騒ぎながらの一人芝居であったが、観る者にとっては千葉百面相の推移を見守るだけの不思議な時間であった。
カメラに向かって一生けんめいにヌンチャクを振る。
なんというか、全体的な印象として、意味を見出しにくい作品であったな。
千葉真一は、張りつく必要のないところで天井に張りつき、津川雅彦は大勢が見ている前で愛人の外タレをなぜか素っ裸にし、アクションシーンでは“敵によけられた大技”をわざわざスローで繰り返す。よけられてんのに。
極めつけに、千葉ちゃんが素手で抜きとった敵の肋骨がどう控えめに見ても犬用の骨ガム。
そもそも大筋からして『燃えよドラゴン』(73年) なのよね、これ。
千葉ちゃんは「あたっ。あたっ」言いながらヌンチャクを振り回し、怪鳥音を発しながら敵にトドメを刺して「アォ~~~~」と悲しげな表情をする。
ほなブルース・リーや。
また、3人の助っ人に現れた拳法家の倉田保昭は「和製ドラゴン」の名を欲しいままにしたアクション俳優です。
ほなブルース・リーや。
そのお姿がこちら。
ブルース・リーや。
物語の結末は見てのお楽しみ。というか見なくていい。
同年公開の『激突! 殺人拳』(74年) とはタイトルこそ似通えどエライ違いで、日本アクション映画の精髄を垣間見ようと思えば『殺人拳』の方を見ておくのが吉としか言いようのない状況が鑑賞後の私をぐるぐると取り巻きました。
眠いから眠る。
安岡力也(千葉にしばかれた)。