シネマ一刀両断

面白い映画は手放しに褒めちぎり、くだらない映画はメタメタにけなす! 歯に衣着せぬハートフル本音映画評!

セガvs.任天堂 Console Wars

苛烈なりき次世代ゲーム戦争。ビデオゲームの女神はAボタンを押すかBボタンを押すか!? 埃だらけのテレビの裏から緊急独占直撃ルポ! ~その時CPUが動いた~

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2020年。ブレイク・J・ハリス、ジョナ・トゥリス監督。ドキュメンタリー作品。

90年代初頭。任天堂はすでに全米の家庭用ゲーム市場の90%超を握る圧倒的な存在だった。そんな任天堂に対し、アーケードゲーム専門の中堅メーカーであったセガは、16ビットゲーム機・北米版メガドライブ“ジェネシス”の発売と共に逆襲を図る。(U-NEXTより)


 おぇー、やろけ~。
開口一番、悲しむべき報せをみんなに届けよっかな。
しばらくの間、持ち場から逃げます。
つまり更新をサボる、ちゅこった。
というのも、わたくしお気に入りのニンテンドゥースイッチのソフトゥ、『ファイアーエムブレム 風花雪月』の5周目を開始したから、それせなアカンねん。
あ、読む者の声が聞こえる。
「ゲームかよ!」
うるせえよ。
こちとら人生の大半を映画で空費しとんねん。ゲームくらいさしたってくれ。
いつもタダ読みしやがって!

f:id:hukadume7272:20220303014733j:plain地獄。

それでなくともプライベートゥで諸々の用務があるので、当面はこの板挟み。映画も観るけど記事を書く時間はなさそうってんで、まあレビューストックを小出しにしてもいいのだけれど、それが尽きたらいよいよ終わり(ジ・エンドゥ)なので、ここらでちょっくら一時休止するのです。菅田将暉みたいにね。
また読む者の声が聞こえるなぁ。
「オマエ、ついこないだ2ヶ月サボったばかりだろ」
あ~~~~もうっ。
それは言わない約束じゃんか!
なんで痛いとこばかり突いてこようとすぐするの。
まあ、ゲームも用務も、なるべく早く片付けるようにすっから。全体的にさっさと生きるから。それでオマエたちは満足なんだろう?
映画ブロガーにはゲームする暇も、用務する暇も、すやすや眠る時間もないんだ。更新が滞ると鞭打たれ、読者をいじると叱られるんだ。
おのれ!
まるでローマ帝国の生贄だよ!
まるで大蛇の前に差し出された生娘みたいな気持ちだ…!

おぇーす。そんなわけで本日は『セガvs.任天堂 Console Wars』です。図らずもまたゲームだよ! もういいよ!
本来、この手の映画は評を書いたりしないのだけど、たまにはゲームについて語ってみるのも一興かなと思ったのでピュッと取り上げちゃう。後編には『ゲームとわたす』と題したゲームエッセイの付録つき。やったじゃ~ん。

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◆絶対王者への飽くなき妄執◆

 焼酎飲みながら枝豆食べもって見たんだけど結構おもしろかった。あと枝豆おいしかった。
本作は、90年代アメリカのゲーム業界で繰り広げられたセガと任天堂によるドロドロの覇権争いをギュンギュンに見つめ倒したドキュメンタリーである。

80年代中期は、海外版ファミリーコンピュータとして開発されたニンテンドー・エンターテインメント・システム(以下NES)の大ブームにより任天堂一強の時代だったんだと。アメリカの子どもたちはクリスマスプレゼントの包装を破きながら「ニンテンドー!」と絶叫して泡吹いて倒れたし、街中ではマリオの着ぐるみがそこいらを闊歩してたらしい。
一方、かかる“独裁”に臍を噛んだセガは、任天堂のNESに対抗するべく次世代機のジェネシス(日本名ではメガドライブ)を開発。マリオキラーとしてソニックという看板キャラクターを生み出すことにも成功したんだと。
数年間の鍔迫り合いを経たのち、各社は次世代機を発表。セガはセガサターン、任天堂はニンテンドー64。そして突如ゲーム市場に参入したソニーのPlayStation!
その結果、セガサターンの世界販売台数は930万台、N64は3300万台。だが次世代機戦争を制したのはソニーで、プレステの販売台数は1億台を突破した。
漁夫の利の極み。
セガ社員は悔しがって泣いた。おしまい。


 さあ。このドキュメンタリーのおもしろさはセガ・バイアスが掛かりまくってる点だと思う(正確にはセガの米国子会社であるセガ・オブ・アメリカー以下SOA)。
終始、セガ社員たちが任天堂をミソッカスに貶すの。やれ市場独占だの、小売店に圧力をかけただの、子供に魔法をかけただの。まるでクッパみたいな扱い。任天堂を揶揄した演出もてんこ盛りである。
実際、SOAの社長トム・カリンスキーはジェネシスを売る際に任天堂のネガキャンを展開し、「任天堂で遊んでる奴は低次元精神」「ファミコンは精神で作られたゴミ」とキッズ層に刷り込ませた。マリオなんてすっトロい。時代は『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』だ、と。
ジェネシスのTVコマーシャルも過激を極めた。目ぇバキバキの若者が狂乱しながら「セガッ!」と怒声をあげると、それに感化されたキッズたちが「らああ!」と叫びながらこぞって任天堂商品をゴミ箱に捨てるのだ。とんだパンク沙汰である。
「らああ!」ってどういう意味だろう。

f:id:hukadume7272:20220219071707j:plainドット風の演出も満載。

 当時のセガがそうまでして任天堂を目の敵にしたのも、ひとえに絶対王者たる任天堂への嫉妬と羨望からでしょう。しかし任天堂側はいっさい挑発に乗らなかった。

任天堂「ウチはよそと張り合わない。自社の強みを磨いて、より良いゲームを作るだけ。ザット・イズ・マイマイン」

い…一瞬であしらわれた。
マイマイン言うてる…。
まさにアウトオブ眼中・オブ・アウトオブ眼中。
でも、こうなってくると一寸せつないね。セガが必死に食らいついてもサッと振り払われてしまう寂しさというか。「こっち向いてよォーッ!」って事なのにねぇ。「本当はアタイあんたのこと…こっち向いてよォーッ!」つってんのに、任天堂はプイッて。
主人公と負けヒロインみたいな。
しかしセガは、あの手この手で任天堂を振り向かせようとした。その一例が、脊髄ごと首をぶっこ抜く残虐格闘ゲーム『モータル・コンバット』の暴力描写をめぐって米国議会聴聞会でセガと任天堂がバチクソに叱られたシーン。この作品はスーファミとメガドライブに移植されたアーケードゲームだが、スーファミ版ではゲーム内で噴き出す血を緑色に変えて販売したことで売上ガタ落ち。セガ経営陣は爆笑した。
また、意見の相違から任天堂を辞めたビル・ホワイトがセガに鞍替えし、聴聞会でのモータル・コンバット論争では任天堂ゲームの暴力性を指摘。ホワイトどころか腹ん中めちゃブラックな裏ぎり。セガ経営陣は爆笑した。

そんな時だ。突如彗星のようにソニーがゲーム市場に参画したことで、それまでウンコを投げ合っていたセガと任天堂はもろともイかれたわけだ。
ラストシーンで描かれるのは、各ゲーム会社のイメージキャラクターの巨大風船が街をパレードするゲーム祭の記録映像。なんとソニックの風船が街灯に激突して空気が抜けてしまうというアクシデントが発生。セガの敗北と重ね合わせた良い演出だと思うし、悲しむべきシーンだとも思うのだが……むちゃむちゃ笑った。
大勢のファンが、空気が抜けてヘボヘボになっていくソニックを見ながら「オ~…」って悲しんでんの。むちゃむちゃおもろい。
ただそのあと、セガ社員たちが万感の思いで「セガッ!」と叫ぶモンタージュは少し感動的でしたね。ある者は誇らしげに、またある者は悔しさに涙を湛えながら、かつてのCMの真似をするのだ。セガ!

f:id:hukadume7272:20220219071614j:plain轟沈するソニックの巨大風船。

◆ゲームとわたす ~プレステ回顧録◆

みなさん、ビデオゲームは嗜みますか?
私は人並みに嗜むねぇ。
それこそ原体験でいえば小学生の頃に買ってもらったゲームボーイの『ポケットモンスター 赤・緑』(96年) 『カエルの為に鐘は鳴る』(92年) だけど、据え置き機ではPlayStationが初。
スーパーファミコンは多くの友達が持っていたのでスーファミはよそん家で遊ばせてもらうモノといった大胆不敵な認識を持っていた。


さて。プレステで思い出深いゲームといえば、まず『ロックマン8 メタルヒーローズ』(96年)
このゲームは、ロックマンという小坊主が魔改造された左腕からふしぎな豆鉄砲を適宜発射して敵を殲滅していく…といった横スクロールのアクションゲームシリーズであり、本作はその8作目。
しかし当時小学生だった私は、慣れないアクション要素とロックマンの奇怪な風体への緊張から恐怖心に呑まれてしまった。こちらに向かって無限沸きするメットールという最ザコの敵相手に臆して「こっちくんなくんな」と泣きながら豆鉄砲で迎撃することしかできなかったのだ!
後日、我が小学校でも一二を争うゲーム中毒者として勇名を馳せていたサク(当ブログのフィクサーでもある)という友人を家に招き、これに師事して1面をクリアー。2面もクリアー!
まあ、ほとんどサクがプレイしてたんだけどね。
私は横で見ながら「もはやオマエのステーション」って囃してただけ。おれのプレイステーションなのに全部おまえがプレイしてる…! と思いながら。
しかるのち、休憩をとるべく一度ゲームの電源を切って昼食(そうめん)を共にし、「さあ3面だっ」と再びゲームを起動すると…はぅあう!
また1面から始まっとるやんけ。

サク 「…さっき、ちゃんとセーブした?」
わたし「セーブってどんな概念」
サク 「ゲームの進行状況を保存するための簡易な手続きだよ。メモリーカードは…?」
わたし「ねえよ、そんなもん。ウチにあるのはポケモンカードだけ」
サク 「あじゃぱー。じゃあポケモンカードで対決しようか」
わたし「対決だ!」

終わった。
俺のロックマン終わった。
そう。当時の私は、プレステには外付けの「メモリーカード」なる専用装置が必要であり、此れがないとセーブできない…ということを知らなかったのだ。そもそもセーブという概念自体、あやふやの藤あや子なのであった。したがって、毎回ゲームを起動するたびに1からやり直していたのである。
ある意味、俺がロックだろ。
ロックマンは俺だったよ。
一度、母上に「メモリーカードを買って下さい」と頭を下げたこともあるが「今日も楽しくゲームが遊べたという喜び。きもちが満たされた嬉しみ。それ自体がメモリーじゃないか」と諭され「そういうモノかもねぇ~」と妙に納得した当時の私。えらい。

f:id:hukadume7272:20220219072546j:plain【評価】二度とやってやんねェーッ!

次に思い出深いのは、お年玉を使って中古ゲーム屋で買った『地獄先生ぬ~べ~』(97年)
てっきりぬ~べ~を使って妖怪退治ができるアクションゲームと思っていたのだが、これが蓋を開けてみるとゴリクソの学園シミュレーションゲームで。
要するに、選択肢つきの会話を重ねることで各キャラクターの好感度が上下して、仲よくなったキャラとは週末一緒に遊べちゃう…みたいな。恋愛シミュレーションの類なのかな?
当然、シミュレーションという概念などついぞ知らない当時の私は「いつになったら妖怪と戦えるん!」とイライラしながら会話の選択肢を選び続けること約1時間。やっとぬ~べ~と妖怪がバトルしたかと思いきや、このクソゲー…絶対ぬ~べ~が勝つように出来てやがった。
プレイヤー=私は、ただオートで行われる八百長バトルを眺めてるだけ。
一個もボタンを押すことなく早々に勝利をおさめた私は、再び平和な学園生活に戻り、会話の選択肢地獄を繰り返したのでありました。
なんじゃこのゴミ。
泣きながらディスク取り出したわ。しかもセーブできねぇし。
地獄先生どころか地獄選択ばかり強いられて…!

f:id:hukadume7272:20220219072558j:plain【評価】二度とやってやんねェーッ!

次は『THE鬼ごっこ』(制作年不明)
これは「SIMPLEシリーズ」という1500~2000円の廉価版ゲームの一本。当時は『THE 麻雀』とか『THE お姉チャンバラ』がスマッシュヒットしたんだで。
私が手を出してしまった『THE鬼ごっこ』は、4人のキッズが空地で鬼ごっこをするというシンプルなゲームで、使うボタンはほぼ1つ。そのボタンを連打すればキャラクターが走るというシステムなのだが…死ぬほど連打せんならん。
10秒走らせるだけで指が疲れ、20秒走らせると指にタコができ、30秒走らせると指の皮がズルズルに剥けるという指キラーゲームの先駆けなのであった。
指先に負荷だけをかける専門のゲーム。
かといって連打をやめるとキャラが立ち止まってしまい、すぐ鬼にタッチされちゃう。自分が鬼になるともう最悪で…。

なぜなら他の3人はCPUだからねええええええええええ

コンピューターだから!走り続けるんだよ!
CPUは「指の疲れ」とか感じない。それ以前に「ボタン連打」なんかしなくていいんだよ。コンピューターだから。無限に走れちゃう。そういう風にプログラミングされてる!
身ィ削って連打してるの俺だけ。
プレイヤーが生身の人間であること自体がすでにハンデという。いかに人間が機械より劣った存在であるかを実感させる為だけに生まれてきたゲームゥ…。
当時、泣きながらやってたわ。「俺だけ負担でかない?」ゆうて。〇ボタン、ブゥワ~連打して。高橋名人でも音ェあげるぞ。なんじゃこの腱鞘炎促進ゲーム。
改めて、当時の開発者に申し上げます。
鬼はオメェだよ。

f:id:hukadume7272:20220219073325j:plain【評価】二度とやってやんねェーッ!


最後は『トバルNo.1』(96年)
鳥山明がキャラクターデザインを手掛けたスクウェア発の格ゲーであります。
角ばったポリゴン、戦闘中なぜか無音…という欠点を除けばそこそこ楽しめるB級格闘ゲームだが、対戦モードとは別に「クエストモード」というのがあって、これは本編のキャラクターを1人選んでダンジョンを攻略するアクションRPGなんだけどサ…。
それがまぁ、べらぼうにつまらなくて。

ダンジョン内には至るところに、落とし穴、剣山、床を踏むと飛んでくる銃弾、レーザー格子、転がる岩といったトラップが仕掛けられており、基本このどれかに引っかかって死ぬのね。
しかもなぜか終始無音。キャラクターが罠に掛かったときの「キャー!」だけが響き渡るゲーム。泣きながら1時間プレイしてやめました。

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そんな『トバルNo.1』だが、なんと発売前の『ファイナルファンタジーVII』の体験版ディスクが付属していたのですよ(これ目当てで『トバルNo.1』を購入する人の方が多かった)
もちろんFF7の体験版も遊んでみたのだけど、当時小学2年生だった私は、あの工場街から始まるインダストリアルな開幕シーンで怖くなってしまい、泣きながら敵を4体倒したところで試遊をやめてしまった。
この体験がトラウマとなり、未だFFには手をつけてないし、爾来わたしは工場街恐怖症になったのです!

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こういう景色だめ。ゾワゾワしちゃう。

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