シネマ一刀両断

面白い映画は手放しに褒めちぎり、くだらない映画はメタメタにけなす! 歯に衣着せぬハートフル本音映画評!

サマリタン

なんやサマリタンて。未来の銀行強盗みたいな安っすい仮面つけて。ほんで「サマリターン」ゆうて。心配になるくらいストレートネック。死ぬほどダサい。団地ウロウロして。「サマリターン」ゆうて。わけのわからん…。なんやねんサマリタンて。

2022年。ジュリアス・エイヴァリー監督。シルヴェスター・スタローン、ジャヴォン・“ワナ”・ウォルトン、ピルウ・アスベック。

スタローンが皆しばく。


うん。ヨーソロー、ヨーソロー。
べつに心待ちにしていたわけではなかったし、なんなら発売前のトレーラーを見て「今作は惹かれないなぁ」と不安視しつつもカタチケが1枚残ってたのでなんとなしにダウンロードした『ポケッツモンスツー スカーレット バイオレッド』が過去最低作で…何もいえない…。
新ポケモンのデザインがどれもテキトーすぎる、という指摘は主観と言われれば主観の範疇なので言わずにおくにせよ…
重すぎて処理落ちすごすぎ、バトルのテンポ悪すぎ、操作性ゴミすぎ、UIゴミすぎ、ポリコレ意識しすぎて変な方向いきすぎ、戦闘アニメOFF機能なくて間延び感すごすぎ、マップ北固定なくてクルクル回るから西に行けと言われても「うん。どっちから見て西?」となりすぎ、オープンワールドを謳って「好きな所に行って好きなことができるよ!」とか言ってくる割には野生ポケモンやジム戦のレベルが固定されてるから結局決められたルートを順序通りに辿っていくだけの一本道すぎ、店から出たときの方角が入ったときの方角と逆だから誤って再入店しすぎ、ピクニックしようと思っても「ライド中はダメ」とか「地面が傾いてるとこではダメ」とかそのつど注意されてピクニック出来なすぎ、ピクニックで作るサンドイッチ不味そうすぎ、サンドイッチ作るミニゲームもおもんなさすぎ、ファッション変えられなさすぎ、ブティック分散しすぎ、ZLボタンのロックオン機能が精度悪すぎて一生ロックオン出来なさすぎ、忍び足で背後取った瞬間にこっち向きすぎ。
なににつけても…
バグ多すぎ。
昨夜、とうとう「敵を倒しても経験値が入らない」という“ほなもうこの先ムリやんバグ”に遭遇して「おっけおっけ。もういいや」ってswitch投げて「ゲームばっかしてないで映画評書こ♪」ってモードに切り替わりました。
映画だいすき~♡
みんないつもありがと~♪
みんなのことだいすき~♡
コロナ渦じゃなかったら絶対チューしてる。
絶~~~~対チューしてる。
みんなの頬っぺに一回ずつ。

そんなわけで本日は『サマリタン』です。
サバイバーの3ndアルバム『Eye of the Tiger』(82年) という、最低なアルバムだけどサバイバー自体が大したバンドじゃないのでその中では最高傑作と目されるアルバムを聴きながら執筆しました。
そう。サバイバーといえば『ロッキー』シリーズだよね。私は3作目の主題歌「Eye of the Tiger」よりも4作目の主題歌「Burning Heart」派ですねん。どうもどうも。



◆だあさああああ! なんじゃサマリタンて。ゲエ吐くくらいダサいいいい◆

 みんな、みんな~。コロナ渦で暇を持て余したシルベスター・スタローンが過去の栄光にすがり散らして『ロッキー4/炎の友情』(85年) を自ら再編集した『ロッキーVSドラゴ:ROCKY IV』(22年) はもう観たぁ~?
まあ、過ぎ去りし栄光の残滓をなおも搾ろうとするグレープフルーツ精神は立派だが、俺たちは今に生きてるので“今のスタローン”を見たいわけだよな。
だが近ごろのスタローンときたらよ~、宇宙でカート・ラッセルやマイケル・ルーカーと共演する『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』(17年) という名の80年代筋肉スター同窓会記念映画に出たり、ロッキーの盟友アポロには隠し子がいた!なんて後付け設定満載でお送りする『クリード』っていうかもはや『アポロッキー』シリーズに出たり、シュワちゃんとのW主演が売りだったくせに筋肉アクション皆無&2作目以降はもうシュワちゃんすら出なくなった『大脱出』シリーズで筋肉街道から大脱出してしまったスタロロローン!(なげき)
そんなわれわれを喜ばせたのは『ランボー ラスト・ブラッド』(19年) だったが、蓋を開けりゃあランボーが大和田伸也ばりに不良にボコられる話で、まあ復讐はするのだが、つまるところ『捜索者』(56年) 『許されざる者』(92年) をやってるだけの西部劇ごっこ。
そうだ。われわれは不満だよ。

だから本作がAmazonプライムで独占配信されると知ったとき、「配信かよ」と思いながらも、ようやく“日和らないスタローン”が見れるのだと心がときめいたものです。
本作はスタローン御年74歳がダークヒーローを演じたグラフィックノベル原作のスーパーヒーロー映画『サマリタン』



なにサマリタンて。

ええ…?
たのむ教えてくれ。なんじゃこいつ。
未來の銀行強盗やないか。
名前といい仮面といい…
だっ…ダサぁぁーっ!!!
ゲェ吐きそうなくらいダサいっ。
サマリタン!ゆうて。
一生懸命 サマリタン!ゆうて。
なにサマリタン!
なっ……
心配になるくらいストレートネック!
ださあぁぁあぁああぁああ!
おかんのムームーくらいダサいィ~。
『ロケッティア』(91年) とどっこいどっこいのダサバトルしてる…。
デザインもうちょい凝ろぉ?


「prime video」のロゴの方が格好いい~。


さて。映画が始まると主演の子役ジャヴォン・“ワナ”・ウォルトンくんによる世界観の説明がなされる。
彼いわく…その昔、双子のスーパーヒーローだった正義のサマリタンと悪のネメシスが発電所で喧嘩して相打ちで死んだんだって。ネメシスは強大な力で世界を闇に包もうとしたけど、サマリタンがそれを許さなかったんだ。

ダサあああああああ!!!

しゅごぉ~~~~~~~~~~~~~い。
小学生が自由帳に描いてるマンガと同程度のっ…んださあああああああああ!
敵方のネメシスもダサいくらい紋切り型の悪党やん。強大な力で世界を闇に包もうとしたん? なにその観念的すぎる野望。「世界」、「闇」、「強大な力」。何か言ってるようで何も言ってない…!
そんなネメシスは対サマリタン必勝法として憎しみを込めたハンマー、通称「憎しみハンマー」を製作したんだって。夜なべして。
憎しみハンマーは、鋼鉄のボディを誇るサマリタンに唯一ダメージが通る武器で、このハンマーを喰らえば、いかなサマリタンとて「痛ったああああい」と絶叫するんだそう。マイティ・ソーでいうところのムジョルニアかな。
その憎しみハンマーがコレなんだけど…。



わりあい普通のハンマー。
コーナンで見たけどな、こういうの。

さて。貧富の差が広がる荒廃都市グラニットシティ。物語はスタローン演じるミステリアスな筋肉翁とサマリタンオタクのウォルトン少年の交流を軸に展開する。
ある日、チンピラーズに絡まれていたところをご近所さんのスタローンに救われたウォルトン少年は、彼こそがサマリタンではないかと推測。この坊主はサマリタン生存説を信じていたのである。なぜならサマリタンオタクだから。
「おじさん、本当はサマリタンでしょ!?」
「消えろ、サマリタン厨」
軽くあしらいながらもウォルトン少年のピュアハートに触発され、徐々に心を開き始めるスタローン。そんな折、チンピラーズを束ねる悪の親分ピルウ・アスベックは警察が保有していた憎しみハンマーを強奪。
「これがネメシスが使ってたと言われる伝説のハンマーかあ! コーナンで見たけどなあ!」
こいつはこいつでネメシス厨だった。
そしてコーナンユーザーでもあった。
正義のサマリタンを偽善と断じたピルウは、2代目ネメシスとなるべく民衆をアジテートして暴動を起こしたのでありました。強大な力で世界を闇に包もうとしたのだ!

…こうして書くと、話のアホらしさはともかく、なかなか壮大なスケールに思えもするが、物語はスタローンとウォルトン少年が住んでる団地から半径1キロ以内で完結します。
ほぼ全シーン、団地の近くで撮影してる。
ほんでサマリタン。
なんやサマリタンて。
心配になるくらいストレートネック。
ゲェ吐くくらいダサい。
コガネムシみたいな頭して。
ほんでネメシスの武器は憎しみハンマー。
コーナンで売ってる。
なんじゃこの映画。


ネメシス厨(左)。
憎しみハンマーでスタローンにたちむかう。

◆いつものスタローンすぎた◆

製作はMGMとバルボア・プロダクションズ。
バルボア・プロダクションズといえば、2018年にスタローン自ら「ローン組んで建てたローン!」ゆうて設立した謎の映画会社である(勿論ロッキー・バルボアにちなんでいる)。今のところ実績なし。
本作のスタローンは心なしかえらく楽しそうだった。人生の先輩としてウォルトン少年に格言をカマし、数少ない表情クローゼットの中から選りすぐりの渋い顔を出して苦悩の芝居をする。そしてアクションシーンではVFXという名のスーパーパワーを手にしながらも極力それに頼らず生身のナチュラルパワーでド突き回すわ、しばき倒すわ…の剛腕ぶりを示す。
やってることは“いつものスタローン映画”とはいえ、ここに“スーパーヒーローもの”という描写と設定が乗ってるあたりが本作の特徴だが、その結果、新味や化学反応は…ナシ!
ナイんだよ、これが。
バカほどこってりの豚骨ラーメンに調味料を少し加えたぐらいじゃあ大して何も変わらないように、いつものスタローン映画にスーパーヒーロー要素を加えたところで“いつものスタローン映画”なんだよ。

なんならサマリタン要素邪魔まであるからね。
いらねえよ、サマリタン要素なんて。サマリタンだがナポリタンだか知らんが、物語も設定も世界観も無用だ。スタローン映画に水を差してくれるな。『ジャッジ・ドレッド』(95年) の失敗から何も学ばなかったのか?
大体なんやねん、サマリタンて。 

黒歴史でおなじみの『ジャッジ・ドレッド』

実際、サマリタン要素とスタローン要素の食い合わせはそれほどよくない。
まずサマリタンの特徴は、①怪力②鋼の肉体なんだけどさ…。
すでに持ってるんだよ、スタローンは。
スキルとスペックがダブってもうとる。
「サマリタンにジョブチェンジすることで得られるスキル」がもともと本人に備わってるなら別にジョブチェンジする必要なんてないよね。つまり、わざわざスタローンがサマリタンを演じる必要ないよねェ!
だって、スタローンなんて筋肉だけで一時代を築いてきた筋肉スターじゃん。ぜんぶ筋肉だけでどうにかしてきた人生なんだから。サマリタンよりもサマリタンなのよ。
そうじゃなくて、こういうのは筋肉で売ってない役者が演るからおもしろいんじゃないの? MCUの皆さんとか。
筋肉自慢のスタローンが筋肉自慢のヒーローを演るって…それはもう“いつものスタローン”だろう。
アホみたいな仮面つけて。大人やのに「サマリターン!」ゆうて。しかも団地で。
なんやねんサマリタンて。

しかしだな、②鋼の肉体についてはその限りではない。なんと本作のスタローンは機関銃で撃たれても屁の河童なのである。
鋼すぎた。
比喩じゃなくて実際問題「鋼」でした。
クライマックスでは大勢のチンピラーズが待ち構えるアジトに正面から突っ込んでバンバン撃たれてるのも意に介さず一人ずつしばき上げていくのだが…やってることがターミネーターにおけるT-800すぎた。
また、マッスルカーで轢かれて全身バキバキになっても謎の治癒能力で瞬く間に再生しちゃう。
ターミネーターにおけるT-1000でもありすぎたあ~!


 事程左様に「スタローン超人化」という語義重複のアホらしさを突き詰めた、“わざわざスーパーヒーローを演じる必要のないスタローンがためしに演じてみたらこうなった”というAmazon主導の検証企画『サマリタン』。
YouTubeでやれカス。
ちなみに敵役のピルウは生身の人間。憎しみハンマーというダメージソースこそあれ、スタローンにとってはあまりに役不足の相手でした。
初手降参安定やろ。

「やめー!」と叫びながらチンピラーズを左右に放り投げるスタローンのようす。

◆そこがどこであれ、どうせ団地◆

 前章で邪魔だ邪魔だと言っていたサマリタン要素で唯一おもしろかったのは“スタローンの正体”だね。
ウォルトン少年は「実はサマリタンは生きてて、その正体はスタローンおじさんに違いない!」と確信してるわけだが、この“確信”がミスディレクションになってて。
観る者は、このガキの主観越しにしかサマリタン生存説の真相を追えない構成になってるが、じつはスタローンの正体がサマリタンであることを裏付ける根拠なんてどこにもないんだよ。そして物語終盤では思いがけない事実が発覚するのです。「せやったーん?」ゆうて。
トリックとしては反則スレスレのことしてるんだけど、目先の驚きだけを狙ったどんでん返しになってないあたりは好感が持てる。
この事実を知ってからスタローンのキャラクター性を思い返すと「ああ、だからこんな性格で、あんな生活送ってたのか」といろいろ合点がいく作りになってんの。
『サマリタン』のくせに生意気なことをする。


あと、必ずしも筋肉映画に非ず、というのも特徴かもね。
映画自体がドラマを紡ぐことに集中していて、この手のヒーロー映画が傾斜しがちな見栄や演出や視覚効果は余技でやってますみたいな配分。あくまで物語の根幹にあるのはスタローンとガキの歳の差ブロマンスなのよね(何度もキレては拗ねるスタローンがお楽しみ頂ける)。

映像面では、何はさておきロケーションが貧しい。とにかく貧しい。主舞台は二人が住んでる団地なんだけど、全ロケ/全場面のトーンが似通っちゃってるので、たとえそこがどこであれどうせ団地だろと思ってしまう。
違うのよ? 本当は違うんだけど、場面転換するたびに「そこ団地の裏け?」とか「また団地の近所け?」と錯覚するような団地トリックが仕掛けられてたわ。
ほんで「サマリターン」ゆうて。
わっけのわからん…。

そんなこって、スタローン愛好家として一応がんばって見たけど…続編とかは勘弁な。

散々破壊しておいて、趣味は「壊れた物を直すこと」。

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