シネマ一刀両断

面白い映画は手放しに褒めちぎり、くだらない映画はメタメタにけなす! 歯に衣着せぬハートフル本音映画評!

ザ・プレデター

不満がモレデター。だけどナレテター。

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2018年。シェーン・ブラック監督。プレデター、巨人プレデター、プレデター犬。

 

元特殊部隊員の傭兵クイン・マッケナは、メキシコのジャングルに墜落した宇宙船と、その船に乗っていたプレデターを目撃。プレデターの存在を隠匿しようとする政府に拘束されてしまう。クインは、墜落現場から持ち帰っていたプレデターのマスクと装置を自宅に送り届けていたが、クインの息子で天才的な頭脳をもつ少年ローリーが装置を起動させてしまう。装置から発せられるシグナルによってプレデターがローリーのもとに現れ、さらにそのプレデターを追い、遺伝子レベルでアップグレードした究極のプレデターまでもが姿を現す…。(映画.comより)

 

おはよう。

過日、マンションの入り口で女性がもがいていた。

オートロックを解除して中に入ろうとしていたのだが、Amazonのデッカい箱を三つ積み重ねたものを抱えており、前も見えないし扉も開けられないという状態で、どうにか中に入ろうとして もがいているご様子。

いったい何を買い求めたのか。引っ越し業者でもそんなに持たんぞ、というぐらいの大荷物である。

私だったら一度箱を床に置いて、扉を開けたのちに箱を押しながらマンション内に入る…という方法を採るけれど。

慌てて駆けつけた私は、内側から扉を開けて「入りゃんせ! 通りゃんせ!」と言った。

私の粋な計らいにより、三つの箱を抱えた女は「アリス、アリス」と言いながら無事に通ることができたのだが、その際に腕がドアに当たって三つの箱をすべて床にぶちまけてしまった。

拾おうとする私を「あ、大丈夫ですよ」と制止した女は、ドアの外側に落ちた箱を足でボンボン内側に蹴り込みながら「ありがとうございました~」と言った。私は「蹴っていいの?」と思った。

その後も蹴った方がラクと思ったのか、三つの箱をひとつずつ足で乱暴に蹴りながら前進していく彼女の後ろ姿を見て「箱の中身が気がかり」と思った私でありました。

そんなわけで本日は『ザ・プレデター』です。怖い怖い映画なのでちびっ子のみんなは保護者と一緒に読んでくださいね。

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◆プレデターとは?◆

プレデター。

別名「銀河の狩人」。ちなみに私は「プレちゃん」と呼んでいます。

 

・宇宙のさまざまな惑星を渡り歩き、その星で最も強い生物を狩ることに無上の喜びを感じる戦闘民族。

 

・三度のメシより闘うことが大好きで、強そうな生命体を見つけるや否やめったやたらに殺しまくるという傍迷惑な種族である。ただし妊婦、キッズ、病人、動物等は殺さないというハートフルな一面もあり、勇敢な対戦相手には殺したあとにも敬意を表する。

 

・桁外れな身体能力を持ち、腕に装着した「プレちゃんマシン」を駆使してステルスモードになったり手裏剣を飛ばすことが可能(忍者に憧れている節あり)。

 

・かっくいいヘルメットを被っているが素顔は激烈にブサイクで、かつて地球で対決したアーノルド・シュワルツェネッガーから「なんて醜い顔なんだ…」と言われて深く傷ついたことがある。

 

・肩からプラズマキャノンを放つことができる。この技を使えば人間など一瞬で焼き殺せるというのに、なぜかアーノルド・シュワルツェネッガーと拳で殴り合って敗れた個体がいる(プラズマキャノン使えよ)。

 

・よく笑う。

 

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ドレッドヘアーの殺人仮面。


私はプレデター大好き人間だが、プレデターのファンというわけではなく『プレデター』(87年)のファンなのである。わかるよね。

キャラクターもしくはコンテンツとしてのプレデターが好きなのではなく『プレデター』という映画の大ファンなのだ。

したがって、忘れた頃に作られる『プレデター2』(90年)『プレデターズ』(10年)といった続編にはまったく心動かされず、世界観の垣根を超えたクロスオーバー作品『エイリアンVSプレデター』(04年)に至ってはタチの悪い冗談としか思えなかった(出来も最低)。

そして去年『ザ・プレデター』が公開されたとき「いよいよ本格的に続編商法が始まったか」と思い、プレデターが史上最高の怪物から市場最高の商品に変わった瞬間に涙したものでした。

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伝説の筋肉SF映画『プレデター』。すべてはここから始まった。


とはいえ観てみないとわからない。私は観る前からその映画を貶すほど愚劣な魂の持ち主ではない。

それに本作を手掛けたシェーン・ブラック『プレデター』にも出演していた俳優出身の映画監督。本家本元の撮影現場に居合わせたのだからプレデターのことは誰よりもよく分かっているはずだ。また、こいつが作った『アイアンマン3』(13年)『ナイスガイズ!』(16年)という映画がなかなかいい出来で、俳優がメガホンを取るとロクなことにならんという私のジンクスを揺るがした人物でもあるのだ。

オーケー、正直に告白しよう。

DVDを突っ込んで映画が始まるまでは20年前にタイムスリップしたようなガキのごとき面持ちで目をキラキラと輝かせていた。

何匹目の泥鰌かは知らんが、やはりプレデター、腐ってもプレデターなのである。

ぼくの だいすきな プレデター!

プレちゃんに またあえるという よろこび!

心を躍らせぬ手はない。


にも関わらず映画を観続けるうち、自ずと私の口から不満がモレデター。 

 次の章ではモレデターについて詳しく語る。

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素顔のプレちゃん。


◆モレデターとは?◆

モレデター。

別名「堪忍袋の緒が切れる・トサカに来る」。ちなみに私は「モレちゃん」と呼んでいます。

 

「あえて80年代っぽい大味な映画を再現した」とのことだが、80年代回帰を免罪符に出来の悪さを正当化しているだけ。

 

・プレデター捕獲に向けて軍人チームを結成する主人公、学校で虐められている主人公の息子、プレデターを追う女性科学者、何やら不審な動きを見せる研究機関の黒幕など、人間サイドのエピソードがとにかく渋滞していて一本筋の通った単純明快なストーリーラインがない。

単純明快こそが80年代映画の持ち味だったんじゃないの?


・全編ギャグのつるべ打ち。

主人公含む軍人チームのセリフは8割方ギャグで、『デッドプール』(16年)を凌駕するほど終始洒落のめしている。

107分に及ぶギャグの畳み掛けはたしかに面白いし、少なくとも私にはウケテターだったけど、プレデターというコンテンツとの食い合わせは最悪。雰囲気もヘチマもない。

1作目にも出演したシェーン・ブラックは『ラスト・アクション・ヒーロー』(93年)の脚本も手掛けているように、恐らくシュワちゃんジョークをやろうとしてこのような全編ギャグ化に舵を切ったのだろう(シュワちゃんはどの映画でもシリアスなギャグを言う)

だがシュワちゃんジョークは30分に一回ボソッと呟くから面白いのであって、曲がりなりにもシリアスな当シリーズでここまで露骨にふざけられてしまうと同人臭しかしないわけで。こういうのを俗に「悪ノリ」と言う。

 

・同人臭と言えばチームの壊滅と舞台演出。

主人公チームがプレデターによって次々殺されていく…というシリーズ共通のパターンが森(1作目)や都会(2作目)を舞台にお行儀よくなぞられているだけで、新しいことをやるといったチャレンジ精神がまったくのゼロ(その点、20年越しの続編『プレデターズ』がどれだけ頑張っていたことか…。日本刀持ったヤクザがプレデターと斬り合いするからね)

なんかもうプレデターファンが集まって自主映画作りましたという同人臭というか…、亜流感がすげえのである。


・とはいえ新要素として巨人プレデターとかプレデター犬といった新キャラを登場させているが、巨人プレデターのサイズ感も出せていなければプレデター犬の説話的必要性もない。グッズ化するために盛り込んだという魂胆がミエミエ。『エイリアン』意識しすぎ。

 

・プレデターが弱い。

「地球外最強」との触れ込みなのに女性相手に四苦八苦しておられる。

というか、あんまり戦わない。今回のプレちゃんは人間狩り以外の目的で地球にやってきたのでハナから戦意ゼロ。挙げ句の果てに巨人プレデターに頭を引きちぎられてご臨終。享年不明。涙がモレデター


俳優がメガホンを取るとロクなことにならんジンクス、再びだよ!

とはいえ私も昨日今日に映画を観始めたわけではないので、楽しみにしていた映画が残念な出来だった…という経験には慣れている。

『オーシャンズ8』(18年)のように「十中八九ダメだろうけど出来る限り楽しみたいな」というやや複雑な思いを抱えたままスクリーンに臨むことなんて何百回もあったさ。すでに慣れっこだよ。

だからこの映画に特別むかつくこともなかったわけだ。

すでにナレテターのだから。

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人間をナゲテター


◆ナレテターとは?◆

ナレテター。

別名「寛容・赦し・感覚の麻痺」。ちなみに私は「ナレちゃん」と呼んでいます。


・本作の瑕疵はあらゆる人があらゆる角度から厳しく論っているものの、なんやかんやで最終的には擁護に回っている人が多い。これぞコンテンツの力というか、いかにプレデターが世界中の人民に愛されているかということを如実に物語っている。

私も例に漏れず、やはりプレちゃんには甘くなってしまう。もはやただのファン心理の発露である。


・ショットも編集もそれはそれは凡庸の極致だし、脚本に至ってはゴミ以下。これで正統続編ですと言うのは明らかにナメテターわけだが、それでもドッタンバッタン暴れ倒すプレデターとグッチャグチャになっていく人間たちの血まみれ戦闘祭は理屈抜きで楽しく。

「理屈抜きで楽しい」って、批評する側が一番言っちゃいけない言葉だけどね。

映画自体がドッタンバッタンのグッチャグチャな出来ではあるが、プレデター単体に焦点を当てるとさほど悪くはない。見栄を切るところはちゃんと格好いいし、光学迷彩のVFXも初代の感じを踏襲してるしな。

映画は最悪だがプレデターは良くデキテターということである。

まさにプレデターの魅力がトビデター

中盤で死んだと思ったプレデター犬もイキテター

ほっこりシテキター。

 

…そろそろギャグが苦しいね。みんなも気づいてるよね。

うーん、バレテター。

 

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休憩中のプレちゃん。人間狩り ご苦労様です。

右の奴は靴履いとんな。