4人でダベった。
2016年。アダム・ウィンガード監督。ジェームズ・アレン・マキューン、キャリー・ヘルナンデス、コービン・リード、ブランドン・スコット。
アメリカのメリーランド州にあるブラック・ヒルズの森で、魔女をめぐるブレア・ウィッチの伝説を追うグループが消息を絶つ事件が発生。それから20年後、グループの一員だった姉の消息を確かめようとするジェームズは、カメラを持って友人のピーターや映画学科で学ぶリサとブラック・ヒルズの森に潜入することに。地元に暮らすレインらの案内で森に入る一行だが、思いも寄らない恐怖が待ち構えていた。(Yahoo!映画より)
おはよう、社会組織を構成するみんな。
先日からはてなブログの編集画面において、文字をドラッグすると勝手にページが上下に動いて全然関係ない部分がドラッグされちゃう…という怪現象に見舞われています。同じ症状のブロガーはいますか。いたら返事して下さい。
とりあえず運営に問い合わせてみたけど、過去の経験から大体わかる。とかくこういう問題は解決しないとね…。
そんなわけでシネトゥ、ピンチでトゥ!
編集ができないんじゃあどうしようもないからねえ。ただでさえシネトゥは過剰編集が売りなのに。文字を大きくしたり、色をつけたり、斜めにしてみたり、画像を貼り倒したり。引くわー。武器奪われたわ~。
そんなわけで本日は辛うじて武器を保有しての『ブレア・ウィッチ』。いつもの奴らと「夏のホラー映画鑑賞会」を執り行いましたので、その様子をお送りします。
元気100パーセント坊ちゃんは青字、インタビュアー純は緑、キャサリン・キャサリン・ランデブーは赤、わたくし不肖ふかづめは黒字で表記しております(PCからだと顔とフキダシが表示されるけどスマホだとそれがないので読みづらいかもしれません。知ったこっちゃないけど)。
◆モッキュ!モキュメンタリー ~そして奴らはおやつを買いに行った~◆
ああ、なんて恐ろしい!
怖かったー。ホラー映画観賞会なんてするもんじゃないですよ!
オレはそうでもなかったけどな。それよりカメラ酔いして気持ち悪いわ。
何なのよこの映画。森の中で右往左往と! リュック背負ってのらりくらりと! 酔うわ怖いわでエライ騒ぎじゃないのよ!
それでは、たったいま観たばかりの『ブレア・ウィッチ』の合同レビューを執り行いたいと思います。
…さっきからヤケに静かだけど、ふかづめさん?
俺は怒っているんじゃあ!!
怒ってらっしゃるようなので、まずは僕から作品の解説をさせて頂きます!
まず映画が始まると「この映像は2014年5月15日、ブラック・ヒルズの森で発見されたメモリーカードとビデオを編集したものである」って説明が入りますよね。さも実話であるかのように。
実話じゃないの? ずっとカメラを持った劇中人物の視点だったし、すごくドキュメンタリーっぽかったけど。
ちなみにカメラマンの一人称視点で進んでいくことをPOV方式(Point of view)と呼ぶんだわよ、純!
この映画には『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』(99年)という前作があるんです。
魔女伝説の残るメリーランド州ブラック・ヒルズの森でドキュメンタリー映画を制作していたオカルト好きの学生3人組が突如消息を絶つんですけど、捜索が打ち切られた1年後に彼らが森で撮影していたビデオカメラが発見されます。で、そのビデオを編集してそのまま劇場公開したものが『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』という映画……
っていう設定の映画なんです。
設定? じゃあ全部フィクションってこと?
キャサリンの正解です。限りなくドキュメンタリー映画のように見えて実はぜんぶ作りモノ。これ以降、ファウンド・フッテージ系のモキュメンタリー・ホラーが流行ったんです。
ファウンド・フッテージ…撮影者の死亡・失踪により長らく埋もれていた映像が後に発見されて映画化された、という設定のモキュメンタリー作品。
モキュメンタリー…いかにもドキュメンタリー風のフィクション作品のこと。「フェイク・ドキュメンタリー」とも言う。
世界中で社会現象を巻き起こした『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』。
ヤラセじゃねーか。
そうよ、インチキじゃないのよゥ!
だけど『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』は、製作費わずか6万ドルという超低予算ながら全世界で2億4050万ドルの大ヒットとなりました。当時、日本でもブレアウィッチ現象が巻き起こってましたが、なぜこれほど話題になったのでしょう。
それは映画の内容を“事実として”宣伝したからです!!
だからそれがインチキだっつってんの。
懐かしいよなぁ。当時は魔女伝説をレポしたおどろおどろしいホームページがやたら乱立してたし、心霊系のテレビ番組でもよく特集が組まれていたもんねえ。
あれ、怒ってるんじゃなかったっけ。冷静になったの?
あっ。俺は怒っているんじゃあ!!
理性を失しているんじゃあ。
そうなんですよ。まさにウェブサイト、テレビ番組、書籍といったメディアミックス効果が人々の好奇心に火をつけたんです。
まあでも、話題になるのも頷けるわね。だって映画そのものが行方不明者が生前に記録したビデオテープっていう体(てい)なんでしょ? そこに何が映ってるのか、たしかに気になるもの。
さっき観た『ブレア・ウィッチ』は前作の20年後を描いていて。主人公は20年前に失踪した姉を捜すために仲間と森に入っていくでしょ。その姉というのが前作のヒロインなんですよ!
あ、ふうん。
へえ、って感じ。
いよいよ次章では猛り狂うふかづめさんのブー垂れワンマンショーが火を噴きそうですね…。
その前にスーパー行っておやつを買おうぜ。
坊ちゃん、ヤンヤンつけボーを買ってあげるわよ。
わあ、うれしいです!
行こ行こ。
……………………。
ひとり・待っち・プロジェクト
◆ついにテレビを見始めた三人! ふかづめの怒りが空を切る、侘しさたっぷりの一人相撲!◆
ふかづめさん、ただいまー。キャサリンにたんまりおやつを買ってもらいましたー!
僕のおやつは。
あ、忘れた。
それじゃあスルメと堅あげポテトをぶち開けていくわよ~。大人の私はチューハイすら飲んじゃうんだから!
ねぇ、話きいて。
まずさぁ、みんなこの映画楽しめた?
楽しむ楽しめない以前に、ただひたすら怖かったわ。
まあ、オレはフツーに楽しめたけど。
「フツーに楽しめた」という返事はこっちの想定外なので「楽しめなかった」と言ってくんない。おねがい。
楽しめなかった。
でしょう? まずモキュメンタリー映画って時点でドッチラケなんだよね。根本の部分をぶっ叩いて申し訳ないけど。
あーはいはい。私たちおやつ食べてるから勝手に話してていいわよー。
テレビつけようや。
テレビつけちゃうの…?
僕は10年前からPOVモキュメンタリーは映画たりえないという持論を展開してるんだけど、なまじ『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』が大ヒットしたために低予算POVホラーで濡れ手に粟を狙う一攫千金野郎が跋扈、『パラノーマル・アクティビティ』(07年)だの『REC/レック』(07年)だのが粗製乱造されたけど笑止千万よ!
そも、モキュメンタリー作品とは“否定されたフィクション”というフィクションと戯れることであり、そこには作り手の意図も作為も創意も演出もあってはならず、愚直なまでにリアリティを追及せんとする小賢しい態度の一貫体制=反映画へとその身を堕とすことが自己目的化した破戒の身振りなんじゃあ!!!
キャサリン、堅あげポテトちょっと頂戴。
やーよ。あんたキャベツ太郎あるじゃない。自分の食べなさいよ。
実際、多くのモキュメンタリー・ホラーでは幽霊や怪物はめったに姿を現さず、事件らしきことは何も起きない。なぜなら何も起きない方がリアルだから。つまり死に時間だけが流れてる。でも、どんなにリアルに見えても我々観客はそれが作り物だということを知ってるよね。なぜなら映画だから。
つまり映画というパッケージの中でどれだけ“本物”を訴えようが無駄+矛盾=ムカつく。
なぜムカつくかって言うと、「この映像は作り物だけど本当にあった記録映像として見て下さい」と言っているようなものだから。そんなムチャポコな。
早い話が「これからウソをつくからダマされてね!」という申し合わせの上にしか成り立たない脆弱きわまりない映像制度、それがモッキュ! モキュメンタリー!
逆にいえばそれを承認した者だけが楽しめるわけだけど、そもそも承認を必要としてる時点でそれはもう映画じゃなくてテレビなんだよなぁぁぁぁって!テレビちゅうのはウソに乗っかることを前提とした観客ありきのショーでしょ。逆に、観客がいなくても自律できる完全虚構の世界が映画なんだよ!!
ほら、坊ちゃん。テレビに犬が映っているね。
ラブラドール・レトリバーですかね。とても可愛いです!!!
さらにムカつくのはカメラの存在でよ~~。
POVモキュメンタリーでは劇中人物がカメラマンだから、撮影がヘタなほど本物の心霊ビデオっぽく見えるんだよね。だから素人臭さを出すために、激しい手ブレ、ブツ切れ編集、ピンボケ、レンズフレアみたいな劇映画ではやっちゃいけないことを全部やってるわけ。でも「モキュメンタリーだから」を免罪符に映像文法を無視したところで“映画”というパッケージを採ってる以上は“無視していい理由”にはならないんだよね。たとえヘタであることを正当化できてもヘタはヘタなわけでしょ。
つまり、撮影・作劇・演出をまるごと放棄すること=映画を拒否することがモキュメンタリーの条件なので、やはりモキュメンタリーは映画と相容れないもの。いわば劇映画とドキュメンタリーの狭間で自壊した畸形映像メディアと呼ぶほかはないのじゃあ!
足かゆ。
ヤンヤンつけボー、1本いりますか?
ううん、大丈夫。
まあ、あくまで今は映画原理に立脚したうえでモキュメンタリーの存在を許す・許さないみたいな話をしてるので、おそらく皆にとって私はちょっと気の触れたヤツに映ってるだろうし、そのことを私は密やかに悲しむつもりでいるのだけど。
とにかく、この手のモキュメンタリー・ホラーに対しては根本的な違和感を覚えてるんだよねえ。
…って、みんな、話聞いてた?
◆寝坊すら魔女のせいにする一行。そしてインタ純の正論が火を噴き、映画鑑賞会は感動のクライマックスへ!◆
ようやくふかづめも落ち着いたことだし、ここからは皆で語っていこうぜ。
前作の『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』って、前例も情報もないインターネット黎明期の作品なので一度しか通用しないハッタリだったわけですが、いまやwebサイトやSNSが氾濫したことでPOV映画もすっかり頭打ちなので、いわば手の内がバレてる状態での完全新作なんです。
だから思っきり開き直ってたよね。主人公たちはGPSやドローンを駆使するわ、超常現象は起きまくるわ。
極めつけは、やっぱり魔女だよね。普通に姿現してたけど、やけに手足が長くて全裸のクリーチャーだったよな。いかにもアメリカ人が想像しがちな怪物像って感じでズッコケ!
わりに堂々と姿を現す魔女。
しかも得意技が木を切り倒して対象をペチャンコにするというもの。発想が木こり。
主人公たちが足を踏み入れた魔女の森は不気味だったわね~。もと来た道を戻ろうとしても同じ所をグルグルしちゃったり、GPSが不具合を起こしたり。挙句、ドローンが一瞬で故障してオシャカになっちゃう。
魔女が主人公たちの最新技術をせっせと対策してると思うといじらしいですよね。いつの間にかテントの周りに木の人形が吊るされてる…ってシーンもかなり不気味でしたが、あれって主人公たちが寝てる間に一個ずつ付けていったんですかね。
案外かわいいことするじゃん。魔女。
でも、あの人形って一人ひとりに呪いが掛けられてるんですよ。真っ二つに折った瞬間、女の子の背骨が逆パカして死んじゃったでしょう。
あそこ面白かったな。『北斗の拳』のクラブ様の末路を地でいってたよね。
ケンシロウに逆パカされたクラブ様。
あと、森でキャンプした4人が寝過ごすっていうだけのシーンが馬鹿にシリアスに描かれていてドキドキしたな。
あのシーン、何だったのかね。午後までたっぷり寝たあとに「俺たちがこんな時間まで寝るなんてありえない。魔女の仕業だ!」とか言ってパニックになってんの。寝坊したことをお母さんのせいにする中学生と同じ地平。
撮影技術にも注目ですよ。今回の『ブレア・ウィッチ』は“眼”がたくさんあって、手持ちカメラ以外にもヘッドセットカメラやドローンなど、視点が目まぐるしく変わるんですよね。
でも4人全員がカメラ持ってるから、誰の視点かサッパリ分からないんだよ。
POV映画には付き物の“なぜ極限状態にも関わらず冷静にカメラを回し続けられるのか問題”もバッチリ押さえてました。
たしかあいつらって映画学科の学生だったわよね。だからじゃない? プロ根性をまざまざと見せつけられたわ!
映画学科のわりには手ブレが酷すぎるだろ。
終始カメラがぶんぶん揺れます。
あと、主人公がラストシーンになって「魔女と目を合わせなければ殺されずに済む!」とか言い出したのには驚いたよね。最初に言ってれば2人も死なずに済んだかもしれないのに。
そういえば、最後に生き残ったヒロインが正面カメラ越しに退路を確認しながら後ろ歩きで逃げようとするわよね。カメラ越しに魔女と目が合うのはセーフなのかしら?
まあ、いろいろと疑問が残る作品ですが、これはこれでアリなんじゃないでしょうか。実際かなり怖かったですし。
いやいや。怖い/怖くないの二元論だけでホラー映画の価値を決めようとする安直さが一番怖いんだよっ!
うるせえなぁ。皆そこそこ楽しめたんだから細けぇことはもういいだろうが。
そこそこ? そこそこでいいというのかっ。
そこそこ楽しめたモノを良しとするその小市民的な精神こそが、インタ純! 貴様が“そこそこの観客”に他ならないということなんだ!!
貴様とはなんだオイ貴様!!!
ああー髪ひっぱらんといてすみませんでした。
多数決により、3対1で『ブレア・ウィッチ』はアリという結論に到達したのだわよ!
そうですね。『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』の続編…というのが既に無理筋なのに、さまざまな制約の中でアイデアを先鋭化させ、いまの時代に合わせてうまくエンターテイメント化した佳作…といったまとめ方が妥当かと思います。
そうそう。ふかづめみたいに「モキュメンタリーは映画じゃない」とか言い出して議論の土台を潰そうとするのは卑怯なことなんだ。
むしろこういう映画の存在を積極的に認めていくことによってモキュメンタリーの未来は広がっていくと思う。
見事に正論ぶっカマされたけど、最後になにか言い残したことはある?
数の暴力に蹂躙されました。
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