なんだこの映画。全員体調悪いのか?
2015年。アラン・テイラー監督。アーノルド・シュワルツェネッガー、エミリア・クラーク、ジェイ・コートニー。
2029年、ロサンゼルスでは人類抵抗軍が人工知能による機械軍との戦いに終止符を打とうとしていた。1997年、機械軍による核ミサイルで30億人もの命が奪われた“審判の日”以来の悲願がかなうときが目前に迫る。一方機械軍は、抵抗軍のリーダーであり、驚異的な力を持つ予言者ことジョン・コナー(ジェイソン・クラーク)を生んだ母サラ・コナーを亡き者にすべく、1984年にターミネーターを送り込み……。(Yahoo!映画より)
すっかり体力も衰えた大御所ミュージシャンが往年の名曲をふんだんに盛り込んだセットリストで古参ファンを喜ばせようとするが、声量も落ちカリスマ性も失ったので、あたかも過去の栄光に思いを馳せるようなクソさむい馴れ合いコンサートになった…みたいな映画でした。
要するに『ターミネーター』というコンテンツを延命して稼げるだけ稼ごうという最後っ屁的な企画なのだが、本国での興行収入が芳しくなかったため早くも続編製作が危ぶまれているらしい。まさに合掌。まさに『ライラ』。
過去作のセルフパロディと「I'll be back」の安売り、そこにドカ盛りのアクションを用意すればファンは喜ぶだろうとタカを括ったのが運の尽き。
世界中のファン、ナメてない?
作り手たちは『ターミネーター』に愛などなく、ファンをナーメテーターわけですよ。
もう激怒。
もうこんな顔。
『ターミネーター3』以降失速して今や出涸らし状態のこのコンテンツをテコ入れするには、例えば『ランボー 最後の戦場』のようにシリーズを根本からリ・クリエイトするような突き抜けた知恵と魂が必要なのに、あたかも「過去作で客にウケたところを繋げ合わせました」と言わんばかりのナメた態度で栄光の残滓にすがる本作は、典型的な悪しきハリウッド脳が生んだ愚劣な魂の結晶と言えましょう。
まるでこの映画、『ターミネーター』の熱狂的ファンによる自主映画を見せられているようで。一応本家なのに亜流のように感じるのだ。
イ・ビョンホン演じる液体金属ターミネーターのT-1000はびっくりするぐらい稚拙なコンピュータ・グラフィックスで、「えっ、1億5000万ドルも製作費があって、それも今の時代にこの程度のCG?」って。
T-1000のフェティッシュな艶がまったく表現されてない(まぁ、ビョン様自身が艶の権化みたいな色男だからそれなりに見れるのだけど)。
予告編にもあったヘリから飛び降りての人間ミサイルに顕著なように、アクションシーンにおける漫画的なカメラワークは『ターミネーター』の世界観を木っ端微塵にしているし、終盤のド突き合いも『マトリックス』とか『X-MEN』で散々やったことを今更またやる? …という感じ。
トラック縦回転も『ダークナイト』やってみましたという安易な猿真似でしかなくて。縦回転ブームに反抗してトラックを横転させた『エクスペンダブルズ3 ワールドミッション』のような無骨さこそがこのシリーズには必要なのでは?
シュワちゃんのキャラクターもブレにブレている。アーノルド・ブレるツェネッガーじゃないんだから。
何かにつけて下ネタを連発したり、若いヒロインに「おじさん」と呼ばれるT-800はもう完全にただのオヤジ。歯を剥きだしてのスマイルといい、イジリが過ぎる。
ついにターミネーターをイジりだした。
変にシュワ萌えを狙ってくる下心も品がない。広義的には萌えアニメと大して変わりません、この映画。
エミリア・クラークやジェイ・コートニーといった若手俳優陣も妙にしょっぱい。『欲望のバージニア』であれほど映えたジェイソン・クラークもビビるほど画面映えしないし、覇気がない。
なんだこの映画。全員体調悪いのか?
1作目と2作目が未だに名作として語り継がれているのは、シンプルな追いかけっこの構図の中にサスペンスを組み込み、その背景にSFとしての複雑な筋や設定が忍ばされていたからだが、もはやシリーズ5作目となる本作では設定をイジり倒してるだけ。
過去がこうだから未来はこうだ→じゃあ未来を変えに行こう! というパターンと戯れているだけ。ザッツオールである。設定のための設定というか。
フィルムの質感もキャメロン版のメタリックな冷たさとは程遠く、まるでプラスチックで出来てるみたいに締まりがない。
もっとも、悪名高き『ターミネーター3』に比べればいくらかマシな出来栄えだし、斜に構えて観る分にはそれなりに楽しめるのだが。
ちなみに私の中で『ターミネーター3』を撮ったジョナサン・モストウは首を絞めたい監督ランキングに10年連続TOP10入りしている上位ランカーです。そろそろ殿堂入りするかもしれない。
お口直しに『ターミネーター2』の主題歌でも聴いてリフレッシュしよう。
ガンズ・アンド・ローゼズ「You Could Be Mine」
ケテケテテンテケ、ケテケテテンテケ、テケテケテケテケテケテケテン!