シネマ一刀両断

面白い映画は手放しに褒めちぎり、くだらない映画はメタメタにけなす! 歯に衣着せぬハートフル本音映画評!

355

ダイアンの時代クルーガー! ダイアンに狂ーガーした全クルーガニスト必見の作 ~黒のパーカーでゆるふわパーマでええええええええ~

2022年。サイモン・キンバーグ監督。ジェシカ・チャステイン、ルピタ・ニョンゴ、ダイアン・クルーガー、ペネロペ・クルス、ファン・ビンビン。

世界各国の女性エージェントが危険なデバイスを追う中身。


あちょす、あとうsd。
おっけ。
昔っからそうだけど、人と雑談ができないんだよなー。
あえてお互いに踏み込まない、とりとめのない話というか。「腹を割った語り合い」とか「遠慮のいらない議論」なら好きだけど、腹も割らない遠慮だらけの雑談とか世間話がまったくできないの。
「昨日の雨すごかったよねえ?」と言われても「すごかったねえ」しか返せないし、「WBC見ました?」と言われても「見ない」としか言いようがないし、大して映画を見てない人から「そういえば最近あの映画見ましたよ!」と言われても、まあ気を遣って映画の話題を振ってくれてるんだろうけど「おまえと映画のハナシするつもりなんてねえよ」としか思わない現場からは以上です。
つい先月もさぁ、年下の知人に「こないだ彼女と喧嘩して。かくかくしかじかで。どう思います?」と聞かれたとき、「へえ。大変」と言ったあと、やばい、なにか言葉を返した方がいいんだろうなとは思いつつも、いかんせんオマエに興味なさすぎて何も意見が出てこない…と思い、結果的に「まあ、そういうもんだよ」とか意味ねえこと言っちゃった。
どういうもんだよ?
我が悪癖ですよ。自己分析するに、たぶん最初っから「この人とは話せる」とか「この人と話してもムダ」って分けちゃってんだろうなぁ、人を。第一印象で。で、ムダと判断した人とはハナから会話することを放棄してるっていうか、諦めてんだろうな。失礼な話だけど。
だから美容師との会話も、てんでダメですよ。

美容「休みの日とか何されてます?」
おれ「映画見てます」
美容「映画いいっすよねー!」
おれ(思ってねえだろ)
美容「僕も映画好きで、マーベルとか見てますよ!」
おれ「なるほど」
美容「最近なに見ました!?」
おれ「ジョン・ヒューストンの『キー・ラーゴ』(48年) を見返しました」
美容「ジョ…キーラーゴ? どういう映画なんですか?」
おれ「あ、すいません。耳の上は少し短めに切ってもらえますか」
美容「え? あ、わかりました。耳が出る感じの方がいいですかね?」
おれ「耳が大きいので、ちょっと伸びるとすぐ耳に掛かっちゃうんですよ。なので結構短めでもいいですよ」
美容「わかりました」
おれ「…ミミ・ロジャース
美容「えっ?」
おれ「耳」
美容「あぁ。耳…」

はじめて切ってもらう人とは、大体こんな感じになる。
相手には申し訳ないのだけど、もう初手の「映画いいっすよねー!」の言い方ですべてを察したので、あとは全部受け流して「あ、この客。あまり話しかけない方がいいか…」と思ってもらえるような感じにする。向こうもサービストークのプロだから、そのへんの不文律は弁えてる。
でもネット上では多弁なんだよねえ。あと気が置けない長年の友人。バカみたいにべらべら喋っちゃう。
もう0と100がすごいのん!!!

次回!突如姿を現した陸獣・スゴイノンの死の咆哮に気圧された第十四機兵防衛団・隊長ふかづめは、禁忌を破って海獣・ズルイノンを解き放つ。「すごい」と「ずるい」の頂上決戦を見届けろ! 一番すごくてずるいヤツは誰だ!?

そんなわけで本日は『355』です。
画像乱舞です。


◆キャストパワーゴリラ! 超豪華キャストによる筋肉映画の祭典がいま始まる◆

 現在2022年の12月28日。年の瀬ってやつだ。もう年内は評を書かず、土の中のやさしいミミズのように過ごそうと思っていたが、思いのほか『355』がおもしろくて身体が火照っちまったんで大慌てでパソコンに向かって評を書いてる。
なぜ慌ててるのかというと、今回はU-NEXTの有料レンタルで視聴したからだ。
U-NEXTの有料コンテンツの視聴期間は48時間。そして本作はスパイアクション映画。アクション映画ってカット数が非常に多いから(情報量と情報速度がすごい)、たまに特定のシーンを見返さないと是非を判断できない場合があるんだよな~~~~。
つまり、なるべく正確な批評を書くべく部分的に見返そうと思っても48時間経つと「はい時間切れ~。終~了~。見たかったらもう一回ポイント払え、シャバ僧」と言われてしまうので、いわば今現在、わたしの体には時限爆弾が巻かれている、という見方ができるわけだ。
「48時間以内に評を書き上げなければU-NEXTポイントが吹き飛ぶかもしれませんよ」
うわ~、タイムリミット・サスペンスゥ。


ハイ。というわけで『365』『355』か?
キャスト紹介から参りましょう。

ジェシカ・チャステイン

アメリカが生んだ赤毛の姐御。
2010年代に最も躍進した女優ではなかろうか。各賞席巻の竜巻映画『テイク・シェルター』(11年) 、テレンス・マリックの寝ボケまなこ夢日記『ツリー・オブ・ライフ』(11年) 、ノーラン坊のSF厨歓喜大作『インターステラー』(14年) 、ギレルモ・デル・トロの性癖がバレルモ・出ル・トロ『クリムゾン・ピーク』(15年) 、リドスコ爺さんの火星菜園じゃがいも栽培記『オデッセイ』(15年) など、錚々たる作品で名実ともに大女優街道を突っ走ってきたが、やはり特筆すべきはビンラディン殺害計画の顛末を描いた『ゼロ・ダーク・サーティ』(12年) がタイムリー過ぎたこと。
私のお気に入りは、ヒットこそしなかったが『女神の見えざる手』(16年)。あと『モリーズ・ゲーム』(17年) もよかったな。おっぱい盛リーズ・ゲーム。
本作ではアメリカのCIA所属のエージェントを熱演した。


ルピタ・ニョンゴ

ケニアとメキシコにルーツを持つ、誇り高きルオ族の末裔。
『それでも夜は明ける』(13年) で女優としての夜明けを迎えてからというもの、オバマ政権やワインスタイン失脚後の現代ハリウッドが生んだライジング・ニューカマーとして『スター・ウォーズ』シークエル・トリロジー、『ブラックパンサー』(18年) シリーズ、『アス』(19年) などの超話題作に引っ張りンゴ。私はニョンゴ。
とにかく芝居がおもしろい。見たことのない独自解釈によるイギリス演劇を得意とする女優なので、できれば“お芝居する映画”に出てほしいと願ってます。
本作ではイギリスのMI6に所属するエージェントを爆演した。

ダイアン・クルーガー

ドイツが生んだ歩くバウムクーヘン。
彼女はハリウッド・バビロンの犠牲者だと思う。たしかな知性と想像力を持ちながら、なまじ『トロイ』(04年)『ナショナル・トレジャー』(04年) といった産業廃棄物大作で名前が知れ渡ったことで「添え物美女」として便利使いされてきた過去がある。栄光の代償にずいぶんな割を食った。『イングロリアス・バスターズ』(09年) はよかったけどね。
現にその後はハリウッドを離れ、ドイツ、フランス、イギリス、ハンガリーなど欧州圏の映画でキャリアを築き、ついに近年『女は二度決断する』(17年) で本来の意味での「代表作」を獲得した、ある意味での遅咲き女優。
時は満ちた。ダイアン・クルーガー46歳。怒涛の追い上げをみせる“逆襲の人生後半戦”が今開幕。
ダイアンの時代クルーガー!!!
本作ではドイツのBND所属のエージェントを怪演。

ペネロペ・クルス

スペインが生んだエキゾチック・トルティージャ。
そりゃあ『ハモンハモン』(92年) でしょ。
18年後に結ばれることになる未来の夫、ハビエル・バルデムと共演したデビュー作『ハモンハモン』では早くもペネロペ・クルスの“クルス”を披露。
その後、他作品でもめったやたらにクルスを露出していたところ、スペインの名匠ペドロ・アルモドバルに「十年に一度の逸材来ルス!」と絶賛され『オール・アバウト・マイ・マザー』(98年) に起用。『ボルベール〈帰郷〉』(06年) では世界中の女優賞を荒らし、新生クルスとして一皮むけた。
スペイン発の微睡みサスペンス『オープン・ユア・アイズ』(97年) で話題をさらった4年後に、同作のハリウッドリメイク版『バニラ・スカイ』(01年) にも同じ役で出演しトム・クルーズと初共演。しれっと交際にも至っている。
本作ではコロンビアのDNIに所属するエージェントを妖演。

ファン・ビンビン

中国が生んだビンビン印の電波塔!
わけのわからん中国映画で下積みを経たあと『墨攻』(06年) で広く知られ、余勢を駆って2005年に歌手デビュー。1stアルバム『剛剛開始』というふしぎなレコードをリリース。全11曲。重量160g。表題曲『剛剛開始』はアイドル系ポップソングかと思いきや、意外とかったるいバラードだったという裏ぎり。
近年ではハリウッド進出を果たし『アイアンマン3』(13年) 『X-MEN:フューチャー&パスト』(14年) に抜擢され押しも押されぬ国際派女優になりかけていたが、2018年に巨額脱税が露呈して一時消息不明になるなど多方面でも活躍。追徴課税や罰金などで約146億円を支払い、大胆にも拗ねてみせた。
本作では中国のMINISTRYに所属するエージェントをビン演。


そんな5人の女性エージェントが、テクノロジーデバイスの悪用を企む国際テロ組織に立ち向かうべくコードネーム「355」と呼ばれるチームを結成!
いま始まる! 必殺仕事ネキによる世界を股にかけたお仕置きムービーの最先端!
先に言っておく。
超豪華キャストによる筋肉映画やで。
なお、同じCIAでジェシカ・チャステインの相棒を務める男を『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』(14年) のバッキー役で知られるセバスチャン・スタンが演じた。

短髪バッキー、乾杯ジェシカ。

◆デバイスを追え! 仲間を増やしながら世界を股にかける諜報員RPG◆

 演出とプロットはゴミでした。
演出に関してはそもそも“ない”し、プロットもプロットで「観客の予想を裏切ってやろう」の無理攻め馬鹿攻めで逆張り大会してるだけ。信頼してた味方が敵だった、みたいな(そこ逆張りすると辻褄合わなくなるんだけど…のオンパレード)。
とりわけ一般的なスパイ映画って「スタイリッシュな演出」と「アッと驚くプロット」が求められがちなので、それでいえばあっけらかんとした0点よ。
ただ、演出放棄するぐらいならプロットも潔く放棄してほしかったんだよな~。
だって考えてみ。本作のコンセプトが「女だらけのオールスター筋肉映画」である以上、“一般的なスパイ映画”に求められてる要素なんてハナから免除されてるわけじゃない。誰も望んでないだろうし。それなのに“一般的なスパイ映画”に引っ張られて「アッと驚くプロット」をやろうとしたのがそもそもの間違い。
コンセプトを決めることって意外と難しくて、みんな「コンセプトに沿うためにAをやろう。Bもやろう」ってことばかり考えがちだけど、いちばん大事なのは「このコンセプトで行くならCはいらない」って孤立点を消していくことなの。そこを押さえていれば本作は『エクスペンダブルズ』(10年) 超えだったと思う。

左から順にビンビン、ニョンニョン、ティンティン。

ただ、キャストパワーと漫画力だけは特出している。この一点においてだけは他の追随をめったに許さないし、少なくとも年の瀬のオレの身体を火照らせるには十分な熱を蓄えていた。
オールスター映画を謳っていながら、観る者が内心「オマエだけ誰? 分不相応だろ」と思ってしまうような“スターとは程遠い雑魚キャスト”が紛れ込んでいるのは『荒野の七人』(60年) から現在に至るまでの通例だが、本作は正真正銘のオールスター。よっぽど映画に無関心な奴でもなければ、横並びのスチールに「オマエだけ誰?」を抱くこともあるまい。そして後述するが、5人それぞれに“燃え”と“萌え”がある。これがキャストパワー。
そんな5人が「いっせーのーで」で登場するわけではなく、物語の流れに沿って、わりと丁寧に1人ずつ仲間に加わっていく…というRPG型のパーティ構成。これが漫画力。
ゲーム、アニメ、マンガといった和製サブカルコンテンツとの親和性がやけに高い…という意味では、もはや日本映画なのである。

『355』はアメリカ・イギリス合作による日本映画。


物語はわりに単純。
麻薬カルテルが「世界中の電子機器を自由にハッキングできるデバイス」を開発して国際テロ組織に売りつけようとしたが、大事な取引きの最中に踏み込んできたコロンビア諜報機関の特殊部隊によってカルテルは無事一掃。だが、カルテルの親玉を殺した特殊部隊の一員(通称コロンビー)がデバイスをネコババしてパリに逃げた。
この事件に世界中の情報機関がザワついた。誰かがこのデバイスを悪用すれば飛行機の墜落も、ビルの爆破も、橋の封鎖も、電波ジャックも、ことによると核ミサイルの投下だって、なんだってボタン一つで叶えられるんだもん。
ちゅーわけで、CIAはジェシカ・チャステインと相棒のバッキーをパリに派遣し、ドイツのBNDはダイアン・クルーガーにデバイスの回収任務を命じた。
だが、デバイスが入っているであろうコロンビーのバッグをパリの店先から虎視眈々と狙っていたジェシカは、先にバッグを盗んで逃走したダイアンを第三の敵だと誤解。どうにかジェシカを出しぬいて逃げ切ったダイアンだったが、バッグの中にデバイスはなかった。
骨折りダイアン、くたびれクルーガー。


逃がしてクレーガー。

その後、いろいろあって相棒バッキーを失ったジェシカは、過去にチームを組んでいたMI6のルピタ・ニョンゴにラブコールを贈りチーム再結成。最初こそ渋っていたルピタも、最終的には「ニョンゴ~」と快諾した。
ジェシカ「ありがと」

一方、デバイスを死守したコロンビーはと言うと、コロンビアDNIから派遣されたセラピストのペネロペ・クルスから「パリで襲われて怖かったね。えらかったね」と慰めてもらっていたが、国外逃亡しようとした矢先にモロッコアサシンに暗殺され、デバイスを奪われてしまう。コロンビーを追っていたジェシカ、ニョンゴ、ダイアンは「今度はモロッコかよ!」と叫び、たまたまそこに居合わせたペネロペを半ば拉致する形でモロッコに向かう。
そんなわけで、敵の敵は味方理論で協力しようと提案したCIAジェシカとMI6ニョンゴ、不本意ながらも提案に乗ったBNDダイアン、そして関係ないのに連れてこられたDNIペネロペがドリームチームを組むっ!
物語後半では舞台が上海に移り、そこでファン・ビンビンも仲間に加わるが、ひとまず筋紹介はここまで。

ペネロペとコロンビー。

アメリカ・イギリス・ドイツのカットバックを挟みながら、パリ→モロッコ→上海と目まぐるしくロケ地が変わるさまは、ロードムービーというよりは舞台転換の鮮やか。
各国のロケ地に合わせて衣装やメイクを細かく変えているので目の保養になること請け合いだが、ただの見栄えやファッションではなく、今や旧価値となりつつあるスパイ映画ならではの“擬態”という主題を大真面目に果たそうとした、その意思には敬意すら表したくなって。
パリでの新婚旅行を装うために馬鹿なアメリカ田舎女風のワンピース、モロッコの人混みに紛れるためのジェラバ、上海のオークション会場に潜入すべく満艦飾のドレスアップetc…。よーく見るとそれらすべてがショットやギミックに還元されているので、実はけっこう芸が細かいというか、「馬鹿のフリして考えてるんだな」って愛おしくさえなっちゃうの…!

馬鹿なアメリカ田舎女風のワンピースでパリを失踪するジェシカ。

◆あなたが好きなのは猫ダイアン! 犬ダイアン! ~ダイアンが仲間のためにコーヒー淹れた~◆

 そんな話よりキャラクターよ。
同じターゲットを狙うジェシカとダイアンが戦功を争って対立している…という構図がたまらなく好きでさぁ。特に、一度取り逃がした獲物を再び狙うコロンビー戦第2ラウンド
ジェシカはパリ市街での第1ラウンドで相方のバッキーを死なせてしまってるし、一方のダイアンもBND上官から何かと気にかけてもらっている一匹狼というキャラクター。実はダイアンの父親は過去にKGBに情報を売っていたことから二重スパイの烙印を押され、爾来、幼少期からダイアンは「裏切り者の血が流れてる子」と後ろ指をさされてきた。
それぞれに悲しみを背負った二人の女が、デバイス回収という共通の任務ゆえに衝突し、結託していく。このアツき少年漫画魂がおまえにわかるか。牙一族にさらわれたアイリを助け出すために結託したケンシロウとレイそのものとは言えまいか!
言えまいなことないよねえ!?

孤高のダイアン。

こっから先は「推しの話」をするけどね。
私の推しはダイアン・クルーガー。
もう一択よ。
仮に私がクルーガリストじゃなかったとしても、公平に見て『355』はダイアン・クルーガーの一人勝ち映画だったね。嘘だと思ったら、この記事のコメント欄を見てごらん。きっとやなぎやさんが「その通り」って言ってるから。もし言ってなかったら、それは多分まだ言ってないだけ。ただのタイムラグだ。あるいは、やなぎやさんがまだ本作を見てないだけ。見ろよ。見たら絶対言う。
「ダイアン・クルーガーの一人勝ちやね」
そう。ダイアン・クルーガーの一人勝ちなんだよ。
なんだこの子。可愛すぎるだろ。キャラとして。初登場時の第1ラウンドこそ「ジェシカもコロンビーも全員殺してデバイスを回収する。私はルールという檻から解き放たれたメスライオン。文句あったら来い。ウォーリアー」って感じだったのに、デバイスの持ち主がコロンビーからモロッコアサシンに移った第2ラウンドでは「そういえば私ってスパイか。目立つのよくないね」と学んだのか、フード付きの黒パーカーを着用して任務を遂行。
黒のパーカーでゆるふわパーマええええええええ!!!

パーカーかわいい。

しかもこのシーン、ジェシカを妨害しながらモロッコアサシンも追い詰める…という二重任務を一人ぼっちで頑張って。えらい。近接格闘を得意とするジェシカに階段から蹴落とされて!
で結局、モロッコアサシンに逃げられたことで渋々ジェシカと結託。同じ目的のために相棒契約こそしたが、ジェシカに対しては殺意むき出し。ここでダイアンの名言が飛び出します。
ダイアン「相棒(バッキー)はどうしたの?」
ジェシカ「カフェであなたに邪魔されたあと、誰かに殺されたわ」
ダイアン「そういうこともあるわね。もしくは相棒が自分を殺すとか」
ジェシカ「…脅してるつもり?」
ダイアンそう。その通り」

まっすぐ脅した。

偉そうにふんぞり返って。すぐ相棒脅して。

本当は脅してないのにダイアンったらあ!
ジェシカに対するマウントっていうかイニシアチブを取るためにわざとそんな怖い言葉ゆって~~って思うぐらいには、この時点ですでに私はダイアンに狂ーガーしている。ありがとうな。
その後のモロッコ戦では、ジェシカ、ニョンゴ、ペネロペと連携しながらモロッコアサシンを破り、ついにデバイスを回収して軽い打ち上げができるほどに距離を縮めたダイアン!
打ち上げの席で“みんなの初任務”を順番に話していくってノリで、ジェシカやニョンゴが爆笑エピソードを披露する中、ダイアンは「KGBに仲間を売った父を密告した話」をして空気を重くしてしまったが、機転を利かせたニョンゴが「慰めにはならないだろうけど、あなたは間違いなく、誰よりも…病んでる女だと思う」と笑いに変えてくれたお陰で場が和んだ。一瞬「やべ」と思ったダイアンも「場が和んだ~」と思った。「仲間っていいかもー」とも思った。
爾来、あんなにツンツンしていたダイアンは、まるで気性の荒い猫から人懐っこい犬に変わったかのようにチームに馴染んでいく。疲弊した仲間にコーヒーを淹れてやったり、相棒を失ったジェシカに同情して痛みを分かち合ったり…。
猫だったころのダイアンもよかったけど犬ダイアンもすてき。

戦力外のペネロペのかわりに敵を全部やっつけてあげるクルーガー。

そして後半の上海シーケンス。
オークション会場に潜入した4人は、とっておきのドレスアップで関係者を装うが、ダイアンだけが埒外なまでに格好いい。
こんな格好いい関係者はいねえ。
むしろ格好よすぎて目立つだろ…と言い切りうるほどに、赤のドレスはわれわれの瞳に眩しく映ったあッ!!!
なまじ、これまでのパーカー姿とのギャップも相俟って、思わず人は「狂ーガー!」と張り叫んでしまう。大人なのに。

ドゥエ!!!

 

ドゥエ!!!

 

ドゥエ!!!

 

ドゥエーガー!!!

夢みたいに格好いいいい!

一方その頃、敵に見つかってオークション会場のショボ部屋に監禁されていたジェシカは、見張りの大男と対決しています。



棒で人の頭叩いてる。

すごいすごい。しこたま叩いてる。
叩くたびに「コチン」って、あかん音してる。頭蓋が割れる音や。さすが近接格闘が得意なジェシカ。すぐ棒で人の頭叩きだす。



あっ、首絞めてる…。

あんなに頭叩いてたのに今度は首絞めてる。
さすが近接格闘が得意なジェシカ。頭いったあと首いってる。


そしてクライマックス。デバイス争奪戦も最終楽章。
ここでは筋肉総決算といわんばかりの物騒なアクションが奏でられていく。もう、ムチャとクチャの近親結婚だよ。
ジェシカがパンチしたり…



ビンビンが棒術したり…



ニョンゴがランボー!!!



すごい怖い。
ただただ物騒。銃で人を撃つことをしてる!
スパイどころかヤバイ奴らの殺戮ディナーショー28000円に心もお腹もいっぱいや。
キャラクター間の絡みもサラッと目配せする程度ではあるが、それだけに観る者は刹那のコミュニケーションに“意味”を読み取ってしまう。これもキャストパワーだ。
それに、よく見ると5人の関係性が“現代映画界での各々の立ち位置”とリンクしてるような気もしていて。最もキャリアは浅いが最もポテンシャルを秘めたニョンゴは劇中でも非戦闘員だがクライマックスでは覚醒してランボー化とか、敵に回すと強敵だが味方につけると心強いファン・ビンビン(米映画産業に裨益しながらもその存在を脅かす中国マネー)など。だからこそ5人のやりとりに関心が向くんだろうな。映画好きとして。
ニョンゴもどんどん逞しくなって。ジョジョみたいな名言にはシビれたよ。
ペネロペ「どうするの? 何の情報もないのに。どう進めばいいの…?」
ニョンゴ「進む必要はない。『戻る』の」
また、キャスト陣の武器捌きだけでなく快刀乱麻の画面捌きにも感心したが、まあ、この手の映画でモンタージュの話をしてもねって感じなので割愛(よくできたバカ映画って批評しにくいわぁ)。


最後に、これに関しては比較しない方が不自然なのであえて名前を出すけど、ピースは揃えたが嵌め方を違えた『オーシャンズ8』(18年) と、そもそもパズルのピース(小片)ではなく政治的なピース(平和)を揃えてしまった『チャーリーズ・エンジェル』(19年) の失態を補って余りあるほどの“気持っちええフェミニズム映画”だったことを付言しておきたい。
端的にいえばうるさくねえ。
ワインスタイン失脚以降の米映画に見られるフェミニズム&LGBTQの集団ヒステリーみたいなゴリ押しに辟易していた折、ついに『チャーリーズ・エンジェル』で「あ。もういいや」と米映画を追うことをやめていたし、実際ここ1~2年は新作映画をほぼ観ておらず、が為にブログ活動も半休業状態と化していたが、今回『355』と出会ったことで、すこし元気が恢復しました。やったー。



☆うれしい追記☆
MVPのダイアン・クルーガーさんには賞品としてキティちゃんのパーカーが捧げられます。
エリザベス・バンクス「女性だからキティちゃんとかいう男性的発想を今こそ糾弾するときだー!」
おっけおっけ。
一緒に『355』見よか。

エリザベス・バンクス…女優。『チャーリーズ・エンジェル』では図に乗って監督も手掛けた。


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