シネマ一刀両断

面白い映画は手放しに褒めちぎり、くだらない映画はメタメタにけなす! 歯に衣着せぬハートフル本音映画評!

ツイスターズ

東へ西へぐるぐる回っていたのは竜巻よりも人間でした。


2024年。リー・アイザック・チョン監督。デイジー・エドガー=ジョーンズ、グレン・パウエル、アンソニー・ラモス。

竜巻、ぐるぐるぐるぐる…どっか~~ん!


 よっしゃよっしゃ。やろか。
ゆくりなく吹き始めた秋風に、俺はピーコートの襟を立てて街頭の人々の隙間を縫うように歩きます。
嘘です。
本当は橄欖色の羽織と、だるだるのサルエルパンツを履いて「ボーラーレ! おーお。カンターレ! おおおおー」とジプシー・キングスを口ずさみながら祇園界隈を彷徨するのです。
秋の訪れはいいものだ。早く訪れてほしいと誰しもが思っていたはずだ。
なのに訪れたら訪れたで、べつに誰も「訪れてくれてありがとう」とは言わない。あれだけ夏のあいだは「暑い暑い」、「はよ秋こおへんかな」なんてブー垂れていた分際で、いざ秋が訪れたら、やれ「秋服に困る」だの「夜は肌寒い」だの「季節の変わり目は調子悪なる」だの好き放題言いやがって。
秋の欠点を作為的に露出させて!!
とかくに美点と欠点は表裏一体なんだよね。あばたもえくぼ、なんだよね。『アバター』の反対は『エクボー』なんだよね。


現在。ニンテンドゥートゥイッチの後継機、トゥー、ゆうんが発売されてるけど、市井の庶民にはなかなか手に入らない現状が横たわっているよね。
俺も、欲しいことは欲しいけど、抽選には応募していない。抽選で“購入する権利”を与えられる、という図式がなんとなく腹立たしいからだ。なぜユーザーのわれわれが“選ばれる側”っていうか“買わせて頂く立場”に甘んじなあかんねん。
ほんで当選した人々は「当選した!」つって喜んでるけど、よく考えると正気の沙汰じゃない。抽選に当たって“購入する権利”を得ただけなのに、さもプレゼントされた(無料でゲットした)かのように欣喜雀躍して。
そんなわけで、トゥーの抽選戦争を尻目に日々を平常心で過ごしていたミーなのだが、過日、ミーの好きな『ファイアーエムブレム』の最新作がトゥーで出る、というジョー(情報)をミー(耳)にして「ほー!」と叫んだ。
ほな要るやん、トゥー。
でもチュー(抽選)はしたくない。
ではドゥーすればよいのか。
テー、すなわち店頭販売でコーしてニュー(購入)するしかない、という現状が横たわり始めたんだよね!
おのれ。

そんなわけで本日は『ツイスターズ』です。



◆いま立ち向かう! お天気言い当てお姉さんと竜巻系YouTuberの新星バディ◆

 抜群の爽快作。
アフターミターンがとてもよい。
ちなみに「アフターミターン」というのは“映画を観たあとの余韻”の意。読書における「読後感」に似た言葉が映像作品には存在しないことの悔しさから勝手におれが作った造語である。転じて「読了」のように、映画を観終えたことを「ミターン」と呼ぶ。
使用例:「こないだ『ツイスターズ』をミターン。アフターミターンがとてもよいーん」


って、そんな話はどうでもウィーンだよ。
ちなみに「ウィーンだよ」というのは「いいんだよ」の意だよ♪
『ツイスターズ』のアフターミターンたるや、まるで心晴天。子供のころに洋画劇場で見ていた“80~90年代の無邪気なハリウッドメジャー”を彷彿とさせる、っていうか明らかにそこを意識して「わざと30年古く撮る」を地で行った“幹ぶっと映画”に快哉を叫ばぬ理由はないでしょう。
そう、昔の洋画劇場は幹が太かった。
作家主義もクソもなく、人気も流行も気にせず選ばれた放送作品群は、賢しい手練手管や格式高い映像美の遥けき彼岸を屹と睨めつけ、その此岸で脂汗を垂らしながら説話的経済性だけを追究したショットとも呼べぬショットの、しかし合理的に組織化されたる緊密な堆積。早い話がハリウッド・システムの賜物。これに馴致された洋画劇場世代は、とかく説話優位の作品に感情移入する“物語脳”を持つ突然変異の映画ファン、というよりその亜種ともいえるが。
上等やん。亜種でええやん。
突然変異でええやないの~。
いつになくゴキゲンな俺であります。



『ツイスターズ』は竜巻YouTuberとお天気お姉さんによる竜巻粉砕型スクリューボール・コメディである。
筋を紹介しますね。
ニューヨークの国立気象局で働くデイジー・エドガー=ジョーンズはお天気の達人であった。彼女の予報は百発百中で、お天気というお天気を言い当て、自然災害という自然災害を片っ端から未然に防いでしまうのだ。
そんな、お天気言い当ての彼女には悲しい過去がある。大学生のころ、故郷オクラホマで5人組の竜巻追跡チーム「旋風脚」として活動していた際、竜巻消滅成分の入った対竜巻爆弾、その名も「竜巻殺し」を開発、その効果を実験しようってんでEF5(最大級)の大竜巻に立ち向かうも、段取りをいろいろミスった挙句、べらぼうにテンパって、まず最初にメガネをかけた仲間が吹き飛ばされた。その次に吹き飛ばされそうになったのはコケティッシュで可愛らしい女の子だったので、こういうキャラは吹き飛ばされないだろうと思いきや「だー」などと言いながらすぐ吹き飛ばされた。そして、つい5分前まで「俺たちは最強のチームだ。どんな竜巻にも立ち向かう」と豪語していたデイジーの彼氏もすぐ吹き飛ばされた。
3人が死亡し、生き残ったのはデイジーと観測係のアンソニー・ラモスだけ。
爾来、そのトラウマから竜巻追跡の夢を諦め、国立気象局でお天気を言い当てる仕事に就いたデイジーだったが、そんな彼女のもとに竜巻リサーチ会社のCEOになったラモスが現れ、両手の人差し指をくるくるさせながら「最新式の竜巻分析レーダーちゅうのん開発したさかい、ちょお手伝ってえや」と言った。
その指は右巻きだった―…。

右巻きのラモス。デイジーは左巻きなのだろうか?

さて。
ラモスと共に再び故郷オクラホマの地(されど悪夢の地)に赴いたデイジーは、ラモスが率いる精鋭揃いの竜巻追跡部隊「Jリーグカレー」の一員として最新レーダーの試験運用を試みる。お昼休みにサッカーもした。
そんな折、巷を賑わしている竜巻系YouTuberのグレン・パウエル擁するならず者部隊「ぐるぐるどっかん」が出現。奴らは爆笑しながら車ごと竜巻に突っ込んで行き、その目の中からロケット花火を真上に打ち上げ「打ち上げ花火、どこから見るか? 下から見るか?」なんつって大騒ぎする様子をYouTubeで生配信してスパチャをもらうなど傍若無人の限りを尽くしていた。話は逸れるが、YouTuberをさして「動画クリエイター」と呼ぶことほど気持ち悪い表現ってないよね。
まあいい。
ラモスたちはグレンを俗物と蔑みながら竜巻を追うが、グレンにとっても竜巻はメシの種。あっちで竜巻が起きたらあっちで取り合い、こっちで起きたらこっちで取り合う…と両者一歩も譲らず功名を争い、「あっちが細巻きを食うならこっちは太巻きを食う」「あいつが巻爪なら俺は巻舌になる」「あっちが巻き髪にするならこっちは襟巻マフラーでお洒落する」、「あっちが巻頭グラビアを飾るならこっちは巻末コメントを書く」「あっちが上巻を読むならこっちは下巻から読む」など、巻上げ、巻返し、埒の明かない巻きバトル。その巻添えを喰らった両チームの取巻きたちは「頭痛鉢巻だ」と呟いた。
東へ西へぐるぐる回っていたのは竜巻よりも人間でしたわな。


そうこうするうち物語は、新たに発生した嵐が分裂して双子の竜巻(ツイスターズ)に変容したことで、チーム「Jリーグカレー」に在籍していたデイジーがひょんなことからグレンと行動を共にするようになり「なんだ、喋ってみたら案外いい奴じゃん」と見方を改め、グレンの方も「面白ぇ女」なんつってデイジーを気に入り、意気投合した挙句デイジーが「Jリーグカレー」を脱退して「ぐるぐるどっかん」に電撃加入。
旧友ラモスは「そんな瑠偉な…」と呟いた。
そんな折、新たな竜巻が発生。いま立ち向かう、お天気言い当てお姉さんと竜巻系YouTuberの新星バディ。
ほな、ちょっとだけ歌うわな。

ぐるぐるぐるぐる  どっか~ん!
嬉しくなっちゃうなー
楽しくなっちゃうなー
ぐるぐるぐるぐる  ぐるぐるぐるぐる…
ぐるぐるぐるぐるどっか~ん!



失敗したら死ぬだけザッツオールのタイムアタック・フィジカルチャレンジ・タイミングバトルが火をふく

 終始ワーキャー騒いでるだけのディザスター・ムービーだろう、という予測を裏切って『ツイスターズ』は一組の男女を中心とした人間模様を丁寧にドラマタイズした“線の太い映画”でありました。
えてして群像劇に傾きがちなディザスター・ムービーの類型に男女の連帯/親愛の物語を軽やかに描き込み、それでいて“あくまで竜巻が主人公”という軸が片時たりともぶれないのがいい。これが出来ないのがローランド・エメリッヒである。
一応本作は『ツイスター』(96年) の続編とのことだが、その下地を当世風に借景したという意味ではリブートの肌触りに近いだろう。ストームチェイサーが生配信をしたり移動式ドップラー・レーダーが出てきたりとうまく時代にコミットした発想の数々も楽しい。

オクラホマの肥沃な大地を舞台に描かれるのは主役2人のロマン、ロマンス、ドロマンス。
デイジーとグレンが一蓮托生のバディを組み、人情派のストームチェイサーとして息を合わせてゆくロマンもさることながら、秘かに互いが惹かれ合ってゆくロマンスには「恋もEF5ってね!」と叫ぶには十分な風速をもっていた。それこそ『ツイスター』のヤン・デ・ボンは『スピード』(94年) で危機的状況下の男女のロマンスを本筋の傍流で描き上げもしたんだもの。
そして、なんといってもラモスを含めた三角関係のドロマンス。
ラモスは優しくて誠実な男だし、何よりデイジーとは旧知の仲。かつて「竜巻殺し」実験計画が大失敗した事故で仲間を失った過去を共有しうる唯一のメンターでもある。デイジーのこともちょっぴり「いいな」と思っている。
だが彼女にとっては“いい人”止まり。ラモスのような善き友人よりも危険な香りがするグレンに惹かれるのはいつの世も同じか~。
またラモスの場合、竜巻レーダーが恋人と言ってもいいくらい四六時中レーダーのことばかり考えている。四六時中レーダーのことばかり考えてるような奴に惚れる女なんているだろうか? いるわけがない。もしいるとしたら、その女をこそ俺はレーダーで見つけたい。
つまりラモスは竜巻レーダーに夢中になるあまり恋のレーダーがお留守になっていたというわけだ。それなのに「デイジーをグレンに取られて悔しい」みたいなしょうもない顔しやがって。
愚かな奴だ。


「恋も竜巻も制するのはオレーダー」とはラモスの言。

あと、ラモスんとこの会社が開発した最新式レーダーな。牧羊犬さながら、竜巻を三角形で囲むように三方向にレーダーを設置して竜巻を3Dスキャンするというものなのだが…、
危険すぎるやろがい。
3チームがソーラーパネルみたいなレーダーを車の荷台に積んで竜巻に接近。三ヶ所に散る。そのあと3チーム同時にレーダーを荷台から降ろして「早く早く早く。竜巻行ってまいよんぞ!」とか「竜巻こっち来んな、こっち来んな」とか「そっち大丈夫け!?」つってパニックなりながら設置/起動したのち「よっしゃオッケ。逃げれ~! 全員離れろー!」ゆうて大慌てで逃げて。
生身すぎるやろ。
最新式やぁゆうてんねんから、もっと遠く離れた場所から安全に観測できるような…。なんで死と隣り合わせやねん。結局生身でやらなあかんのかい。失敗したら死ぬだけザッツオールのタイムアタック・フィジカルチャレンジ・タイミングバトルやんけ、こんなもんよォ。どこが画期的やねん。命懸けのクソゲーやんけ。否。イノチガケーやんけ。アナログすぎるやろ馬鹿垂れが。



そんなことだからラモスは駄目なんだよな。
ロマコメとかラブストーリー系の映画を批評する際、おれは大体ラモス(恋の噛ませ犬)のようなキャラクターの味方をしてきたが、本作に限っては例外。ラモスにはファイトが足りない。竜巻ばかり追わんと、もっとデイジーを追わんかい。そら彼女もグレンに靡くわ。
それにしてもキャスト陣の貌がいいやね。
デイジー・エドガー=ジョーンズはやや線が細く、ヤドカリ、…ザリガニだっけ?『ザリガニの鳴くところ』(22年) のような役でこそ映える女優だが、それを補って余りあるグレン・パウエルの純映画的相貌がスクリーンを牽引した122分でした。べたーっと広がったオクラホマの大草原にも耐えうる屈強なアップショット、否、もはやシルエットだけでも画が持つのではないかしら。
ラモスもいいですね。取り残された猿みたいな。押しなべて言えることは、いかにも90年代アメリカ映画といった顔選び=フェイスチョイス。略してチョイス。
「見てられるわ~」と鑑賞中、ずっと思ってた。



◆竜巻、可愛そうに!◆

 最前からディザスター・ムービーとか言うとりますけどね、そもそもがスクリューボール・コメディなんですよ、これって。
仲の悪い男女が波乱に巻き込まれるうち恋に落ちていくという。『ヒズ・ガール・フライデー』(40年) なわけ。前作の『ツイスター』にもその向きはあったが、より調子が上がってスクリューが掛かっているのは本作の方。
まあ、映画として巧いのは同じく竜巻系ディザスターの『イントゥ・ザ・ストーム』(14年) の方だが、それに負けじと本作とっておきの大技はクライマックスの“映画館”ね。
巨大竜巻に襲われた町でグレンたちが住人を避難させた先が映画館。阿鼻叫喚のシアター内で上映されているのはジェイムズ・ホエールの『フランケンシュタイン』(31年)
直後、スクリーンが壁ごと吹っ飛ばされて、向こう側には迫り来る竜巻。吸い込まれそうになったグレンたちは必死で座席にしがみつく。おもしろいね。まるで劇中の登場人物がスクリーン(劇中劇)の中に吸い込まれそうになるという、逆『カイロの紫のバラ』(85年) というか、逆『ラスト・アクション・ヒーロー』(93年) というかね。この二重構造は映画の神話性を己がフィルムに認めるセレブレーションだ!
ただ、個人的にそういうのはあまり好かんのだが。
そんな小粋な技が似合うほど洒落た映画でもないだろうに。
粋なことすな。



とはいえ、基本的にはバカ映画街道まっしぐらの底抜けバケツ大作なので安心されたい。
デイジーが開発した竜巻消滅成分の入った対竜巻爆弾てなんやねん、そもそも。
一応理屈としては、紙オムツで使われているような超吸水ポリマー剤をほり込むことで竜巻の水分を奪って消滅させる…という能書きらしく、デイジー曰く「これを使えば竜巻が小さくなるのん!」とのこと。
なるかあ!!!
知らんけどなるかあ!
「小さくなるのん」やあれへんがな。紙オムツで竜巻を消せたら世話ないわ。
またデイジーが、無課金でこれかよってぐらいチートキャラすぎるというバカ設定もええ味出っしょんねん。
風の向き、空気の匂い、雲の表情といった皮膚感覚だけで数秒後の天気や竜巻発生地点がぜんぶ前もって分かるという…。しかも百発百中。
卑弥呼かおまえ。
シャーマニズムやめろ。すぐやめろ。邪馬台国にすぐ行けよ。
竜巻の動き全部予想できる能力と竜巻絶対消滅ポリマーを持ってる時点でイージーファイトやろ。勝ち目あらへんがな、竜巻サイドに。
可愛そうに竜巻。
一生懸命巻いてるのに。
すぐポリマーでダメにされて。

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