「言うの忘れてたけど~」とか「言いそびれたけど~」で後付けして帳尻合わせてくるスペースおっぱいオペラ。
1978年。ルイス・コーツ監督。キャロライン・マンロー、マージョー・ゴートナー、クリストファー・プラマー。
お尋ね者の女海賊ステラ・スターとその相棒アクトンは、パイロットとしての腕を買われ、悪の帝王によって窮地に追い込まれた皇帝に協力することに。帝王の秘密基地を探し出して破壊せよとの命を受け、広大な宇宙へと旅立つステラたちだったが…。(映画.comより)
おぅ、あくまでシラを切り続けてばかりのみんな。
昨日発表した「10年代映画十選」はダマシなので本当のリストを発表したいと思うぞ。早速いってみよう!
~ふかづめがダマシ抜きで選ぶ! 正真正銘の10年代映画十選!~
『ゴーストライター』(10年)
『少年と自転車』(11年)
『フランシス・ハ』(12年)
『2ガンズ』(13年)
『エヴァの告白』(13年)
『リアリティのダンス』(13年)
『間奏曲はパリで』(14年)
『ザ・ヴァンパイア 残酷な牙を持つ少女』(14年)
『キャロル』(15年)
『スポットライト 世紀のスクープ』(15年)
本域で選ぶならこんな感じでしょうか。この話題だけで記事を一本書きたかったけど、時間と体力がなかったので此処にてサラッと発表するだけに留める。まあ、前置き2回分稼げたのでよしとします。
そんなわけで本日は『スタークラッシュ』。怒る気にもなれない底抜けバケツ映画の精髄を見よ。
◆スペースおっぱいオペラ◆
『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』(77年)の世界的ヒットに便乗した米伊合作によるポンコツ映画である。
あまりのつまらなさに鑑賞中2度ほど泡吹いて倒れたことを告白しておく。
大筋としては、巨乳女海賊とその相棒が悪の伯爵を倒すべく巨大戦艦で銀河を駆け回るというヤケクソみたいな内容だ。
ボバ・フェットすれすれのロボットが出てきたり、Xウィングすれすれの戦闘機が出てきたり、ラストシーンに至ってはデス・スターすれすれの帝国軍基地を爆破してのけるオリジナリティの欠落ぶり。その他、なんちゃってフォースやライトセーバーもどきを使ったチャチな特撮シーンがお楽しみポイントです。
亜流作品に必要なものは狂気と開き直りだが、本作は十分に開き直っている反面、東映が巨額をかけて便乗した『惑星大戦争』(77年)や『宇宙からのメッセージ』(78年)に比定して明らかに狂気が足りない。ひたすらヌルくて退屈な92分が続く。
したがって本作の見所は主演女優キャロライン・マンローのおっぱいという話に帰結してしまうのである。どうしても。それは。
『シンドバッド黄金の航海』(73年)や『007 私を愛したスパイ』(77年)を代表作に持つキャロライン・マンローは、その端正な顔立ちと健康的なダイナマイトボディでお色気女優としての地位を確立、70年代を駆け抜け80年代の風と共に去っていった。
うーん、ダイナマイッ!
そんなキャロラインが露出度と同じぐらい滑稽度の高いコスチュームに身を包み、相棒のマージョー・ゴートナーとともに悪のジョー・スピネル伯爵の打倒をめざす。
ちなみにキャロラインたちに伯爵打倒の命を下した宇宙皇帝役は演劇の三冠王でもあるクリストファー・プラマー御大。言わずと知れた『サウンド・オブ・ミュージック』(65年)のトラップ大佐だが、80歳を超えても耄碌することなく『ドラゴン・タトゥーの女』(11年)や『手紙は憶えている』(15年)などで鋭意活躍。『ゲティ家の身代金』(17年)では撮影中にセクハラ騒動で降板したケヴィン・スペイシーの代役を務めてみんなに褒められた。
それにしても、こんなド低俗映画にプラマー御大のような大物が出演するなんて。何考えてんだ。
演劇の三冠王…アカデミー賞、エミー賞、トニー賞の演技賞をすべて獲得した俳優をヨイショするための用語(1953年にヘレン・ヘイズが達成してから現在までわずか23人しかいない)。
若かりし頃はマイケル・ファスベンダーを彷彿させる二枚目です!
さて、今回はまじめに評論しても意味がなさそうなのでストーリーを追いながら本作のアホらしさをお伝えできればなと思っております。
はっきり言って論ずるまでもない作品なのでこのような形式で十分だと思うのです。
◆日本語字幕のセンス◆
映画は「私たちは宇宙海賊。何者にも縛れない」と豪語していたキャロラインとマージョーがいきなり捕われるシーンに始まる。
銀河裁判で無期懲役を言い渡されたキャロラインは流刑地に送られ肉体労働を強いられるが、「ここを脱出する秘策を思いつかなくては…」と考えた末にレーザー銃で看守を射殺。大した秘策である。囚人と看守が入り乱れるハードアクションが繰り広げられた。
血沸き肉躍るハードアクション。
その後、宇宙征服を企むジョー伯爵を倒すことを条件にプラマー皇帝から恩赦を受けた二人は、宇宙警察のロバート・テシアと警察ロボットのエルを仲間に加えて惑星アラキスに向かう。理由は忘れた。
宇宙警察のロバートはとにかく緑色の肌をしており、ロボットのエルはとにかく短気な奴だった。そして相棒のマージョーはとにかくマリモみたいなパーマを当てており、キャロラインはとにかくおっぱいが大きかった。
マージョー(左上)、エル(右上)、ロバート(左下)、キャロライン(右下)。
4人を乗せた宇宙船は水の惑星アラキスに到着。マリモのマージョーと緑怪人のロバートは宇宙船に残り、キャロラインとエルだけが妙な形をしたスペースシャトルに乗って陸地に接近したが、その際エルは海面を一瞥して「水を見てるとイライラしてくる」と言った。知らんがな。
また、二人が降り立った惑星アラキスはどこからどう見てもアメリカの海岸だったが、これについては触れずにおく。
どうやらここはアマゾネスが暮らす星らしく、いきなりアマゾネスたちに捕われた二人は隙を見て反撃に転じる。キャロラインはアマゾネス軍団相手にハードアクションで立ち向かったが抵抗もむなしく捕われてしまった。
すでに3回も捕われてるけど大丈夫なのだろうか、このヒロイン。
血沸き肉躍るハードアクション。
窮地を救ったのはエルだった。アマゾネス王女の頭にレーザー銃を押しつけ人質に取ったエルは、とてもロボットとは思えない言葉遣いでアマゾネス軍団にキャロラインの解放を求める。
「離さなきゃ王女の頭をぶち抜くぞ。美人の顔がめちゃくちゃになるぞ」
どうにか逃げおおせたキャロラインは「見直しちゃった」とエルを評価し、二人はちょっぴり仲良しになった。だが穏やかなのも束の間、惑星から脱出を試みたところでアマゾネスの巨神が立ちはだかる。体長50メートルぐらいあるブリキの巨人だ!
だが安心されたい。ストップモーション・アニメでカクカク動く巨神は特に何をするでもなくマージョーの宇宙船に攻撃されて撃沈した。巨神に激しい動きをさせるには予算と技術が足りなかったのだ。
レイ・ハリーハウゼンの猿真似。
キャロラインたちが次に目指したのは雪と氷に覆われた吹雪の惑星である。話がどうでもよすぎて理由は忘れてしまったが、きっと重要な任務をこなしたり大事なアイテムを取りに行くためだろう。
キャロラインとエルが吹雪の惑星に降り立ったあと、船内では敵に寝返ったロバートがマージョーを殴りつけ殺害、寒すぎて宇宙船に戻ってきたキャロラインたちを外に締め出して凍死させようと目論んだ。
エル 「中へ入れてください」
ロバート「はっきり言って中へは入れない」
キャロライン「イカれたの? 開けなさい!」
ロバート「いやだ」
日本語字幕のセンス。
エルはロボットなので吹雪に耐えられるが、キャロラインはあまりの寒さにガタガタ震えた。もっとも乳が半分出てるような半裸のコスチュームを着ている時点で自業自得な気もするが。
その間、船内では死んだはずのマージョーが息を吹き返してロバートと取っ組み合いのハードアクションを繰り広げていた。互いに頭をシバき合ったり脛を蹴り合ったりとか…そういったハードアクションである。
マージョーはフォースすれすれの超能力を駆使し、ロバートが撃ったレーザー銃を無効化した。焦ったロバートは「死ね! 死ね!」と叫びながらレーザー銃を撃ち続けたがマージョーにはまったく効いていない。
ついに怒りと焦りが頂点に達したロバートは本作屈指の名台詞を吐き捨てた…。
日本語字幕のセンス。
マージョーは無敵のフォースでロバートを殺し、外でカチカチに凍ったキャロラインを溶かして蘇生させた。ハン・ソロがカーボンフリーズされたシーンをそっくり真似したのだ。
その上、なんだかよくわからないがマージョーは未来予知の能力まで手にしていた。フォースすれすれというかいよいよフォースと言わざるを得ない。
話がどうでもよすぎてキャロラインたちが吹雪の惑星にやって来た理由は忘れてしまったが、とにかく何らかの目的を達成した一行は間髪入れずに砂の惑星を目指す。理由は忘れた。
砂の惑星には棍棒を振り回す野蛮人がいて、こいつらに襲われたエルは頭を粉々にされ、キャロラインは捕われの身となる(4回目)。洞窟のなかで逆さ吊りにされたキャロラインが馬鹿の一つ覚えみたいに「ヘルプ、ヘルプ」と連呼していると、デヴィッド・ハッセルホフ演じる謎の男が現れて野蛮人から彼女を救い出した。さらに、遅れて登場したマージョーはライトセーバーもどきを振り回してハードアクションに精を出した。なぜか敵を全滅させたあとに爆笑もした。
それにしてもマージョーである。こいつ、フォースといいライトセーバーといい…いつの間にか身に付けてるな。マージョーの基本スペックが分からないわ。気が付いたら未来予知もできるようになってるし。
ポテンシャル不明のマージョー。すかさずこの顔である。
◆腕をちょっと切られただけで死ぬ男◆
ポテンシャル不明のマージョーは、この砂の惑星こそがジョー伯爵率いる帝国軍の基地なのだと力説する。味方に加わったデヴィッドは「なぜ今まで気づかなかったんだ!」とわざとらしく驚き、3人は洞窟を抜けて基地の中枢部に辿り着く。
そこへジョー伯爵が現れて「この星に時限爆弾を仕掛けたので、あと8分でおまえたちは死にます」といった意味のことを説明した。
それを聞いたデヴィッドが「そんなことはプラマー皇帝が許さないぞ」とあまり意味のない反論をすると、ジョー伯爵は「言うのを忘れてたが、プラマーをこの星におびき寄せたから奴も死にます。残念ながら殿下、きみの負けだ」と説明した。
それを聞いたキャロラインがデヴィッドの顔を見て「殿下?」と不思議がっていると、すかさずマージョーが「さっき言いそびれてしまったが、彼は皇帝のご子息なのだ!」と説明した。
ぜんぶ後付けで処理しとる。
「言うの忘れてたけど~」とか「言いそびれたけど~」とかグダグダな説明台詞で後付けして帳尻合わせてくる肝っ玉脚本術。
ひでえなこりゃ。嵌らぬパズルのピースを剛腕でブチ込むが如し。
ジョー伯爵は2体のゴーレムズにキャロラインたちの抹殺を命じて姿を消し、マージョーがライトセーバーもどきでこれに立ち向かった。もちろんハードアクションで。
マージョーはストップモーション・アニメでカクカク動くゴーレムズと熱きチャンバラを演じたが、悲しいぐらい迫力がない。なぜならゴーレムズの動きは撮影後に合成したもので撮影現場ではマージョーの一人芝居ということが誰の目にも明らかだったからである。剣の軌跡はむちゃくちゃにすれ違っており、攻撃と防御のタイミングもずれまくっている。
観る者は、剣が接触してないのにカキンという音が響いたり、攻撃されてないのにマージョーが何かを避けたりする怪奇現象アクションに身を震わせるばかりだ。
熱き死闘の果て、マージョーは勝利の代償に右腕をちょっぴり切られてしまう。切断だとモロにルーク・スカイウォーカーになるからか、あくまで裂傷の範囲である。
だがその傷が原因がマージョーは死んでしまった。
死んでまうん?
腕をちょっと切られただけで死んでまうん? ていうかロバートのレーザー銃をはじいたフォースで防御すればよかったのでは。
最後まで謎だったな、マージョーのスペック。結局 強いのか弱いのか…。何がダメで何がオッケーなのか全然わからなかった。
合成丸出しのチャンバラ(ハードアクション)。
そのあと駆けつけたプラマー皇帝は時間を止める能力を使い、その隙に帝国軍の基地から脱出したキャロラインとデヴィッドはプラマー皇帝のお城に一時避難する。…時間を止める能力?
お城ではデヴィッドがキャロラインの手を握って「科学者たちが何時間もかけてキミの友達を直したぞ!」と言うと、砂の惑星で破壊されたはずのエルが「生まれ変わった気分です」と言いながら颯爽と登場してキャロラインと再会の喜びを分かち合った。
「科学者たちが何時間もかけて」と言うけど…むしろ数時間で直せたんだ?
その後、プラマー皇帝はスタークラッシュという四次元攻撃なるものをキャロラインとデヴィッドに提案する。
プラマー「勝つにはひとつだけ道がある。やむをえんな…。スタークラッシュだ」
デヴィッド「四次元攻撃!」
プラマー「そうだ。正確な時間に我々が空間に復帰できるなら、ジョー伯爵は攻撃のショックで舵をとれず攻撃をかわせない」
デヴィッド「でもそんな強力な武器は…」
プラマー「ある! 浮遊都市だ!」
デヴィッド「浮遊都市…」
プラマー「わかっておる。たとえ希望を…、未来を壊すことになろうとも、残念だが勝つためには仕方がない!」
なにをいってるかぜんぜんわからない。
話してる内容が一個もわからんわ。「空間に復帰」とか「浮遊都市」とか「未来を壊すことになろうとも」とか。素人が書いた説明不足だらけのファンタジー小説なのか?
そのあとスタークラッシュとやらでジョー伯爵のデス・スターもどきを爆砕したあと、プラマー皇帝がニコニコしながら「ようやく銀河に平和が訪れたが、悪はまたそのうち力を盛り返すだろう。だがとりあえず今は平和だ」などと何か言ってるようで何も言ってないようなことをカメラ目線でぺちゃくちゃ喋って映画は終わる。
おう、終われ終われ。
評の第1章では「あまりのつまらなさに鑑賞中2度ほど泡吹いて倒れた」と言ったが、正確に数えたら2回ではなく4回だったことを告白しておく。
今ならAmazonプライムビデオで『スタークラッシュ』が見放題です。このチャンスをのがすな。
キャロライン・マンロー!