続編公開記念として『パディントン』を褒めます。
2015年。ポール・キング監督。ヒュー・ボネヴィル、サリー・ホーキンス、ニコール・キッドマン。
真っ赤な帽子をかぶった小さな熊が、ペルーのジャングルの奥地からはるばるイギリスのロンドンへやってきた。家を探し求める彼は、親切なブラウンさん一家に出会い、パディントンと名付けられる。ブラウンさんの家の屋根裏に泊めてもらうことになったパディントンは、早速家を探し始めるが、初めての都会暮らしは毎日がドタバタの連続で…。(映画.com より)
キッズどもに確実に夢を与えるシュアーな一品だ。
舞台はロンドン。
ロンドンを描いたキッズムービーといえば『ミニオンズ』。
なんだ、近頃のキッズはロンドンにかぶれているのか? それともロンドン側が世界中のキッズを洗脳しようとしているのか?
なにこのキッズとロンドンの蜜月。
いきなり話が脱線。ごめんな。
この作品はロンドンの風景が品よくバックにおさめられているので、パディントンを見ることに飽きたら充実した風景を楽しめばよいのだが、問題はパディントンの一挙手一投足に目が離せないほどこのクマ野郎が魅力的である、ということだ。
ロンドンの街並みの空気と、CGとアニマトロニクスを組み合わせて作られたパディントンのいきいきとした躍動がよく馴染む。
クラシックでビビッドな映像が、パディントンのチャームポイントである赤い帽子を必要以上に目立たせることなく、この言葉を話す奇怪な熊をごく自然に人間社会の中に招き寄せています。
カメラマンは誰かなーと気になって調べたところ、『嗤う分身』以外あまり目立った作品がないエリック・ウィルソン。おそらくほぼ無名だが、『嗤う分身』と『パディントン』を成功に導いたことで今後大成していくこと間違いなしだ。もし大成しなかったとしても俺のせいではない。それはエリック・ウィルソンの自己責任です。
パディントンとともに暮らす一家の両親にヒュー・ボネヴィルとサリー・ホーキンスを配したことで、映画に安心感が加えられてます。ファミリームービーとしての側面からも、この二人の功績は大きい。ともにロンドン出身の俳優にして、決して映画を邪魔しないバイプレーヤーである。
この二人が異様なまでの安心感と多幸感を画面に定着させることで、その後に博物館の剥製師がパディントンを拉致するという戦慄の展開を迎えても、パディントンが毒殺されたり安楽死を強いられるといった過激な事件はひとつも起きやしないのだと確信させる。
そしてパディントンの身柄に執着する謎の女剥製師にニコール・キッドマン!
近年絶不調の女優で、過去には華々しいクソガキ・ファンタジー『ライラの冒険 黄金の羅針盤』に出演したものの続編企画が頓挫して世界中のキッズどもを絶望の淵に叩き落としたという罪過があるが、本作ではそれなりにチャーミングな悪女を演じている。
『ライラの冒険 黄金の羅針盤』の続編中止で絶望の暗夜にいざなわれたキッズたちよ、帰ってこい。
※自称・女優の髪型評論家として一言…。
この映画でキッドマンが見せたおかっぱボブというヘアスタイルは『インディ・ジョーンズ クリスタルスカルの王国』におけるケイト・ブランシェット、あるいは『トロン: レガシー』におけるオリヴィア・ワイルドの流れを汲む。
忘れた頃におかっぱボブがやや流行るという法則を頭の片隅に留められたし!
おかっぱボブ代表といえば『レオン』のナタリー・ポートマンだが…
元祖はルイーズ・ブルックス!
また話が脱線した。ごめんて。
言葉を話す動物が人間とともに暮らして家族になる…という筋は、『スチュアート・リトル』(ネズミの分際で人間の家族に迎えられるという忌々しいキッズムービー)を想起させるが、アクションシーンの狭間に『ミッション:インポッシブル』、『ブレードランナー』、『メリー・ポピンズ』などのパロディを散りばめながら、最終的には欧州の移民問題に着地する語りは実に軽妙で、キッズに対するメッセージとしても押しつけがましいところがない。
爽やかな説話とチャーミングなキャラクターたちには好感が持てるし、それでいて映像はわりに本格的。
良いんじゃない? 『パディントン』。
これで熊の可愛さを知ったキッズたちよ、次は『グリズリー』と『ザ・ワイルド』を観よう!
『グリズリー』…熊が人間を殺しまくる映画。
『ザ・ワイルド』…熊が人間を殺しまくる映画。