シネマ一刀両断

面白い映画は手放しに褒めちぎり、くだらない映画はメタメタにけなす! 歯に衣着せぬハートフル本音映画評!

ライリー・ノース 復讐の女神

家族を奪われた女が復讐の余熱であんま関係ないヤツまでしばいていく映画。

2018年。ピエール・モレル監督。ジェニファー・ガーナー、ジョン・オーティス、ジョン・ギャラガー・Jr.。

家族を殺されたママンが腹いせに色んな人しばく映画。


僕ふかづめ!!!
みんなニンダイ見たー?
昨日YouTubeで放送されたニンテンドーダイレクトで『ファイアーエムブレム』(以下FE)の最新作が発表されました。
私はFEのビッグファンだ。FEは、将棋みたいにマス目状になったフィールド上で「ユニット」と呼ばれるキャラクターを動かして敵軍ユニットを各個撃破して喜ぶ…というシミュレーションRPGの草分け的シリーズである。戦争の惨たらしさも満載している。
私は2019年に出た『ファイアーエムブレム 風花雪月』を未だに遊んでるな。かれこれ700時間近くプレイしてるけど、止め時がわからない…。
プレイヤーは新米教師として士官学校に赴任し、3つの学級から1つのクラスを受け持ち、生徒を教導して実践経験を積ませていく…。『トップガン』みたいでしょ?
『トップガン』なんですよ。
しかも戦場で死んだユニットは二度と復活しない。宿屋もポケモンセンターもない。死ねば終わり。
そして5年後。なんじゃかんじゃで戦争が起きて、かつての級友同士が…殺し合う!

なんて厳しいゲームだっ…!


そんなFEシリーズ最新作『ファイアーエムブレム エンゲージ』の1stトレーラーを見たんだけどさ…
つ…つまんなそ~。
正味、だいぶ怪しい。遊ぶけど。
ちなみに発売日は2023年1月20日。
この日からブログの更新がパッタリ止まることを宣誓しておく。
あなたは「いい加減にしろ!」と思うだろうか。「またそうやってゲームばっかりピコピコピコピコ!」と。だが逆に考えてごらん。来年1月から当分サボる…ということは、その日までは張り切って更新することを意味しているんだ!

そう、近頃レビューストックが大変なことになっている。そういえば2日前、当ブログのヘヴィ読む者なのにTwitter上でしか感想を書いてくれない伝説の女・渋谷あきこさんが「更新がマメで嬉しい」と褒めてくれたが、それもその筈よ。まだ未投下の記事が20本近くあるんだからな。
もちろん映画もバリバリ観てるし、評だってもりもり書いてる。なんて充実期をシネトゥは迎えているんだ!
で、その貯金を来年1月から食い潰します。
うおおおおそんなわけで本日は『ライリー・ノース 復讐の女神』ですう。



◆震えて眠れ!ちびって起きろ!母ちゃん袋の緒は切れた!◆

 ジェニファー・ガーナーの映画って久々に観たな。
今やセレブ女優のガーナーは、盲目ゆえに感覚を大事にするダークヒーローを描いたアメコミ映画『デアデビル』(03年) のエレクトラ役で注目を集めた。
エキストラ役ではないので間違わないように。
その2年後にスピンオフ作品『エキストラ』…あ間違えた『エレクトラ』(05年) で主演を務め、同年にデアデビル役のベン・アフレックと感覚が合い結婚(恋は盲目)。2018年には「やっぱり感覚はバラバラ」と言ってのけ離婚を成立させている。
『エレクトラ』でハード雅アクションを披露して以降は『JUNO/ジュノ』(07年)『天国からの奇跡』(12年) などで心やさしい母親ばっかり演じるマミー専門女優となるが、そんなガーナーが自身のルーツであるハード雅アクションにカムバック!

ハード雅アクション…ハードでありながら雅やかにアクションすること。アンジェリーナ・ジョリーやミラ・ジョヴォヴィッチが切り拓いたと噂される。

ジェニファー・ガーナーさん。

 そこで本作『ライリー・ノース』
ガーナーが演じるのは、幼い娘の誕生日を祝うためにパートを早引きした母親!
またマミー役やん。
映画冒頭、ガーナーは町内会を欠席したことでタカビーなママ友から嫌味を浴びせられる。そのうえ格差まで見せつけられたのだ!
そして娘の誕生日。バースデイ・パーティーに招待したお友達は、なんと例のママ友が開いたクリスマスパーティーに根こそぎ奪われてしまい、結局家族3人だけで祝うはめに。
招待客ゼロの身内パーティー…。
だが、愛する娘の誕生日を台無しにはすまいと「ヤなことは忘れて遊びまくっちゃお」と挽回を図ったガーナー、大袈裟におどけてみせ、娘と夫の手を引き夜の遊園地に繰り出した。
ナイスマム。
ナイスマムすぎるよ。むちゃむちゃええ母さんやないか。大好きや。

また、彼女がナイスマムなら、夫もナイスダディと言える。
この夫、決して裕福とはいえない暮らしに甘んじていた折、ある知人から麻薬カルテルの金を横領しようという邪悪なプランを持ちかけられたが、これをスッパリと断ったのだ。
「やんない!」
英断。
大抵は「家族に楽させるためー!」とかなんとか言って一丁噛みして結局失敗するのよね。
ところが、その知人がカルテルに殺されてしまう。元締めのフアン・パブロ・ラバは、ガーナーの夫も関与したとして一族郎党の抹殺を部下に命じた。関与してないのに。
そして悲劇は起きた。ガーナーたちが遊園地のプリクラで変顔グランプリを開催した直後、カルテルの車に襲撃され、夫と娘がありえないくらいマシンガンを浴びてハチの巣と化します。 
薄幸家族。
見てられへん…。
俺こういうシーンあかんわ。家族3人、慎ましく暮らして楽しいやってたのに…とばっちりでメチャメチャ撃たれて…。

変顔グランプリで雌雄を決したあとめちゃめちゃ撃たれた。

ガーナー自身も1発受けて生死の境を彷徨った。
夫のみならず娘まで失う絶望沙汰。まさか誕生日が命日になるとは。しかも側杖を食った形で。
後日。ガーナーの証言により実行犯3名を法廷に引きずり出すも、弁護士はおろか判事にまでカルテルの息が掛かっており、犯人たちは無罪放免で「ひゃっほー」と騒いだ。
激怒したガーナーは取り押さえられ、リアルクレイジーとして精神病院に送られそうになったが、搬送中に刑事をしばいて逃走。
そして5年後―…。
殺人課の刑事ジョン・ギャラガー・Jrは、かつての実行犯3名の死体を発見し「ひえ」と戦慄した。
「まさか、5年前のアノ事件の…母親?」

いま始まる、地獄の復讐劇!

母を怒らせたドサンピンども!
死への片道切符を用意しろ!!

もう許さん。母ちゃん袋の緒は切れた。

◆知性がモレル! ピエール・モレル最新作!◆

 不埒な気持ちで観始めたのだが、思いのほかタフなビジランテ映画に仕上がっていた。アメコミ繋がりで言えば『パニッシャー』(04年) を彷彿させる中身だよな。
ジェニファー・ガーナーの恰幅のよさと佇まいなんてさながら女ランボーのようで、近年のシャーリーズ・セロンみたいに“戦う女性像”の飾り気はなし。フェミ文脈もなし。ただブチ切れてる母ちゃんを衒いなく演じている。
監督は『アルティメット』(04年)『96時間』(08年)『パリより愛をこめて』(10年) といったIQ10くらいで作れる映画を多数発表しているピエール・モレル。フランス映画の文化水準の低下に貢献しているドアホだ。
モレルの映画では予想外の出来事が起きない。裁かれるべき悪役が順当に裁かれていくカタルシスをマクドナルドのように供給し続けるだけの内容であり、「絶対に裏切らなさそうなキャラが実は裏切り者だった」みたいな想定外の展開さえ想定内。客がスクリーンに向かってポップコーンを投げつけるようなバカ映画を志向しているのだ。

まあ、戦略的にバカを演じているのはよく分かる。
こいつの映画は、フランス人でありながら70年代ハリウッドに憧れた落ちこぼれシネマボーイ特有のテコでも動かぬ映画愛に貫かれており、とりわけ『狼よさらば』(74年)『タクシードライバー』(76年)『ローリング・サンダー』(77年) あたりの直撃世代なので、弥が上にもビジランテものに傾注、熱中、恋愛中。とりわけ『ロサンゼルス』(82年) の影響は大きいだろう『狼よさらば』の続編ね)
しかもなかなかに賢く、小器用で、たとえばリュック・ベッソンごときが20年かけても撮れないロングテイクをピャッと撮ったりする。
要するにウエルメードなバカ映画の乱造者なのである。よろしい。嫌いじゃない。

ジョディ・フォスターの『ブレイブ ワン』(07年) をアクション大盛りにした感じ。

 おもしろいのは、ごく普通の母親が殺人マシンになるまでのプロセスが物の見事にすっ飛ばされてることだ。
おそらく家族を殺されてから復讐計画を実行するまでの5年間で強くなったのだろうが、その間にガーナーがどのような訓練を経て銃器の扱い、格闘技の会得、兵器の知識を得たのかは全き謎。彼女の過去を洗っていたFBI捜査官アニー・イロンゼは、数年前に南米の格闘技大会でフルボッコにされてるガーナーのYouTube映像を発見して「どうやら世界中を渡り歩いて強くなってったっぽい」と結論したが、まあその程度の雑な説明である。
「どうやら世界中を渡り歩いて強くなってったっぽい」で片づけた…!
こんな剛腕テリングを成立せしめたのは時系列の扱い方。ここにちょっとしたトリックがある。
この物語は家族を殺されたあとに5年後の彼女を描くのではなく、すでに殺人マシンと化した現在時制に始まり、その5年前をフラッシュバックで処理する…という手法を採っている。つまり、強くなったプロセスを過去化することでその理由をウヤムヤにしてるわけ。
あまねく映像メディアは時間の先に向かって進んでゆくので、“これから起きること”は描かねばならないが“すでに起きたこと”を描く責任はない。もちろん描いた方が丁寧だし心証もいいが、原理的にその義務は負っていない。かようにモレルは映画の抜け道を多用する。

「やらなくてもいいけど、やった方が喜ばれるよ」という仕事は全部やらないでいくスタイル。

悪く言やぁ横着。でも説明、長尺、肥大化を美徳とする昨今の映画シーンにあって、この「語らなイズム」は実にありがたい。
だいたい理由を求めすぎなんだよなァァァァ最近の奴らはよォ~~~~。
「ただの主婦がたった5年で強くなれんの、なんで。ありえないじゃん!」とか一丁前に疑問を呈しやがってよォ~。こんな映画に「なんで」もヘチマもねえだろ。
強いて言やぁ映画だからだよ!
黙って画面見つめとけ。

敵役はフレディ・マーキュリーもどき。

◆復讐の余熱すごい◆

 すこぶる愉快な作品といえる~。
私自身、「復讐しても死んだ者は生き返らない」みたいな物言いを蛇蝎のごとく嫌う私刑肯定派人間なので、ビジランテ映画には目がないのです。『わらの犬』(71年)『ダーティハリー』(71年) は言うに及ばず、やはり至高はリチャード・ハリスの『死の追跡』(73年) な。
復讐が無意味な行為だという人間は温室で育ったのだろうか。それとも幼少期に絵本を読み過ぎたのだろうか。復讐を果たすことで前に進める人間だっているのだ。「きっと死んだ者は復讐なんて望んでないよ」なんて歯の浮くようなセリフが巷には溢れてるが、うるせえ。なんでオマエに死者の気持ちが分かるんだよ。
復讐とは、奪われた側の人間が怨嗟の感情に折り合いをつけるための儀式なんじゃい。
死んだ側が復讐を望むか望まないかなんて二の次だ。それは後で考える。
まずはテメェを納得させるためにやり返す。
奪い返して、等価交換に持っていく!!!


その点、ガーナーは肝が据わってる。
実行犯だけでなくカルテルそのものを壊滅。なんならカルテルに与した判事まで爆殺していく!
さらにはバスの中で飲んだくれの父親を介抱する少年と知り合ったことで、その父親に銃を突きつけ「クリスマスに息子を思いきり楽しませてあげて。約束を破ったらあなたを殺す。あと酒飲むなカス」と約束させる。そのうえ酒屋の主人をも「あの男に酒を売らないで。もし売ったら店ごと吹っ飛ばす」と脅す。そしてタカビーなママ友の豪邸に押し入って鼻をへし折るのだ。

カルテルへの復讐の余熱でムカつくもの片っ端からしばいてる…!

ママ友なんて一番この件に関係ないのに…。寄り道がてら鼻折られてるゥ。

やりすぎ制裁。だが、バカにつける薬はこのくらいが丁度いい。

脳筋ストーリーながらも豊富なキャラクターに、ギミック、ロケーションと映画の鮮度はよく、ダラッと眺めてるだけでも楽しめる。彼女が庭のように駆け回るロサンゼルスの触覚性もいい。トニー・スコットやアントワーン・フークアを観てる時のような安心感がありました。ぜひイーライ・ロスの『デス・ウィッシュ』(18年) と合わせてご覧になられたい。
僕は次の映画を観てくるから、今日はおしまい。じゃあね。

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