シネマ一刀両断

面白い映画は手放しに褒めちぎり、くだらない映画はメタメタにけなす! 歯に衣着せぬハートフル本音映画評!

トゥルー。それこそがトゥルー。

 チュルー。おいす、おいす!
「復讐の昭和キネマ特集」が最終回を迎えて約3週間。ヘヴィ読む者の渋谷あきこさんから嬉しいコメントが届きました。

「昨日から口内炎で落ち込んでたけど、ブログ読んで元気出た!
なのにシリーズ最終回?😭😭😭
口内炎治したいので続けて欲しい。」

「ブログ読んで元気出た!」なんて、書く者冥利に尽きるよな~。
渋谷あきこさんは『昭和キネマ特集』を載せたら喜ぶ人なので、シリーズが最終回を迎えるたびに名残惜しそうにしてくれます。有難いことだ。
けどね、あきこさん。
『シネマ一刀両断』は口内炎の治療薬じゃないんだよ。
「口内炎治したいので続けて欲しい」って。まるでシネトゥを読むことが口内炎治す近道だから甘んじて読んでるみたいに。
チョコラBB食ってろ!

 てなこって、ここ数ヶ月、まったく映画評を書く気分になれないのでお茶濁しの随筆回です。
今回は、過去によそのSNSで書いた随筆「トゥルー。それこそがトゥルー。」を発表します。豪華リミックスバージョンです。
↓ ↓ ↓ 本編 ↓ ↓ ↓

 そういえば先月、マンションの備え付えエアコンが壊れた。
なんで壊れんねん。アホか。
エアコン、すなわちエアー・コンディショナーとは、エアーのコンディションを調整するための機械なのに、そのエアー・コンディショナー自体がコンディションを崩すなんてアホな話だ。
これだから科学は嫌いだよ!
スイッチを押しても起動しなかったり、起動中に運転が停止してしまうという症状に見舞われたのだが、日によっては調子よく動くときもあるんだよね。この気まぐれ加減が、たいそう難儀するん。

 さっそく管理会社に電話して症状を訴えたところ、エアコン業者に繋いでくれたのだけど、なんと業者から「もし点検に伺ったときに正常に動いていれば、点検や修理のしようがないので、俺たちは何もせず帰ることになるけど、それでもいい?」と云われました。
つまり、業者が拙宅に来た時点で、エアコンがぶっ壊れていないと話が先に進まないのだ。そのために私は、エアコンが壊れていることを証明する必要に迫られたのです。

おれ「正常時と異常時を繰り返すこと自体がすでに異常なのに、エアコンの異常時を見計らって業者さんに来てもらわないといけない、ということですか」
業者「そういうことになります」
おれ「もし業者さんが来たときにエアコンが正常に動いていれば『どこも壊れてねーじゃん』ということになって、私はオオカミ少年の烙印を押されてしまうのでしょうか」
業者「まぁ、そうなりますね」
おれ「なんやそのタイミング勝負」

七面倒臭い話になった。くそめ。なんでこんな面倒臭い事態ばかりが巻き起こるん。私の人生において。
すべての元凶は、中途半端に壊れたエアコンだ。いっそ壊れるなら完全に壊れてくれた方が有難いものを、なまじ正常に動く場合もあるから、話が余計にこじるりなんだよねえ。
この気まぐれエアー・コンディショナーめ!

「だったら、故意にぶっ潰してもいいですか?」と私は電話口に向かって云った。
「故意はだめです」と即答された。
「え。だって業者さんが来たときに運悪く正常運転したら嫌なので、いっそとどめをさして完全に破壊したいです」
「完全破壊はだめ。そちらの負担になりますよ」
「ぼくは何も負担したくない」
「だったら故意にぶっ潰さないでください」
「えっ。えっ。だって明らかに故障してるのに、明らかに故障してることが証明できない可能性が横たわっているのですよ? 業者さんがウチに来る5分前までは調子よく故障してたのに、業者さんが来た途端に正常に戻っちゃうかもしれない。修理してもらえるかどうかが、業者さんの来るタイミングに懸かってるなんておかしな話でしょ。なにそのタイミングバトル。固唾のんじゃう」
「まぁ、ご尤もですが…」
「もっと突き詰めちゃうよ? ウチに来るまでの、業者さんの歩く速度や、赤信号に引っかかるかどうかの違いが、故障かそうでないかの判断に影響を及ぼすわけです。そんなの、バタフライ・エフェクトじゃん」
「バタフライ・エフェクト…?」
「蝶ちょの羽ばたきが竜巻を起こすんですよ!!」
「なにをいってるかぜんぜんわからない」
「本当にさ。馬鹿げた話だ。なめやがって。上方落語にだってこんな話はないですよ」
このように怒り心頭で抗弁したところ、「わかりました。とりあえずエアコンのスペシャリストをひとり向かわせます」ということになった。
「やた! エアコンのスペシャリストがひとり来る!」と欣喜雀躍する私。

  後日、エアコンのスペシャリストが来た。
エアコンのスペシャリストは、エアコンのスペシャリストだから、エアコンを一目見ただけで「ああ、経年劣化ですね」とスペシャリティーに云ってのけた。ためしに運転ボタンを押すまでもなく、即座に故障と判断してくれたのだ。
たいへんにありがたい。たいへんにありがたいのだが、それはそれでモヤモヤした気持ちが残った。電話対応者とエアコンのスペシャリストの対応が、あまりに違っていたからだ。
電話対応者はバタフライ・タイミング・エフェクト・バトルを仕掛けてきたのに、このスペシャリストはブロークン・モーメント・ジャッジを下したのだ。
あれほど電話で押し問答したのはいったい何だったのか!
ばかみたい!

どうしても納得がいかなかったので、すでにハッピーエンドに帰結したにも関わらず、私は再び話を蒸し返してみた。
「一瞥しただけで故障と断じてくれて、実にありがたい。さすがスペシャリスト。他の追随をほぼほぼ許さない。それにしても、証拠開示が必要なんじゃないですか? 電話対応時には、本当にエアコンが壊れているかどうかが論点になっていたのです。ですから、たとえばボクが新しいエアコン欲しさに嘘をついて、壊れてもいないエアコンを壊れたと主張して新品のエアコンの付け替えを要求している……といった邪悪な筋は検討しなくていいんですか?」と尋ねたところ、「でも壊れてるんでしょう?」と云われたので「まぁ、壊れてますね」と云って、それ以上、話をする気が失せた。
ひとまず無料で付け替えてくれたので、うれしかった。一抹の違和感も残ったが。
結果的には納得したけど、論理的にはあまり納得できなかったな。なんで一回タイミングバトル挑まれてん。電話口のあいつに。

 

~今日の一枚~

巌流島、あいにくの曇り。

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