シネマ一刀両断

面白い映画は手放しに褒めちぎり、くだらない映画はメタメタにけなす! 歯に衣着せぬハートフル本音映画評!

ブレット・トレイン

ムチャポコな誇張にも耐えうるポップカルチャー大国、NIPPON。あはん。参ったか。

2022年。デヴィッド・リーチ監督。ブラッド・ピット、ジョーイ・キング、アーロン・テイラー=ジョンソン。

東京発⇒京都行の新幹線に乗ったブラピが列車内でスマートトイレの機能をとことん実感するというトイレットな中身。


あいあいぱぱにゅん。おけおkやろやろ。
12月になったけど別に寒くないな。
周囲の人は寒い寒いゆうて「うっひょー」とか言ってるけど、ナチュラルボーン京都ボーンの俺は、生まれたときから「京の底冷え」に晒されながら生きてきたので、ナチュラルボーン他府県ボーンの奴らが「うっひょー。京都の冬さむー」つってはしゃいでるのが不思議で仕方ない。
うっひょーとか言うな。
アホみたいに着込んで「さむー」ゆうて。コンビニでホットコーヒー買うて。ずっと握ってたら、それはそれで「熱っつー」ゆうて。
どないせえゆうね。
もうね、度し難いのよ。夏になったら暑い暑い言うわ、冬がきたら寒い寒い言うわ…。
そういうもんじゃん。
ある程度そういうもんなんだから、いちいち暑いだの寒いだの…逐一感想のべんなよ。うるせえな。季節なんかに翻弄されて。そら俺かてね、「さむー」ゆうたら寒さが和らぐんだったら幾らでも「さむー!」言うけど、和らがんやん。
ヤワラガンヤン。
だから、もう知らねーよ。極寒だろうが猛暑だろうが、勝手にやってろよ。俺のあずかり知る範疇に無え。
「ハイハイどうでもいいどうでもいいありがとありがと興味ない興味ないどいてどいて風邪? 熱中症? 知らん知らん関係ない感覚ない関係ない感覚ない四季なんてねえオレにとっては二季そう春と秋しかねえボケどけカス夏と冬コラ割ったろかアースええおいマントルから手ぇ突っ込んで奥歯ガタガタいわせたろかいいいいいいイイイfcv地球うううう魏bhヴぃぃ」
ゆうてね、1年やってますよ。
「ぶいいいい!」ゆうてな。
どや。お陰さんでかれこれ20年以上、体調不良なし。最後に風邪ひいたのはいつだらう。中学のマラソン大会が嫌すぎて、アッホみたいに寒い2月の夜更け、わざと冷水シャワーで風邪ひいて翌日の大会を休もうと画策したものの、翌朝起きたら元気闊達。「なんでやのおおおお」ゆうて。泣きながらマラソンコース走ったわ。「頑強すぎる我が肉体を悔やむときいいいい」言いながら。
ほんでゴールして。
国語の先生から飴ちゃんもろて。
「こない走って飴ちゃん1個お!」ゆうて。
ブリーン! もんどり打って。
帰りの電車で、同級生のサミくんがiPodで音楽聴いてて。
「その機械なにいいいい」ゆうて。
当時はまだMDやったからな。
iPodなんて見たことなかった。
「サミくんそれなにー!!!」ゆうて。
「あいぽっど~」って、サミくんゆうて。
説明受けて。
説明受けたのに理解できず、パニックなって「嘘つけええ!」ゆうて。
わけわからんまま家帰って飴ちゃん舐めて。

なんじゃこの話。
もうええわい。そんなわけで本日は『ブレット・トレイン』です。
どうぞねー。



ブラッド・ピットレイン出発進行

 主演最新作『ブレット・トレイン』のジャパンプレミアで京都を訪れていたブラッド・ピットは、人生初の厄除けをしてもらいポロポロ泣いた。それがニュースになってた。
どんなニュースやねん。
それを知って何を思えと私にいうの。「ブラピって意外と泣き虫やったん」と思えばジャーナリズムが果たされるのか? ワケのわからん!
そんなこんなで9月某日、なんと京都に来ていたブラピにばったり遭遇。日頃のハードロック鑑賞で鍛えた流暢な英語で「プリーズ、ギブミー、サイン、クレクレ!」とねだった私は、見事ブラピのサインをゲットしました。
嘘や思とんか?
また俺が嘘ついてる思とんか!?
これが証拠じゃあ。



さて、直筆サインでみんなを黙らせたところで『ブレット・トレイン』
ブレットだかバレットだが…タイトルが覚えづらいが、まあ『ブラッド・ピットレイン』と覚えておけば間違いなかろう。
ブラピ演じる不運な殺し屋が、東京発⇒京都行の東海道新幹線でブリーフケースを盗んで次の駅で降りるという簡単な仕事を請け負うも、見覚えのない9人の殺し屋に列車内で次々と命を狙われ、下車するタイミングもことごとく逃すうち、列車は大犯罪組織のボスが待ち構える終着点KYOTOに向かって加速していく…。
要は、殺し屋同士がただただ新幹線の中でしばき合ってるだけのドアホ映画なのだが、パズル作家として知られる伊坂幸太郎の小説が原作とのことで一丁前にコンゲームやカラクリ要素が満載。
9人の殺し屋が同じ列車に乗り合わせたのは単なる偶然か、それとも仕組まれた罠か?
いま始まる、殺し屋たちの東京2020! 「ドモアリガト」がこだまするノンストップ・和ンダフル新幹線アクション、出発進行!
謎を解く鍵は『きかんしゃトーマス』!

これなにー。
詳しくは後述するが、めっぽうカワイイ映画でした。



◆どこが日本やねん◆

 監督は『ジョン・ウィック』(14年) 『デッドプール2』(18年) で頭角を現したスタントマン出身のデヴィッド・リーチ。スタントコーディネーターとしての技斗の組み立てには定評があり、本作でも列車内という閉鎖空間を活用した見所満載のハードアクションをお送りする。
特に、ブラピがマクガフィンとしてのブリーフケースを武器として気にいり使い続けちゃう…というムチャポコさ。面白いけど呆れるというか、呆れながらも面白いというか。
『ジョン・ウィック』でおなじみの銃夫(ガンフー)ならぬブリーフケー夫なんか披露しちゃって。しかも後生大事に両腕に抱えて、一度も奪取されないの。
あの…一応マクガフィンなんだけど。
意味わかってる?っていう。
やなぎやさんぐらい勘違いしてる…。

ブリーフケースでブリーフケー夫を披露。

ちなみに本作はブラピの単独主演作ではなく、タランティーノの124番煎じみたいな群像劇になっている。
むしろブラピの存在感は物語が進むほどに希薄化してゆく。後半に至ってはスマートトイレの機能を実感してるだけだしな。洗浄便座の水を浴びて「ちべたい」と驚いたり、温風乾燥機能を顔で感じながら「ぬく~い」と感想したりなど。
そんなブラピをよそにインパクトを残したのは、コードネーム「蜜柑」を演じたアーロン・テイラー=ジョンソン&『きかんしゃトーマス』マニアの相棒ブライアン・タイリー・ヘンリー演じる「檸檬」の柑橘系コンビ。ヘタしたら“薄い本”ができそうなほど熱いブロマンスぶり。間違いなく本作で一番人気の高いキャラクターだろうね。
次に、巧みなウソで車内の男たちを争わせるサークルクラッシャー娘ジョーイ・キング。むゥちむちでした。
さらにケイン・コスギの124番煎じみたいなアンドリュー・小路。一応物語の中心人物だが、周囲のキャラクターに喰われに喰われ…南無三。
そして和服に日本刀という意外性−124点の真田広之。狂ったように新幹線の座席を斬ることに成功。


左上から時計回りに……うーん、まだるっこ!

その他、『ピーター・ジャクソンとサロンパスの神々』(10年) みたいなタイトルの映画で一躍有名になり「童顔ラーマン」と筆者に渾名されたローガン・ラーマン『デッドプール2』のドミノ役で跳ねたザジー・ビーツ、何かと悪役を押し付けられがちな顔面芝刈り機マイケル・シャノンなどが次々列車に乗り込んでくるが、やはり外せないのはブラピたちが乗った新幹線のマスコットキャラクター…
モモもん!

キモチワルッ。
五輪マスコットのソメイティにヒントを得ての車輪マスコットのモモもん。
なにこの子。す~ごいソメイティ崩れ…。
そのうえ大した理由もなくブラピにボコられるからね。カワイソッ。
彼女だけが、どうにか列車を降りようとするも毎度邪魔が入って降りんピックしてしまう不運なブラピを静かに見つめていた。そんなブラピに挨拶しようと近づいただけなのに、急に顔面殴られて。
カワイソッ。
顔、むっちゃむちゃヘコんで。

少々ネタバレになるが、上記のキャスト以外にもさまざまな役者が顔を覗かせている。
サンドラ・ブロックチャニング・テイタム『ザ・ロストシティ』(22年。未見) にブラピが友情出演した返礼として出演を快諾。ライアン・レイノルズ『デッドプール2』でブラピが2秒だけカメオ出演してくれたので負けじと2秒出演返しで恩をチャラにした。
なにこのお歳暮の贈り合い。
ハリウッドスター同士の付き合いに我ら平民を巻き込むな!と言いたいところだが、サンディ姐さんの出演はどうしたって上がってしまうよな。
『現代女優十選』第4位の実績をもつ)

お歳暮出演したサンディ。

この章のラストは音楽。音楽についてビャッと語っちゃおうかしらね。
劇中歌にレア・アースシャギー・オーティスなど、なかなか渋いところを突いた選曲が火をふくが、どうも調子っ外れでノリづらい曲ばかり。
他方、物語後半で畳みかけられる日本歌謡曲のミスマッチ感が強烈な化学反応を生み、良くも悪くも“トンデモ日本”がウリの本作の異形性を際立たせていた。
先鋒のカルメン・マキ「時には母のない子のように」で列車内をムード歌謡一色に染めあげると、『スクール☆ウォーズ』でおなじみの麻倉未稀「ヒーロー Holding Out For A Hero」がスペクタクル列車断裂シーンを盛り上げる。この曲はボニー・タイラーの「Holding Out For A Hero」を日本語カバーしたものとして有名だが、まさか本場アメリカでまがい物「ヒーロー」が掛かるなんて誰が予想したかい? ワケわからんことしてる…。むざむざ日本でカリフォルニアロール食うぐらいワケわからん。
そして間髪入れず坂本九の「SUKIYAKI」である。
これなにィ~?
上を向いて歩いてる場合でも、涙がこぼれないようにしてる場合でもない緊急事態のシーンで「上を向いて歩こう(英題:SUKIYAKI)」。
坂本九どころかダメもと10で暴走列車を制御してる緊急時に「上を向いて歩こう」。
前見て進めよ。
見る者をYAKIMOKIさせる、見事な「SUKIYAKI」を奏でとったわ。
ちっとも分からんことしてる。


ここは麻倉未稀の「ヒーロー」ではなく、あえて原曲のボニー・タイラー「Holding Out For A Hero」を楽しんで頂きたく。

◆なんぼ誇張されても120倍にして跳ね返すねん◆

 本作の見所は、泥臭いアクションとコンゲームの狭間でちらちらと視界に入る素晴らしくデタラメな日本描写である。
『ブレードランナー』(82年) から何ひとつ進歩していない、ぎらぎらネオンのサイバーパンクなトンデモ日本。真田広之が乗車する米原駅には朝霧という名のスモークがヤケクソみたいに焚かれ、ヤクザは揃って鬼のお面。関西人であれば「間もなく終点、京都です」とアナウンスしてるのに窓の外に富士山そびえてて「どこ走っとんねん」と脊髄反射でツッコむだろうし、クライマックスで京都駅に着けば「こっ…どこが京都やねん」と拳を振り上げるだろう。

ハリウッド映画特有の「日本じゃないけど日本ってことにした日本感」のつるべ打ち。

でも、だからこそイカすのかも。
だいたい“正確な日本描写”なんて日本人以外誰も求めてないし、仮に正確を期したところで日本人すら「我が国って意外と退屈だなー」と感じるだけ。怪獣映画にビルが必要なように、エンターテイメントには“壊されるべきもの”が必要なのだ。
とはいえ本作、『キル・ビル』(03年) のころに比べれば目くじら立てて怒ってる日本人がほとんどおらず、成長したのやら馴致したのやら…、とにかくハリウッド映画におけるトンデモ日本描写は商業用に誇張したイメージ戦略のひとつとして理解できてる人民は着実に増えてるわけで、むしろ日本人なら「いかなムチャポコな誇張にも耐えうるポップカルチャー大国、あはん。参ったか」と得意げにふんぞり返っていればよいのです。
どんなに誇張されても120倍にして跳ね返す。
上等だコラ。それが日本のポップカルチャーの懐の深さであり、そこに全力で甘えてくれたからこそ『ブレット・トレイン』はカワイイのである。
ちなみに本作の準主役は漢字。
漢字を“クールな被写体”としてタイポグラフィに織り込んだ視覚効果が炸裂しているので、そこだけは見逃さずにおきたい。
あと蜜柑と檸檬のブロマンスな。


蜜柑と檸檬。

ただ一点くやまれるのは、コロナの影響により日本ロケがおこなえず全部スタジオでどうにかしたという根本的な大問題だろうか。
そのせいで東京駅も京都駅もグリーンバック丸出しのオール背景合成。全部ハリウッドのスタジオでどうにかした。
フツー製作延期だろ。
なんでやってん、スタジオで。
「しょうがないし合成でやろかな」ゆうてスタジオ撮影で手ぇ打ったんか? そこで手を打っちゃいけない映画を撮るっていう大会してんのに?
そのくせジャパンプレミアの時期になって新幹線でノコノコ京都に来やがって。
撮影で来いよ。
絶対日本でロケしなきゃいけない映画なのに全編スタジオで撮っちゃって、完成後に今さらホンモノの新幹線乗ってノコノコ来日してピースして「ありがと~」ゆうて。「ブラピやよ~」ゆうて。ほんで厄除けしてもろて。ポロポロ泣いて。
どういうことやねんそれは。
「撮影時にしなきゃいけないこと」を、ことごとく「撮影後にする」という先後関係の奇妙なねじれ起こっとる。
珍しいことすな。
ほんまにワケわからんねん、この映画。本国やのに麻倉未稀の「ヒーロー」使ったり。「みんなで1発ずつ催涙ガス撃った?」ってぐらい米原駅にすごい量のスモーク焚かれてたり…。
ブラピは高性能トイレでずっと遊んでるッ!
でもサインありがと~。

 

~楽しいおまけ~
『ブレット・トレイン』に触発されてお絵描きした『シネット・一刀レイン』
主演は私、フカット・チョット

~スペシャルサンクス~

やなぎやさん…情緒オウンゴール。話が通じない。
Gさん…適当なコメントをよくする。話が通じない。
KONMA08さん…絵文字依存。話が通じない。
とんぬらさん…大人なのにwを使う。話が通じない。
ツルコプさん…クソリプ常習犯。話が通じない。
ワキリントさん…アメキチ。話が通じない。
ikukoさん…猫キチ。話が通じない。
渋谷あきこさん…リツイートばっかりで発言しない。
れんげさん…人の悪口をよく言う。話が通じない。

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