シネマ一刀両断

面白い映画は手放しに褒めちぎり、くだらない映画はメタメタにけなす! 歯に衣着せぬハートフル本音映画評!

6デイズ/7ナイツ

終始なごやかな無人島サバイバル。

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1998年。アイヴァン・ライトマン監督。ハリソン・フォード、アン・ヘッシュ。

 

南の楽園でバカンスを過ごそうと恋人とやってきた雑誌編集者ロビン。だがロビンに急な仕事が入り、偏屈なバイロット、クインの操縦するおんぼろセスナ機で戻ることに。その途中、嵐で無人島に不時着。2人は何かと反発しあいながらも様々な危機を乗り越えていき…。(映画.comより)

 

おはようございます。
ニラって美味しいよね。ニラを再評価しています。まさか自分がこんなにニラを好んでいたとは思ってなくて、最近になってようやく自覚したんですよ。「そういえば僕ってニラが好きだな」って。 昨日も買いました。どうやって食べよかなーって考えているのだけど、逆に食べないという選択肢も乙だよね。
玄関先に飾っておくと運気が上がるかもしれない。お風呂に入れてニラ湯をしてみたら肌が変色してカッコよくなるかもしれない。お近所さんにプレゼントしたら喜ばれるかもしれない。
そんな風なことを、昨日は一日中考えていました。結論はまだ出ません。早く使い道を考えないとニラがだめになってしまう。時間との勝負です。

さて、ニラの話は措いておくとして、本日取り上げるのは『6デイズ/7ナイツ』だよ。もはや20年以上前の作品なんだなぁ、これ。

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◆無害で幸福な映画◆

 洋画劇場で何度も見た懐かしい作品である。こういうところに映画原体験を持つあたりが私の育ちの悪さを物語っているのだが、この時期のアメリカ映画のほとんどマヌケに近い楽天性もまた好し。
『ゴーストバスターズ』(84年)『デーヴ』(93年)で知られる人畜無害の凡才監督アイヴァン・ライトマンがその凡才ぶりを遺憾なく発揮していたころの幸福な作品が『6デイズ/7ナイツ』というわけだ。
アイヴァン・ライトマンが80~90年代ハリウッドのヒットメーカーたり得たのは徹底して無害な映画を作る男だから。この人の映画はどれひとつとして観る者の価値観を脅かさないし、映画に対する黙想を促しもしない。得るものも失うものも余韻すらもない。人をハデに喜ばせることもなければ不快な気持ちにさせることもない。
そういう無害な映画ほど人民は求めるので、ライトマンが売れたのは必然だったと言えます。

 さて、本作はハリソン・フォードアン・ヘッシュがやる気なさそうに無人島をサバイバルするという激列にどうでもいい内容なのだが、およそ切迫感と呼べるものはまったくの皆無。実にほのぼのとしたロマコメである。
雑誌編集者のアンと婚約者のデヴィッド・シュワイマーはマカテア島でバカンスを楽しんでいたが、アンが急な仕事でタヒチに飛ばねばならなくなり、パイロットのハリフォと共にセスナに乗っているところを嵐に見舞われて無人島に不時着してしまうのだ。チョベリバ。
セスナは飛ばず、無線機は壊れてしまい食料もない…という絶望的な状況にも関わらず、アンとハリフォは性格の不一致で喧嘩をします(ほかに喧嘩する理由などいくらでもあるだろうに)。アンはマカテア島に残してきた婚約者を想って涙を流したりはしないし、ハリフォの脳裏に死がよぎって焦りと不安におびえるといった素振りも見せない。
そして、頼みの綱はたった一発の照明弾のみ。普通なら然るべきタイミングで有効活用することで二人を生還へと導く小道具として演出されるべきこの照明弾=最後の希望は、しかし遭難二日目にアンがうっかり誤射してしまったことで呆気なく潰えてしまう。
はい終了。ゲームオーバー。
しかしここからがアイヴァン・ライトマンの腕の見せ所。あきれるほど無害で幸福な映画の加護のもとに、二人は底抜けの楽天性を湛えながら無人島サバイバルを謳歌するのだ!

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◆サバイバル…なのか?◆

 彼らが不時着したのは実に都合のいい無人島だった。
まず食料をどうするかと悩んでいたらたまたまブタとクジャクがいたのでこれを焼いて食べた。空腹を満たした二人は「おいしかった」といったコメントを残してぐっすり眠った。
つぎに水を確保せねばならないと考えた二人が森のなかを少し歩くと綺麗な滝があった(虹も出ていた)。いたく感動した二人は「虹すら出ている」といったコメントを残して心ゆくまで水を飲んだ。
ところが「楽勝! 楽勝!」とか言いながら二人が水浴びしていと、急にアンの顔が引き攣って「パンツの中に何かいる…」と言う。さぁ大変だ。スリルだ。するとハリフォが事もなげに彼女のパンツに手を突っ込んでヘビを取り除いてあげた。

ちなみにこのシーンが本作最大の見せ場となっております。

ここで楽しめなかったらもうムリよ。

f:id:hukadume7272:20190214071734j:plain本作最大の見せ場。

二人の顔は何日経っても一向に汚れないし、やがて愛し合うようになっても一線は超えない(全年齢対象の健全な作品なので)。
しまいには森のなかで旧日本軍機の残骸を見つけてそのパーツでセスナを修理するというライト兄弟みたいなムチャをやってのけ自力で島から脱出するのだ。
メチャクチャすぎて笑ってしまう。
通常ならラストシーンで救助隊が現れてハッピーエンドとなるのがサバイバル映画の定石だが、この映画は自分たちでセスナを直して自力で帰っちゃう。このクライマックスを見たとき、本作の主演がハリソン・フォードである理由が分かった気がした。
さすがインディアナ・ジョーンズにしてハン・ソロ。桁違いの冒険力。

 いやはや。勝手に問題を抱えて勝手に自己解決する…というアホらしさが実に愉快である。
結局この二人がやったことって不時着してブタ食って水浴びしてセスナ直して家帰っただけだからね。

どこがサバイバルやねん。

 もっとも、サバイバルをするにはこの無人島はあまりに出来過ぎていたのだ。ブタはいるわ、滝はあるわ、旧日本軍機は落っこちてるわ…と至れり尽くせり。ちょっとしたテーマパークだよ。
おまけにマカテア島ではアンの婚約者がよその女と浮気していたというサブエピソードがアンとハリフォの無人島ラブを正当化しているので、婚約破棄したアンが帰りの飛行機から降りてハリフォのもとに走っていくラストシーンも気持ちよく見れます!
まー、良くも悪くもアイヴァン・ライトマンである。どこまでも無害で、幸せな奴だ。

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喧嘩するほど仲がいい。

◆10年に一度観たくなる映画◆

 この映画のハリフォはじつに楽しそうである。お決まりの眉間にしわを寄せた深刻顔ではなく、終始ヘラヘラしていた。
まぁ…アン・ヘッシュのパンツに手ェ突っ込んでギャラ貰えるんだから、そりゃあ笑うか。
ある家族の密林生活を描いた『モスキート・コースト』(86年)も本作と似たようなシチュエーションだが、そちらでは狂気的な父親を演じて「自然をナメるな」とガチギレしていたハリフォが、本作では「楽勝」を連呼して自然をナメまくるという好対照ぶり。
そんなハリフォ、「ところで何歳なの?」とアンに訊かれて「何歳に見える?」と返したのがイラっとした。合コンの女か? しかもそのあとアンに耳打ちで年齢を教えて観客には聞かせない…という乙女のごとき恥じらいぶりが余計に人を苛つかせる。
興味ねえよ、おっさん!

 そしてキャリアピークのアン・ヘッシュ。本作ではシャツ一枚でバストトップを浮き上がらせてのご活躍であります。もうずっと浮き上がってるからね。乳首という名の孤島が。
それにしても、この頃のアン・ヘッシュが一番や!
彼女の絶頂期は1997年~98年の約2年で、その間に『ボルケーノ』(97年)『ウワサの真相/ワグ・ザ・ドッグ』(97年)『リターン・トゥ・パラダイス』(98年)、リメイク版『サイコ』(98年)などに出まくっては荒稼ぎ、以降は人気が落ち着き、たまに思い出したように低予算映画に出演するというセミリタイア状態の女優で。
まだ49歳で美貌も保っているのだからもっと女優業に打ち込んで頂きたいのだが、本人曰く「いやよーん」とのことなので諦めざるをえない。

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アン・ヘッシュとハリソン・フォード。

 『6デイズ/7ナイツ』は絵に描いたようなド凡作だが、この和やかな雰囲気が妙に心地よい。
個人的にはあまり好かない言い方だが「捨て曲」というのが大抵のアルバムにはあって、だけどたまに聴くぶんには意外と楽しめたりして……本作はまさにそんな映画である。毒にも薬にもならない凡庸な作品だが、今後も10年に一度ぐらいのペースで観返したい。
みんな、アン・ヘッシュのこと忘れないで!