皆で一緒にスパパンピンヨー!と唱えていこうよ。
2018年。パークプム・ウォンプム監督。ティーラドン・スパパンピンヨー、チャープラン・アーリークン。
死んだはずの“ボク”の魂は、謎の声に「当選しました」と告げられ、自殺した高校生ミンの肉体に“ホームステイ”することに。ミンの自殺の原因を100日以内に突き止めなければ、ボクの魂は永遠に消えてしまうのだという。新生ミンとして人生を再スタートさせたボクは、初めて訪れた街で見知らぬ家族や同級生に囲まれながら、違和感だらけの学校生活を送り始める。様々な出会いや経験を経て、誰かを大切にすること、大切にされることを知り、初めて生きる歓びを感じるボクだったが、1台の壊れたパソコンの存在をきっかけに、ミンを苦しめた残酷な現実に向き合っていく。(映画.comより)
やあどうも。
昨日は酒を飲んで歌い出すと止まらない私が自宅で無観客ライブを開催しておりました。観客ゼロという逆境をはねのけ大盛況のうちにライブは成功。洗濯物を干しながら歌うのって結構しんどくて息があがるよね。
気になるセットリストはこちらです。
SE「徹子の部屋のテーマ」
01「個人授業」フィンガー5
02「君は薔薇より美しい」布施明
03「ワイルドでいこう!」ステッペンウルフ
04「いとしのレイラ」エリック・クラプトン
05「酒場でDABADA」沢田研二
06「つつみ込むように…」MISIA
07「カーマは丸出し」カルチャー・クラブ
08「おまえは最高」ヴァン・ヘイレン
09「やさしさ」エレファントカシマシ
10「カシミール」レッド・ツェッペリン
~アンコール~
11「スローバラード」RCサクセション
12「妖怪人間ベムのテーマ」
13「オールウェイズ・ラヴ・ユー 」ホイットニー・ヒューストン
結構いい感じしょ?
ただ、アンコールはしてくれる観客がいなかったので披露しなかった。
あと心をこめて「やさしさ」を歌ってるときにインターホンが鳴ったけどちょうど大サビに入ったとこだったので無視したわ。やさしさとは無縁の所業。ぜひコロナ騒動が終息した暁には私の「洗濯物干しライブ」に奮ってご参加下さい(参加者にはふかづめお手製の目玉焼き1個が与えられる)。
あと、音楽業界きっての遅刻魔として知られるガンズ・アンド・ローゼズのアクセル・ローズがまたしても遅刻伝説を更新したというニュースを知って嬉しい気持ちになってます。
これまでに「コンタクトレンズを探してた」とか「ミュータント・タートルズを観ていた」という理由でおびただしい数のライブに遅刻(酷いときはドタキャン)してきたアクセルだが、近年、同バンドのスラッシュが「アクセルはもう遅刻なんてしない」と豪語していたにも関わらず、ついに今回…自宅でのライブストリーミング配信に6時間遅刻するという偉業を成し遂げた。現地が自宅なのに6時間も遅刻してのけるアクセル・ローズ…。アクセルを取り巻く時空だけ歪んどんのか?
そんなわけで本日は『ホームステイ ボクと僕の100日間』です。
◆ティーラドン・スパパンピンヨー!!!◆
もしかしたら当ブログのヘヴィ読者なら朧げに記憶しているかもしれないが、ちょうど1年ぐらい前に『バッド・ジーニアス』(17年)というタイ映画を取り上げた。天才学生たちが集団カンニングをビジネス化するという内容で、試験官を欺きながらスリリングな方法で解答を伝達し合うという机上のスパイ映画だった。
しかし私の心を捉えたのは映画の内容より役者名だったのである。同作の評を読んでくれた者の脳にはビシビシに刻まれているだろう…。
ティーラドン・スパパンピンヨー。
初めてこの役者を知ってから現在に至るまでの約1年、片時も忘れたことはなかった。いや、顔は忘れたのだが。忘れたことはないと言ったのは名前のことだ。だってそうだろう? これほどのパワーネーム、いったい誰に忘れられよう。
ティーラドン・スパパンピンヨー!
意味もなく唱えてるだけで楽しいではないか。語感エンターテイメントの到達点ではないか。
タイ人の名前はヤケに長く、同作の共演者の中にもチュティモン・ジョンジャルーンスックジンやタネート・ワラークンヌクロなど、記銘はおろか発言すら難しいハードネームのオンパレードだが、その中にあってこれほど覚えやすく語感も楽しい名前を持つのは彼だけ。
そう…。
ティーラドン・スパパンピンヨー!
いいわー、気分が明るくなるわ~。より良い未来に辿り着けそうな気がするわ~。
『バッド・ジーニアス』のスパパンピンヨー。
そんなスパパンピンヨーの最新作が『ホームステイ ボクと僕の100日間』と知れば、これはもうスパパンと観るほかない。
ビデオ屋でこの映画をティーラドン!と見つけた私は、かなりスパパンとレンタルしたので、どんな映画なのか全く知らぬままピンヨーしたのだが、冒頭20分はまったくわけがわからず…パークプム・ウォンプム!という顔をしていた。あ、これは監督の名前ね。
監督の名前もいいんだよ。
パークプム・ウォンプムて。可愛らしい上に韻踏んどるやないか。名前萌えがすごいよ。ウォンプムて。さぞかし可愛い監督なんだろうと思って画像検索してみたら…顔パンッパンのおっさんでした。
まぁでも、ある意味ではウォンプム!って感じの茶目っ気たっぷりな人だったわ。
茶目っ気しかないパークプム・ウォンプム監督。
で、私が困惑した開幕20分。映画が始まると「あなたは当選しました」という謎の声で眠りから覚めた主人公が薄気味悪い霊安室から抜け出すと、そこは病院にしてはいささか禍々しい建物の中で、衝動的に窓から脱出して縁伝いに歩いていると外は大雨が降っていたので足を滑らせて高所から落下してしまう。
したところ、不意に重力の向きが変わって建物の壁を歩けるようになり、かかる状況に戸惑っている主人公の前に“管理人”と名乗る男が現れて「2度目の自殺からは守れない」と意味不明な言葉を残し、わけもわからぬまま建物内に逃げ込んだ主人公の前に、今度は看護婦の姿になって再び現れた管理人が「おまえはその身体にホームステイしたんだ」と言う。
そう、この映画の「主演俳優」はティーラドン・スパパンピンヨーだが、物語上の「主人公」はスパパンピンヨーの身体を借りた“魂だけの僕”なのである。
管理人いわく、タイの高校に通うスパパンピンヨーという学生が最近自殺しており、その身体に「ホームステイ」することになった“僕”は100日以内にスパパンピンヨーの自殺の理由を突き止めなければならない。でなければ“僕”の魂は消えてしまうと言うのだ。
かくしてスパパンピンヨーの身体を借りた“僕”は、自殺未遂ということにされて彼の家に帰され(行かされ?)、100日以内に自殺の動機を探るのであった…。
見た目はスパパンピンヨーだが中身は別人格の主人公。
ここでピンときた読者もいるかもしれないが、私は鑑賞後に気がついた。本作が森絵都の小説『カラフル』を原作としたタイ版リメイクだということに。
2000年には元KAT-TUNの田中聖で映画化されたが、一般的には原恵一が手掛けたアニメ版『カラフル』(10年)が有名だろう。
原恵一といえば『クレヨンしんちゃん』シリーズでお馴染みのアニメーターで、とりわけ『モーレツ! オトナ帝国の逆襲』(01年)と『嵐を呼ぶ アッパレ! 戦国大合戦』(02年)はメロドラマのお手本的アニメ映画として絶大な人気を誇っている。個人的には『クレしん』卒業後に発表した『河童のクゥと夏休み』(07年)と『百日紅 ~Miss HOKUSAI~』(15年)にこそ原ポテンシャルの開花を見たのだが…『カラフル』はどうでもよすぎて中身全部忘れた。
そんなわけで本作は『カラフル』とほとんど同じ内容なのだが、私のようなカラフル忘れ組にとっては全く意味不明な開幕20分なのである。
いや、仮に私がカラフル覚え組だったとしても、やはり多くの疑問がつきまっていただろう。“管理人”とは何者なのか。ホームステイってどんなシステム。なぜ重力の向きが変わって建物の壁を歩けるようになったん…。これらに関してはその後も一切言及されない。まぁ「そういうもの」として「雰囲気」で見るべき要素だったりするのだが、それにしてもやたらと異様な雰囲気で描かれているので、『カラフル』が原作だなんて知らない初見さんは絶対戸惑うだろうと思うような困惑必至のオープニングなのである。
意味もなく重力の向きが変わる。
◆チャープラン・アーリークン!!!◆
ティーラドン・スパパンピンヨーの身体にホームステイした“僕”がティーラドンファミリーやスパパンフレンドと交流するうちにピンヨーライフを謳歌する…という青春ストーリーが紡がれていくが、100日以内に自殺の原因も探り当てなくてはならない。
“僕”が最初に目を付けたのは家族関係だ。ビジネスに失敗した父はマルチ商法まがいの事をして怪しいサプリを売っており、金を作るために結婚指輪まで売り飛ばした真性の弩クズである。兄はスパパンピンヨーのことが邪魔で仕方なく、なんなら死んでほしいとさえ思っていた。ただひとり母だけがスパパンピンヨーのことを心から愛していたが、のちに人知れず不倫をしていたことが発覚する。
うーん。まぁなかなかのワケあり家族だが、家庭環境を苦に自殺したと結論するにはいささか決定打に欠けるよな~。
自殺理由の手がかりを得るために家の中を物色していた“僕”は、生前スパパンピンヨーが遺書を作成したノートパソコンを見つけて「これだ!」と思ったが、突如現れた管理人から「遺書を見るのはズルに当たるからダメ」と言われパソコンを破壊されてしまう。
ズルに当たるの?
遺書を見つけたんだからゲームクリアでいいでしょうよ。なんで遺書見るのがズルに当たるのよ。ていうか、この管理人…干渉してくんの?
いわば管理人は「肉体ホームステイ」という名のゲームを仕切るゲームマスターなのに“僕”のプレイングにめっちゃ口挟んでくるやん。まぁ、百歩譲って遺書を見るのが反則行為だとしてもノートパソコンばきばきに破壊することなくない。
それに、“僕”にはスパパン自殺理由の回答権が1回しか与えられていないので一度でも間違った回答をすればその時点で魂が消滅してしまうのだが、いつも別のプレイヤーにはもっと回答権が与えられてるらしい…ということが明かされる。
管理人 「今回は規模が規模なので一度しか回答できないものとする」
“僕” 「規模…?」
ふかづめ「規模…?」
オマエの匙加減ひとつで色々決まっていくのな。気まぐれ社長か?
奇しくも本作と非常によく似た設定の『エブリデイ』(18年)評でも言ったが、私は「ゲームをするなら先にルールを明確にしてくれ」と思ってしまうタチなのである。
だいたいなぁ~、後になって都合のいいようにルールを捻じ曲げる映画が多すぎるのだ。安倍政権か? 本作の場合だと最初にはっきりルール説明をしないから事実上何でもありの後出しジャンケンになってんだよ。なんだよパソコン破壊って。物理的に干渉してくんじゃねーよ。
ただでさえこっちは「そもそも“僕”は何の為にこんなゲームをさせられてるの?」っていう根本の根本でモヤモヤしながら鑑賞してんだよ! 映画冒頭で言ってた「当選」というのもよく分からないのだし! どこが企画運営してんだよ、その魂の大抽選会はよ!!
全員ワケありのティーラドンファミリー。
そんなわけで、早くもゲームの行方なんてどうでもよくなってきた私が怒り過ぎってぐらい怒りながら画面を注視していると、学校での友人関係を洗おうとした“僕”が『ビバリーヒルズ高校白書』ならぬスパパンピンヨー高校白書を謳歌し出す。
昼休みに食堂で“僕”の前に現れたのはサルダー・ギアットワラウットという女の子だ。
サルダー・ギアッ…
サルダー・ギアットワラウット。
サルダーはスパパンピンヨーと同じ美術部の同級生で、秘かにスパパンに対して恋愛センサーをピンヨーピンヨーと反応させていたが、男勝りな性格ゆえにどうやら片想いに終わってしまいそう…。
どうやらスパパンピンヨーにはもうひとり仲のいい女子がいるらしく、その娘から放課後図書室に呼び出された“僕”は一目見るなりその娘に岡惚れしてしまう。その娘こそが本作のヒロイン、チャープラン・アーリークンだ。
チャープラン・アーリークン!
ぜひ皆さんもどうぞ。お腹に力を入れて周囲を警戒しながら…チャープラン・アーリークンッ!
この女優はタイ・バンコクで活動するAKB48グループ傘下のひとつ・BNK48のリーダーらしく、タイ版「会いたかった(อยากจะได้พบเธอ)」では選抜メンバーに選ばれている。
อยากจะได้พบเธอ。
彼女は科学オリンピックをめざす学年イチの秀才で、スパパンピンヨーとは両想いのまま友達を続けてる間柄だ。おっほ。いいじゃんこういうの。互いに惚れ合ってることを互いが気付いてるのに何となく告白せぬまま友達同士の関係に甘んじる「水面下ラヴァー」もしくは「未契約の恋人」とでも言えばいいというのか! 甘酸っぱいねー。おっさんテンションあがるわ~。
それでは、お腹に力を入れて周囲を警戒しながら…
チャープラン・アーリークンッ!
だがチャープランが恋したのは既に自殺したスパパンピンヨーであって、その身体を借りてる“僕”ではない。やがて“僕”は「ホームステイ先」のスパパンピンヨーに嫉妬するようになり、必死でチャープランから好かれようとする。中身をな。自分なりに努力して好感度を上げ切ったあと、“僕”はドキドキしながらチャープランにこう尋ねた。
“僕” 「昔のおれと今のおれ…どっちが好き?」
チャープラン「うーん、今のキミ♪」
ティーラドオオオオオオオオン!!!
(おっさん今ワインがぶがぶ飲みながら書いてるからこんな感じになってるごめんな)
BNK48でリーダー張ってるチャープラン・アーリークン。
しかしチャープランの秘密を知ってしまった“僕”は膝から崩れ落ちて絶望する。どうしても科学オリンピックに出場したい彼女は教師にすがり、放課後個人レッスンの見返りとして性的虐待に甘んじていたのである(これがスパパンピンヨーの自殺理由かもしれないな)。
捨て鉢になった“僕”は、愛を裏切ったチャープランに「死ね!」と毒づき、不倫が発覚した母にも「死ね!」と毒づくなどして闇堕ち猛毒小僧と化し、目の前に現れた管理人にクイズの回答をする。
「彼が自殺した理由が分かったぞ。皆のせいだ。スパパンピンヨーは皆が殺したんだ!」
管理人は不敵な笑みを浮かべ「ブッブー」と言ったあと「不正解なのでキミの魂は即消滅するところだが…特別にあと1回だけ回答できることとする」と言って姿を消した。
だからオマエの匙加減ひとつで色々決めていく感じやめろ!!!
ルールが…もう…(半べそ)。
クイズに不正解して落ち込む“僕”(肉体はスパパンピンヨー)。
その後、母が交通事故に遭ったことで「やっぱり死なないで」と掌返しの愛を見せつけ、チャープランにも「ごめん、死ねは言いすぎた」と謝罪して仲直りした“僕”は、急にまぶしい光に包まれてパッパーンと現れた管理人から祝福されます。
管理人 「どうやら答えに辿り着いたようだね」
“僕” 「ああ、わかったよ。スパパンピンヨーだ。スパパンピンヨーを殺したのはスパパンピンヨー自身だったんだ!」
ふかづめ「あ?」
管理人 「はい正解です」
ふかづめ「え?」
“僕” 「世界は愛で満ちていた。スパパンピンヨーは愛すべき人々を勝手に勘違いして、憎み、嫌い、そして自殺してしまったんだ!」
ふかづめ「そうなん?」
管理人 「そういうことですねー」
“僕” 「そして思い出した。僕が何者か。思い出したぞ!」
ふかづめ「うぇ?」
“僕” 「僕はスパパンピンヨーだ!」
ふかづめ「うぇ?」
管理人 「そうです。自殺したスパパンピンヨーはキミ自身だったのです。間違った自殺だということに気付いてほしかったので、キミの記憶を消してこのようなゲームに参加してもらいました。キミが憎んでいた人々はキミのことを愛してるんですよ!」
ふかづめ「…てことは、スパパンピンヨーの肉体を借りていた“僕”は結局スパパンピンヨー自身の魂だったってこと?」
管理人 「そういうことですねー」
“僕” 「世界は愛で満ちていたー!」
管理人 「そうそう。最初から愛で満ちていたんだよねー」
“僕” 「ハナから満ちていたー!」
ふかづめ「………………」
◆パークプム・ウォンプム!!!◆
ドッチラケである。
スパパンピンヨーの肉体にホームステイしていたのは記憶を消されたスパパンピンヨー自身の魂で、すべては「キミは自殺すべきではなかった」ということに気付かせる為に管理人が仕組んだ愛の再発見ゲームだったのだ。
しかもクイズに正解した“僕”=スパパンピンヨーは生き返ります。まあ、正確には「生き返る」というより「記憶を取り戻したままホームステイし続ける」ことが許されたので、記憶と肉体がスパパンと一致した完全ピンヨーとして続きの人生をティーラドーン!と歩み続けることになるわけだ。
(鼻ほじりながら)まぁイイ話なんじゃないのぉー?
ただ、このどんでん返しが全然効いてないのは自我の葛藤がないためである。
スパパンピンヨーの身体にホームステイした“僕”は何者なのか…ということを“僕”自身が自己問答すればするほど「ワシ自身がピンヨーなんかい!」というラストシーンの驚きが効いてくるのに、この主人公、なぜか記憶を失ってるわりには「そういえば僕って何者なの?」ということを全く疑問に感じないままスパパンピンヨーの身体・人格・生活に馴染んでるので、我々観客からすれば“僕”とスパパンピンヨーはほぼイコールなんだよ、最初から。だから“僕”がラストシーンで「ワシがピンヨーなんかい!」と驚いても、観客からすれば「まあ、妥当な線ですね」としか思わないという。然るべき着地点に軟着陸したな、みたいな。
で、たったこれだけの話を131分もかけて描かれるのは流石にしんどいわ~~。
しかも冒頭10分なんてワン・シーケンスまるまるスローモーション。これにはうんざりだ。『バイオハザードIV アフターライフ』(10年)かよ。何かあるとすぐスローモーション…というのはタイ映画だけでなくインド映画の悪癖でもあるけれど、スロー=エモいみたいな感覚は「映画演出」ではなくCMやMVの「宣伝演出」だからね。高速度撮影カッコイイみたいなのはテレビ屋さんの発想よ。
スパパンピンヨーの自殺理由も結局は早合点&視野狭窄なので自殺にまったく同情できないし、自殺理由を突き止める過程もロジックすっ飛ばして急に解に辿り着くみたいな…言ってしまえば閃きで万事解決のパターンなのでビタイチ面白くないです。
「気づく」じゃなくて「分かる」で解決してほしいんだけどね。
「気づく」とか「思い出す」とか…そんな閃きはオマエの匙加減だろ。直感で解決すな。
美点としては、そりゃあ当然ティーラドン・スパパンピンヨーとチャープラン・アーリークンの可愛らしさ、および初々しき恋模様、それに何といっても名前の魅力に尽きる。スパパンピンヨーだけは死ぬまで覚えてると思うわ。
『バッド・ジーニアス』同様に偏執的なほどデジタライズされた色彩豊かな画面や、自然光とVFXをうまく組み合わせたハイテク自然主義とでも呼ぶべき映像設計が堂々と矛盾してる感じには映画発展途上国ならではの興奮を覚える。かつて日本に小津安二郎がいて、フランスにジャン・コクトーがいたように、タイにはパークプム・ウォンプムがいた。この奇跡を祝福しようではないか。もちろん祝祭の掛け声は「スパパンピンヨー!」だ。
結構ボロカスに言ったが、またこのようなタイ映画が作られたら性懲りもなく観てしまうんだろうな。韓国映画や台湾映画もそうだけど、日本とノリが似てるから中毒性があるんだよね。もしかして俺はタイ映画に“ホームステイ”してしまったのだろうか。
もう覚えたよね。ティーラドン・スパパンピンヨーとチャープラン・アーリークンだよ。
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